
一週間ほどとある葡萄を食べている。マスカットに似ていて非なるやつで、野葡萄か山葡萄かと思うものの両者をぼくは知らない。
それは勤めるアパートのそばにありよく通る屋敷に垂れ下がっている。葡萄があまり繁茂しているのでその屋敷を怪しくしている。玄関のわきの茂みの中に「欅の杜 精神衛生相談所」という看板がありこれも不気味である。



二三日前、短篇小説のモチーフになりそうなこの屋敷のピンポンを鳴らした。葡萄について聞きたいのと葡萄をいただいているお礼を言いたくて。勝手にいただいていてお礼を言うのがえらく遅れたが。
中で明るい男性の声がして応対してくださった。
あるじも家の中も明朗。あるじの話では「もとは巨峰でしたが栄養が足りないようでこうなりました」とのこと。「もとは巨峰でした」をおもしろく感じたがそれも疑う。巨峰のとろみがほぼなくてジャリジャリ感なのだ。
建築の珍しさを褒めると「気づいてくれてありがとう」という。
お宅の壁の「シェイクスピアハウス東京」というプレートには
イギリスのストラットフォードにあるシェイクスピアの生家に模して建築されました。玄関や天井の梁などは400年以上前にストラットフォードに建てられていた古民家の部材です
とわざわざ謳うのだから言及してほしいのだと思った。
YAHOOに「シェイクスピアハウス東京」と入れるとなんとヒットする。
-シェイクスピアハウス東京-
シェイクスピアハウス東京とは、府中市の高安寺の近くにある建築物(家)で英国・ストラットフォードにあるシェイクスピアの生家を模して造られたものです。旧甲州街道から多摩川の方向に向かうと、高安寺の右側(西側)を通る道に面しています。
この建物を建てた中嶋(なかしま)さんのホームページからのお写真をご紹介します。英国と日本のシェイクスピアハウスを並べたものですが、良く似ていますね。似ているのは当然です。中嶋さんは「シェイクスピアハウス・プロジェクト」を立ち上げ、専門家や中世英国住宅の建築を学ぶ外国人研修生、ボランティアの方々と、2006年にこの家を造り上げたのです。建築の経緯は下記のサイトをご覧ください。
http://www.lovelylab.net/tarohana/shakespeare/index2.html

ぼくにとっては「シェイクスピアハウス東京」より「シェイクスピア葡萄亭」である。
雨風に揉まれて葡萄鈍色に
吹降りに色沈みたる葡萄かな
淫らなり日差し蜂螫し葡萄饐え
これを食べているうちに甘味の濃い巨峰が食べられなくなってきた。自然の酸っぱさとシャリ感にがんじがらめになってしまった。