絵本の時間

小学校で よみきかせをしています。
毎週月曜日の朝の読書の時間は、
読み手にとっても 心温まる時間です。

ミッシング

2009年03月21日 | 本の紹介

  『ミッシング ~森に消えたジョナ』 アレックス・シアラー/作 金原瑞人/訳

またまた アレックス・シアラー・金原瑞人さんの作品です。

『13ヶ月と13週と13日と満月の夜』(*
) も 『チョコレート・アンダーグラウンド』(*) も 彼の作品の
中から特に優れたものを選んで読んだかのように、印象に残る2冊でした。
この『ミッシング』については 様々な題材を手がけるシアラー作品ならではというべきか、これまで
読んだ3冊とはまた趣が異なり、個人的にすごく好きな本になりました。


ある日の登校途中、突然消えたジョナ。 
ジョーが止めるのも聞かず、消防車を追い続け そのまま消息を絶ってしまったのです。
親友のジョナを失ったジョーの喪失感は計り知れなく大きなもので、ジョナの居ない世界で 誰もが
自分の道を未来へ向かって歩み始めることに嫌悪を感じるほど。
ジョーは、決して心を許せる友達を作りませんでした。なぜなら、そこはジョナの場所だから。
もう見つからないのかもしれない・・・もしかしたら もう生きていないのかもしれない・・・周囲の人た
ちがどう思おうとも、ジョーはジョナの生存を信じ、待ちつづけます。
そして、待つだけでなく、同様に消えることでしか消えたジョナを見つけることはできないと感じるよう
になり、導かれるほうへ進むこととなります。

この物語は、ジョナの事件の核心に迫り、まるでサスペンスのような展開ののち終わりを迎えます。
たくさんのレビューを読むと、その辺りを「さすがシアラー!」と述べているものも多いのですが、
私は前半の、ジョナが消えてしまうシーンや、ジョナを失ったジョーの心の移ろいを現したシーンが
とても印象的で共感を覚えました。
消えたものに近づくには同じように消えるしかない、すべてを失うことを覚悟して・・・という感覚。

いずれにしても、決してアンハッピーには終わらないシアラー作品は、読み心地がよいのです。

この本のあとがきに 金原さんがあさのあつこさんの言葉を引用されていました。
とても納得できる、いいお話だと思います。  その個所を そのまま記します。

これは一般書でもそうかもしれませんが、私は児童書においてただ一つタブーがあるとしたら、そ
れは性的表現とか、殺人などといったことではなく、絶望だろうなと思うのです。人生ってこんなも
のだとか、死んで終わりだとか、破滅して終わりだとか、それだけは語りたくない。ありきたりな希
望ではなくて、ほんとうにささやかであっても、やはり若い方たちがこれから生きて行く価値のある
未来があるんじゃないかみたいなことを語りたい。(「読書のいずみ」全国大学生活協同組合連合会)





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講演会

2009年03月18日 | 絵本に関すること

赤木かん子さんの講演会に行ってきました。

よみきかせをはじめる頃に学んだ講習内容と 赤木さんのお話くださることは
必ずしも同等ではないのですが、さまざまなお考えがあることを理解しつつ
「子供たちのための」よみきかせに 役に立つ諸々の 覚書を少し。

<子供のことについて>

 ・ 子供たちには 失敗する時間がたっぷりある。なので、結果だけでなく過程が大事です。
   最初から 優れた本だけを与えるよりも 時にはツマラナイ本も読まなくてはなりません。
   どんな本が素晴らしのか わからなくなるから。
   幼い子供が「読んで!」と持ってくる本は、無条件に読んであげましょう。大人が見て、
   ツマラナイと判断する本でも。子供は、文字を音にしてもらわないと、ツマラナイのか、ツ
   マラナクナイのかさえわからないのですから。
 ・ 「読んで~!」と持っていった本を どんどん読んでもらった子で10.000冊、そうでない子
   でも2.000冊の本は読んでいます。
   子供の目は肥えていて 良い本を選ぶ勘が働くようにもなります。
 ・ 人って 「すごーい!」「おもしろーい!」「不思議っ!」と思うと、少しくらいの嫌なことは
   忘れることができます。「そのために文学はある」と言っても過言ではありません。
 ・ 子供のためになりたい、そして子供を幸せにしたいなら ①愛情 ②ごはん ③知的欲求
   を満たすこと。

