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コロナ危機下に巨額兵器か ― シリーズ安保改定60年

2020-04-26 | まるで「米軍占領下」の日本! 「日米地位協定」(=「不平等条約」)の抜本改正を!

陸上イージス 総額1兆円も

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 「新型コロナウイルスの感染爆発で国民生活や医療現場、日本経済は危機に直面している。湯水のように米国製兵器にお金を使っている場合じゃない」。

 秋田県、山口県では、こうした憤りの声が相次いで出されています。

 北朝鮮の弾道ミサイルを口実に、安倍政権が秋田・山口両県に配備を狙っている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。総額1兆円超の可能性がある、超高額兵器です。

1発で45億円か

 防衛省が明らかにしている費目は、▽システム本体2404億円(2基)▽ミサイル発射装置115億円(6基)▽教育訓練費31億円▽維持運用費(30年間)1954億円で、計4504億円。ただ、ここには(1)基地建設費(2)レーダー取得費―が含まれていません。合わせれば約6千億円が見込まれます。

 加えて、政府が導入を計画している迎撃ミサイル・SM3ブロックIIAは、昨年8月時点の米政府からの売却額が73発で約33億ドル(約3560億円。発射装置などを含む)。関連経費を差し引いても、1発あたり約45億円以上になるとみられます。イージス・アショア2基で48発が装填(そうてん)可能で、すべて満たせば2千億円を大きく超えます。

 さらに、迎撃ミサイルやレーダーは敵の弾道ミサイルの性能向上に応じて、絶えず更新されるため、そのたびに莫大(ばくだい)な費用がかかることになります。

米大統領に迎合

 なぜ、これだけの超高額兵器を導入することになったのか。

 防衛省は従来、(1)イージス艦(2)地上配備のパトリオットPAC3―による防衛網で北朝鮮の弾道ミサイルに対処すると説明。2014~18年度の中期防衛力整備計画にも、イージス・アショアは盛り込まれていませんでした。ところが、17年3月30日の自民党政務調査会の提言に突如、「イージス・アショア」の検討を明記。同年12月に「2基導入」を閣議決定しました。

 こうした導入経過について軍事評論家の前田哲男さんは、17年11月の安倍晋三首相とトランプ大統領の会談が決め手になったと指摘します。会談後の共同記者会見で、首相は「F35A戦闘機やSM3ブロックIIAも米国から導入する」と表明しました。

 前田氏は「『バイ・アメリカン(アメリカ製品を買おう)』を掲げるトランプ大統領に迎合した」と批判。「米原子力空母でも新型コロナ感染が拡大しており、軍隊はコロナ危機に役に立たないことを示した。緊急に対処しなければならないのはウイルスとのたたかいだ。軍事費に膨大な予算を投じるのは見当違いだ」と訴えます。

電磁波・水質 生活壊す

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(写真)むつみの方向を指さす原さん(左)と、中野さん=4日、山口県阿武町

 「イージス艦の甲板の上で農作業するのと同じです」。政府が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備予定地の一つとしている陸上自衛隊むつみ演習場。わずか200メートル先の高台に畑をもつ白松博之さん(73)=山口県阿武町=は憤ります。

影響を過小評価

 イージス・アショアは1000キロ先の弾道ミサイルを探知するため、強力な電磁波を照射します。このため、現地では電磁波による健康被害が懸念されています。長男夫婦がレタスや白菜を栽培する畑は、その電磁波が照射される方向に位置します。長年、白松さんは自民党員でしたが、配備計画を機に離党しました。

 防衛省は電磁波に関し「健康上、環境上の影響は出ない」と説明しますが、「イージス・アショア配備を考える山口の科学者」共同代表の増山博行・山口大名誉教授は「影響を過小に見積もっている」と批判します。

 イージス・アショアが強力な電磁波(メインビーム)を照射した際、「サイドローブ」と呼ばれる電磁波が周囲に漏れ出ます。防衛省は「敷地外に影響はない」としていますが、増山氏は「防衛省は電波の強さに関して『平均値』を用いて影響範囲を試算している。しかし、電子機器は誤作動する恐れがあり、電波の強さは『瞬時値』を用いるべきだ。控えめに見ても防衛省が示す保安距離の7倍は確保する必要がある」と指摘します。

 防衛省が示した保安距離を7倍にすると、ペースメーカーは812メートル、補聴器は3・3キロ、在宅医療機器は9・9キロです。在宅医療機器への影響は日本海まで及ぶなど非常に広範囲です(地図)。さらに増山氏は「演習場から北朝鮮の方向に標高差70メートルの高台(西台)がある。西台にメインビームが当たって拡散すれば人体にも影響が出る恐れがある」と警鐘を鳴らします。

防衛省に不信感

 電磁波と並んで、住民が強く懸念しているのが水質汚染です。

 農事組合法人「うもれ木の郷」の前女性部会長の原スミ子さん(76)が住む阿武町宇生賀地区は地下水が豊富で水道や農業用水に使われています。

 原さんは地下水に関する防衛省の資料を見て驚きました。演習場の麓にある同地区の井戸からは地下水が湧いているのに、資料では地下水が全く流れない図となっていたのです。「ありえません。地下水は生命線です。建設工事で水源が変わるのではないか」

 防衛省の対応にも不信感を募らせています。「むつみ演習場へのイージス・アショア配備に反対する阿武町民の会」の中野克美事務局長(64)は、「防衛省職員は演習場の麓に民家があることすら知らなかった。私たちの生活なんて考えてない」と憤ります。

 水環境への影響は萩市でも懸念する声が上がっています。

 「この透き通った水を見てください」。むつみ演習場に近い「羽月の名水」を案内しながら森上さんは語ります。水神を祭る祠(ほこら)もあり、説明板には「古くから『羽月の名水』として親しまれている」と記されています。「住民は昔から、水で生きてきた。水を守り、昔からの生活を守りたい」

まさに壮大な“ムダ”

 イージス・アショア配備計画は破綻に直面しています。2017年、北朝鮮の相次ぐ核実験や長距離弾道ミサイル発射で危機的な状況に陥った米朝関係を背景に、政府は一気に導入を決定。その狙いは「日本防衛」ではなく、米領グアムやハワイに向かう弾道ミサイルの迎撃でした。

 しかし、トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は18年以降、3度の会談を行うなど、両国関係は劇的な変化を遂げます。

 一方、昨年8月に米ロ間のINF(中距離核戦力)全廃条約が失効したことで、北東アジアは、米中ロ3国間の、最大射程5500キロにおよぶ弾道ミサイルや巡航ミサイルの軍拡競争時代に突入しました。北朝鮮の弾道ミサイルを想定しているイージス・アショアは完成したころには完全に「時代遅れ」になります。まさに壮大なムダであり、配備撤回以外にありません。

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