小さな人のお話をいろいろ読んで やはり 小さい人のお話は好きだと思います。
小さい人たちは 私たちの生活と小さい人たちの生活とを 行き来して いつもいつも「ここにいるよ」
と合図を送ってくれています。 私たちの生活への 贈り物として、季節の美しいものとして。
七重という名の女の子と 七重の従妹の子ども・薫の 2代に渡る女の子のお話。
“花明かり”はとても小さい。
“花明かり”が幼いうちは、嬉しいと花の香りを発する。
成長した“花明かり”は、喜ぶと自らの内から輝く。
“花明かり”がまわりにいると、花はみごとに咲き乱れ、
果実はたわわに実り、緑は濃く深くなる。
「花明かりにふさわしい大きさのものを仕立てれば、花明かりは、きっと、やってくる。」
七重は ビニール製のウサギのピョンちゃんを、とても可愛がっていた。
おもちゃ箱の引き出しのひとつをピョンちゃんの家にして まめまめしく手を掛けていた。
4つに仕切った家の中は、寝るところ・台所・お風呂・本を読んだりお茶を飲んだりするところ。
七重の母親は手先のとても器用な人で、一緒にベッドカバーや小さなワンピースを縫ってくれた。
七重の作った少々不器用なものでも、温かみがあると、いつも褒めてくれた。
悲しいことに、その母親が亡くなり 代わりにやってきた新しいママは、和風を猫は嫌いだと言い
母親の実家に戻してしまい、そして(きっと)七重のこともいらなくなった。
母方の祖父母と暮らし始めた七重は、やさしさに包まれて やがて“花明かり”と知り合うこととなる・・・。
とっても面白かった・・・!可愛いものがたくさん溢れていて 終わりに幸せの待っているお話だった。
そして 外国の小さい人のお話(*)も お話の中に登場することも うきうきさせてくれる。
小さい人は 必ずいるけれど 「まだ会ったことはない」 という人は 少なくないはず。
この本を読んで 小さい人のいる現実を どうぞ思い起こしてみてほしいと思います。
隣にある花が生き生きと咲き乱れている人は、
もしかしたら 振り向くのがほんの少し遅いだけなのかもしれません。
朽木さんのお話は数冊読みましたが(『風の靴』 『ぼくのネコにはウサギのしっぽ』
『かはたれ』 『たそかれ』) どれも人の優しさが根底にあって、ファンタジーの世界が実生活に
溶け込んでいるような・・・ 清清しい読後感のものばかりで、次の作品も読みたくなります。