パラ中止で危機発信こそ
11日の厚労省コロナ対策専門家会議は、感染爆発を「災害時の状況に近い局面」「多くの命が救えなくなるような危機的状況」としつつ「こうした危機感を行政と市民が共有して対応」することを強調。12日の東京都モニタリング会議は、感染拡大は「制御不能」とし「災害時と同様に、自分の身は自分で守る感染予防」を主張しました。
この点で明確にすべきは、「災害」といいますが自然災害ではないということです。緊急事態宣言下で東京五輪開催を強行するという誤ったメッセージを出し、人流抑制に失敗して爆発を招いたという点で、「重大な人災」であることは明らかです。「行政と市民が危機感を共有して」といいますが、政府自らが日本中をお祭り気分に巻き込み「危機感の共有」を壊してきた責任も明らかです。
いまこそ政府や東京都は五輪開催強行の誤りを認め、パラリンピックの中止を決断し、矛盾したメッセージを打ち消すことで国民に対し明確に危機を発信することが必要です。
「制御不能」「自分の身は自分で守る」というだけでは、そもそもなんのために政治と行政はあるのか。「人災」に対し反省を欠いた無責任な態度です。なんとしても感染を減らすための対策を示し実行に立ち上がることが必要です。
国会開き議論を
ワクチン接種を安全、着実に進めることは引き続き重要ですが、まず政府分科会も提起しているように、「人出の5割減少」など行動制限が必要です。ウイルスは人の体の中にいるので、ソーシャルディスタンスの確保をはじめ、人と人との接触を制限し、感染の経路をふさぐことがどんな時も基本です。マスク、手指消毒も同様です。
検査による無症状感染者の発見・保護の取り組みも、現状では感染拡大のスピードと感染者の拾い上げのスピードが平衡するなどして十分効果が上がらない可能性があり、行動制限とセットで取り組むことが不可欠です。
自粛、休業、在宅ワークなどの行動制限には、「パラリンピック中止」など矛盾したメッセージの打ち消しとともに、十分な補償を打ち出し、社会全体の積極的協力を得る決断が必要です。
ただちに国会を開き、情報を与野党が共有して国民の前で必要な対策について議論することも重要です。
無症状者を保護
東京では検査陽性率が20%を超える状況で、検査が不足して把握しきれない感染者が多数存在するとみられる一方、新規陽性者における無症状感染者の割合も12・4%(8月3~9日)とされています。検査で無症状者を把握し保護することが感染抑制に極めて重要ですが、保健所や行政機関がひっ迫している状況のもとで、検体採取のキャパシティーをいかに確保するかが課題です。東京では検査能力自体は1日10万件といいます。
専門家は、抗原検査キットやPCR検査キットを事業所や家庭に配り、国民が日常的に自主採取する方法も提案しています。「自分で自分を守れ」というだけでなく、一人一人が感染伝播(でんぱ)の鎖を断ち切る方法を国民に保障するべきです。
— しんぶん赤旗より —