<よみきかせについて>

 ・ 自分の読みたい本ではなく、子どもたちが喜ぶ本を選ぶこと。
   読んだ後に 「あ~、面白かった!また来てね!」と言ってもらうにことが必要。
 ・ よその子供に読むのなら、できるだけ新しい本から選んだ方がいい。
   古いもの(昔話等)を使いこなすには 読む本人の力が必要。
   たくさんの子供を楽しませるには テクニック(気働き)が必要なのです。
   安易に日本の昔話を読むのは危険です。(岩手のおばあちゃんになら読めます)
 ・ 1~4年生の子供には どうぞ自然科学の本をたくさん読んであげてください。
   低学年の子供ほど、変温動物(カエル・とかげ・ミミズ・・・)が大好きですが、学校では
   予算がなく、高価な写真図鑑は買えないことが多いのが現状です。また、図書担当の
   先生が女性である場合も多く、先生は自分が好き(良いと思う)でなければなかなか買
   ってくれません。
 ・ 高学年対象に読み聞かせをする場合、1冊が長くなることがあります。 声を 後ろまで
   届かせる為には体力が必要です。体力勝負です。   まず、2時間前には起きましょう。
   その場で100回ジャンプでもいいですから、体を暖めましょう。100メートル全力疾走できる
   くらいになったら 高学年に読み聞かせに行ってもよいでしょう


  赤木さんの著書の中で解説されているものの中から ご紹介いただきました。 
  

   

最後に 私たち 大人に向けて読んでいただいた本は

 『ブライディさんのシャベル』 アメリカへ移民した女性の一生を描いた絵本。
この本は、バックグラウンドをわかっていないと なぜブライディさんが船に乗って出発したのか
子供にはわからない。 黙読をするよりも 誰かに読んでもらったほうが 人生の長さを感じること
ができる本です・・・とのことでした。

自分の声や力量のことも含め もっともっと学びつつ 臨んでいきたいと思いました。
来年度からも 心をこめて 子供たちのためになる活動ができますように


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リンゴさくさく気分を どうぞ。

2009年03月17日 | 本の紹介

  『チョコレート・アンダーグラウンド』 アレックス・シアラー/作 金原瑞人/訳

 ※ この本を読んで リンゴさくさく気分になる・・・という訳では 決してありません ※

 イギリスのある町で 「健全健康党」が選挙で勝利を収めた。
 「健全健康党」の支持者が多かったからではない。 
 無関心に投票しなかった多数票が 意図せず 「健全健康党」への支持につながったということだ。
 「健全健康党」は なんと「チョコレート禁止法」を発令した。この国からチョコレートもキャンディーも
 ガムも蜂蜜も お砂糖のついたシリアルも排除され、党指定の食べ物しか買うことも売ることもでき
 なくなったのだ。

 そこで立ち上がったのが 二人の少年、ハントリーとスマッジャー。
 彼らはただチョコレートを食べたかったからではなく、おそらく自由をも取り戻すために 意思をつらぬ
 いたのだと思う。食べる自由も食べない自由も含めて 選択の自由を。
 彼らの行為は 法には反していたけれど、力強く、人の心を動かすに十分な思想があった。

