働き盛りの世帯の年所得が25年間で100万円以上減少したことを示す資料を内閣府がまとめました。非正規雇用の若年単身世帯の割合が大きく上昇しているデータも盛り込まれています。この資料は3日の経済財政諮問会議に提出されました。四半世紀の間に国民の所得が大幅に落ち込んだことを政府が詳細にまとめたものとして注目されます。
この深刻な事態をつくり出したのは歴代政府の悪政であり、政策の抜本的転換が急がれます。
若年層に深刻なダメージ
今回示されたデータは、バブル経済崩壊後の1994年と2019年の世帯所得を年代別で比べたものです。税金などで再分配後の世帯所得の中央値(順位が真ん中の値)は、25年間に35~44歳で569万円から465万円と104万円減です。45~54歳ではさらに大きく、697万円から513万円と184万円も減りました。
内閣府は、同じ25年間に40~59歳の世帯では共働きが増え、配偶者の所得は増えているにもかかわらず、世帯主所得の落ち込みを上回るほどではなく、世帯の所得が減少したと分析します。
非正規化は、若年層にダメージを与えています。25~34歳の単身世帯では、200万円台の世帯所得の割合が上昇しました。その要因について内閣府は、「非正規雇用の『若年単身世帯』の割合が25年前から大きく上昇していることが影響」しているとしています。
いわゆる「就職氷河期世代」を含む35~44歳の単身世帯の所得では、1994年に500万円台が最多でした。それが2019年には300万円台が最も多くなりました。この年代の非正規雇用者の所得分布でみると、200万円台の世帯数がいちばん多くなっています。
自民党政権のもとで、働く人の4割、女性や若者の5割以上が非正規となっています。人件費削減を目的とした労働法制の規制緩和による非正規化は、日本経済をもろく弱くしてしまいました。この誤った政策を司令塔として推進してきたのが、経済財政諮問会議です。同会議に貧困と格差の拡大を分析した資料が出されたことを深刻に受け止めるべきです。
経済財政諮問会議の経済界代表などの民間議員は、女性が非正規雇用にとどまる傾向の是正を課題にあげますが、これまでの労働法制の規制緩和への反省はありません。
岸田文雄首相は所得向上など「人への投資」の強化策を盛り込むと表明しています。しかし、これまで首相が打ち出してきた政策は、まったく不十分なものです。エッセンシャルワーカーへの対策として打ち出された看護師などへの賃上げには、現場から「桁が違う」という批判の声が上がりました。賃上げした企業への減税も、中小企業が使いにくく、ほとんど効果のなかったものです。
規制緩和から転換こそ
働く人の所得向上には財界応援政治と決別し、労働法制を抜本的に強化することこそ不可欠です。非正規から正規化への流れをつくるとともに、最低賃金以下で働くなど無権利状態のフリーランスやギグワーカーなど、新たな問題への規制と保護をしてこそ、消費も増え、「強くやさしい」日本経済への道を開くことができます。
— しんぶん赤旗より —