予想していたとはいえ、あまりにひどい。朝から夜までの東京オリンピックのテレビ報道です。NHKは、総合だけでなく、Eテレ、BS1もほぼ五輪一色です。民放5系列も、日替わりでほぼ午前9時から午後11時まで放送しています。
新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、東京の医療のひっ迫状況は深刻さを増しています。ところが、テレビのニュースはこうした事実をしっかりと伝えなくなっています。
感染拡大で、選手も含め、国民の命と人権が危険にさらされているにもかかわらず、なんの根拠も示さず、「(国民の命は)守れると思っている」(21日)と言い切る菅義偉首相。20日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューには、「競技が始まり、国民がテレビで観戦すれば、考えも変わる」と答えました。
NHK、民放各局の五輪報道方針は、首相の思惑に沿ったものといってよいでしょう。
なぜ、こんな報道姿勢になってしまうのか。
NHKと民放キー局は、共同でジャパン・コンソーシアム(JC)をつくり、巨額の放送権料を払っているからです。
東京オリパラ組織委員会のもとに設置された「メディア委員会」(NHK、民放各局、大手新聞などの幹部が参加)の理事会(昨年2月)で、TBSテレビの安藤洋二東京オリパラ室長が「われわれ民放、NHK、JCは、高いお金を払って放送権を買って、放送に挑もうとしています」とのべています。「高い放送権料を払っているんだ」とばかりに、五輪に批判的な報道ができなくなってしまっているのです。
本格的な競技が始まり、「いよいよ始まる金メダルへの道」「最初のメダルを取るのは誰でしょうか」というアナウンサーの絶叫が聞かれるようになりました。ニュースでは感染の現状をのべた後、「○○選手がメダルを取りました」…。こんな報道が毎日のように続くでしょう。
フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは『AERA』(7月26日号)で、「オリンピックのメダルの数と重症者の数を報道するというのは、ある種グロテスクな世界」と、放送のあり方を問いかけています。
緊急事態宣言を出しながら、それとまったく矛盾する五輪開催に突き進んだことが、国民への誤ったメッセージとなり、現に人出は増えています。「無観客」であっても、選手、大会関係者、ボランティア、報道関係者など、さまざまな場面で感染拡大のリスクを大きくさせています。この矛盾をそのまま放置して、五輪一色という報道のあり方を続けていいのかが、厳しく問われています。
— しんぶん赤旗より —