 ハラハラしながら 彼らと共に 自由を勝ち取った気分。
 そして チョコレートを自由に食べられる環境を 思いっきり味わいたい読後感でした。
 普通の単行本より厚さがあるので 読む前は「えいっ!」の気持ちが必要でしたが・・・
 読み始めると あっという間に飲み込まれてしまいました。
  「健全健康党」のお陰で 我が家に浸透した挨拶があります。
 さようなら の代わりに使う 「健全健康党」の定めた挨拶です。
 それが、「リンゴさくさく気分を!」「ジューシーオレンジ気分をどうぞ!」「どうぞバナナを!」

 文字もチョコレート色というこだわりで 子供にも楽しい1冊です。
 
 マンガになり アニメーションの映画も公開されていたようです。(→*

 

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3月 16日

2009年03月16日 | 今日の本
暖かい朝です。 

今年度最後の よみきかせの月曜日になりました。
4月には 2年生になる1年生、3年生になる2年生、4年生になる3年生
そしてそして 新しく小学生になる子供たちと、楽しい時間を過ごすことができますようにと
強く強く願っています。 
また ひとつ お兄さん・お姉さんになったたくましい顔を 見せてくださいね。


1年 1組
 (R・K&N・I )

      
  『おなべおなべにえたかな』 『ひゃくにんのおとうさん』

1年 2組 (K・I &Y・K)

    
     『よるのねこ』         『あおい玉 あかい玉 しろい玉』

2年 1組 (A・H&T・H)

    
   いちごばたけのちいさなおばあさん     『いのちのまつり』

2年 2組 (K・F&K・N)

  
   『はるまでまってごらん』        『ミミズのふしぎ』      『うしはどこでも「モ~!」』

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読み語り

2009年03月10日 | 絵本に関すること

  
先月末のことですが 飯野和好さんの 読み語りの会に行ってきました。

飯野さんといえば、御馴染みのテレビアニメ「ねぎぼうずのあさたろう」の原作者で
ドキュンと印象深い絵を描かれる あのお方です。
よみきかせの講習の際にも <浪曲調で>と描かれている飯野さんの本に限っては
存分に芝居がかって読んでよろしい と習ったのも記憶に新しいところです。

江戸時代の旅人の風体で現れた飯野さんは それはそれはかっこよかったのですよ。
スクリーンに絵本の絵を映しながら 浪曲師さながらの読みっぷり。
沖縄で贈られたという 缶でできた三線で弾き語るシーンもあり 楽しさ満載でした。
この日、読んでくださったのは 以下の4冊。

 ねぎぼうずのあさたろう7 くろずみ小太郎旅日記 ふようどのふよこちゃん おならうた

そして 私が購入して帰ったのは この本たち。
    
どの本にも 丁寧に時間をかけて サインをしてくださいました。

飯野さんが「質が高い」とあとでお褒め下さったという子供たちの質問にも 
たくさんお答えくださいました。
Q:その刀は 本物ですか?
A:本物です。 と言っても お芝居で使う本物です。
Q:1冊の本を仕上げるのに どれくらいかかりますか?
A:時代背景や場所の様子などを調べる・・・「取材」と言いますが それに1年くらい。
  描き始めてからは 意外と早くて 3ヶ月くらい。
私も 「なぜ<ねぎぼうず>なのか・・・」とお尋ねしたい気もしたのですが
子供たちの質問に比べ あまりに単純な大人の質問になりそうだったので
手を挙げるのを 辞めた次第です。

日本中 (呼んでもらえれば)どこへでも読み語りに出かけるという飯野さん。
またこんな機会があったら ぜひ出向きたいと思います。
親近感も湧いたことですし あの難しい<浪曲調>、読めるようになったら嬉しいなぁと
ほんの少し 思い始めています。(ほんとは ちょっと無理かな~とも思っています)
 

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詩の本

2009年03月09日 | 本の紹介

あらためて詩の本を手に取ることが少なくなったので この春を機に 入手した本があります。

『詩の玉手箱』 三木 卓/編集  柚木沙弥郎/絵

12ヶ月に合わせた 51編の詩。  そして それぞれの詩に対する 丁寧な解説。
個人的な考えかもしれませんが どんな本でも その作者や訳者のことを知ったり
その作品の背景を知ることで 身近に感じたり深く読み込むことができるように思います。
この「玉手箱」のたくさんの詩についても 三木さんならではの気持ちを含んだ解説のお陰で
その詩の言葉ひとつひとつに 息遣いを感じ取れるようで 不思議です。

