『鼓動を聴いて』 ヤン・フィリップ・センドカー/著 たかおまゆみ/訳
ビルマ(現・ミャンマー)でのこと。盲目になった少年ティンと、足の不自由な少女ミミ。
ミミを背にしていれば、風のように駆けることのできた少年と、ティンがいればどこにでも移動
し感じることの出来た少女が共に過ごした時間は、ふたりの一生の中では短い時間だったけ
れど、揺るぎのない愛を築いていました。
それは、男女間の愛というものを越えて、それぞれが体の一部であったかのように思います。
ラストが近づくに連れて、目が見えるようになったティンの感じた鼓動が、強い絆を現している
ことを感じ、あぁ、だから(タイトルが)「鼓動」なのだなーと、あらためて感じたのでした。
とても深い深い 愛のお話。
ドイツでは、ベストセラーだとことを耳にし、こういう本が選ばれる国民性を素晴しいと感じます。
先日発表された日本で読まれた(買われた)本は、ベスト1が「もしドラ」で、2位がダイエットの
本だったように記憶しているのですけれど・・・。
男女間の愛のことでもあるし、家族としての愛のことでもあるし、・・・・少し難しいけれど。
嫉妬やねたみ、羨望等のチクチクとした気持ちが「恐れ」を招き、恐れがあると正しい愛の形が
わからないのだと、そういうことを教えられる一冊です。
本書の「愛」を必死で考えようとしたとき、私の嫉妬心がそれを邪魔しました。理解できないか
もしれない・・・。
そう。嫉妬というものは、単純な欲なのかと思ったら、やはり失うことや奪われることへの「恐れ」
を伴うものなのですよね。だから、愛ゆえの嫉妬は・・・本書で言うところの愛には値しないのだと
感じ、そもそも時限の違う深さの愛なのだと、恥ずかしい気持ちにもなるのでした。
目で見えることが全てではなく、実は 見えないところに真実が潜んでいることもあるのでしょう。
橙色の衣を纏った僧侶の言葉は、人生の教訓のようであり、お話の世界を抜けて語りかけてくる
ようです。
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