「もう辞めてしまいたい」北朝鮮軍将校の間で軍から離脱の動き (1/3ページ)
- <iframe frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no"></iframe>朝鮮人民軍の第1524軍部隊を視察した金正恩氏(2018年6月30日付朝鮮中央通信)
(参考記事:コロナ苦境で配給停止…「金正恩エリート」に餓死の恐怖)
そのしわ寄せは、より脆弱な階層に来ている。コチェビ(ストリート・チルドレンやホームレス)がその代表格だが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が取り上げたのは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、それも軍官(将校)の現状だ。軍官と言えば、社会的地位が高くて待遇もよく、皆が羨む職業だったが、今やそれも昔話だ。
平安北道(ピョンアンブクト)の軍関係者が語ったのは、道内の塩州(ヨムジュ)に駐屯する第8軍団の窮状だ。本来、軍官には社宅が貸与されるはずだが、軍団所属の各部隊の軍官の多くには住む家がない。
そのため、部隊近隣に住む民間人に、カネや食べ物を家賃の代わりに支払い、家を間借りするのだ。そんな軍官が一つの部隊で50人に達するという。ある軍官が家賃として毎月支払っているのは、コメ10キロ。9月中旬の価格で換算すると4万7000北朝鮮ウォン(約560円)になる。
現金ではなくコメを支払うのは、北朝鮮の給与制度によるものだ。現金で支払われる月給は極めて低く、市場でコメ1キロすら買えないほどだが、その代わりに食糧や生活必需品が配給されるので、問題なく暮らせていた。ところが、その配給が止まってしまい、家賃が支払えなくなってしまったのだ。
家を引き払わざるを得ない状況に追い込まれた軍官の中には、近所の空き家を改造して起居している者もいるという。軍の窮状は今に始まったことではないが、軍官の間では「もう辞めてしまいたい」との声が漏れ始めているという。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
軍は、食糧を協同農場から調達することになっているが、農民はコメを軍に奪われまいと必死に抵抗する。ようやく手に入れた食糧も、輸送過程での横流しなどで部隊に到着するころにはすっかり目減りしてしまう。
今年の収穫量は自然災害の多発で例年にも増して少ないと言われており、そのしわ寄せが軍に来た形だ。ただ、以前から上に苦しみ、食べ物欲しさに民間人宅や協同農場の襲撃を行っている末端の兵士に比べれば、軍官はまだマシな方だ。
(参考記事:兵士が農民に銃を向けて…北朝鮮「食糧争奪」で分裂の危機)