私が 印象に残ったものは 「ゆあーん ゆよーん ゆあゆよん」で有名な中原中也さん。
それから 奥様を看続けた 高村光太郎さん。 赤ちゃんのことを語った 祝婚歌の吉野弘さん。
小学校の教科書でもおなじみの 工藤直子さん。 それから シェークスピアもあるんです。
ほんとにほんとに 詩の玉手箱なのです。


そして もう1冊。
私が持っている本は古い版なのか 画像が探せないのですが

『たいようのおなら』 灰谷健次郎/編集 長 新太/絵
とてもとても素敵な 児童詩集です。
どうやったら こんな詩を書ける子どもに 導くことができるのでしょう?
その指導者の在り方に 子どもの親として 感嘆せずにはいられません。
自分自身と向き合って 自分の心の中を感じて表すことは 成長を続ける子供たちに
とても必要なことだと思います。
美しい 嬉しい 楽しい と感じる心を表すこともそうですが
「負」の部分といわれる 悲しみや怒りや人を忌み嫌ってしまう気持ちとも向き合ってこそ
自分で自分の道を切り開く逞しさを育むことができるように思います。

詩を上手に書くことではなく 気持ちを言葉で表す媒体として
もっともっと 詩に慣れ親しむことができればいいのになぁと 願っています。
「親」と呼ばれる人たちには ぜひ一度 読んでみて欲しい。

 

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3月 2日

2009年03月02日 | 今日の本


1年 1組 (T・H)  「明日は何の日か 知ってますか?」と尋ねると ほぼ全員が「ひなまつり♪」と答えてくれました。 おひな祭りに 成長を願ってお祝いすると 元気にすくすく育つことができるのですね。
それは ねずみの世界でも おんなじみたいです。
2冊目の『わゴムは・・・』では、表紙をめくり、たくさんの月が描かれたページで 「なんだか面白そう」の声が聞こえてきました。 どこまでも伸びるわゴムに「え~っ!」の声が大きくなり、とても楽しく読めました。

     
     『もりのひなまつり』    『わゴムはどのくらいのびるのかしら?』

1年 2組 (K・F) みんな 楽しそうに聞いてくれました。 
                読後に ムーンパイの写真を見てもらいました。 

     
  『ジミーのムーンパイ・アドベンチャー』    『はるまでまってごらん』

2年 1組 (R・K&A・H) 春の気配も感じて欲しくて『おなべおなべにえたかな?』を読みました。
美味しいスープが出来上がるのを喜んで、空になったお鍋が焦げ付いてしまうところでは みんな心配してくれたようでした。 2冊目は 「おてがみ」のかえるくんの上着にたくさんボタンがついた理由だよ と読み始めてみました。 3冊目の「うしは・・・」はとても楽しいそうにきいてくれました。うしが登場するたびに笑い声が増えましたが、動物は同じように鳴いているのに 聞く人によって違うように聞こえるって・・・不思議ですね~。

    
  おなべおなべにえたかな?  『なくしたボタン』    『うしはどこでも「モー!」』
                 ~「ふたりはともだち」より

2年 2組 (K・I ) なかなか間抜けな行動をとってくれるだんなさん。 牛と自分の体をロープで結んでしまう場面では、先を心配して「あ~あ・・・まずいよ大変だ」という声が聞こえてきました。 2冊目の「ぐるぐるえほん」は、ちょっと見えにくい子もいたようで、残念。 読後に先生が「今日一日で いろんなぐるぐるを探してみましょう!」と言ってくださいました。

     
   『しごとをとりかえただんなさん』     『ぐるぐるえほん』
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