為頼は久留米を寝台に寝かせた。神妙に老いた久留米の様子を『見る』為頼。「視力にも影響が出ていますね。呼吸も乱れています。在宅酸素を手配します」理由を問うと、為頼は久留米が直視が難しくなり呼吸も肩の筋肉等に頼るようになってるとスラスラと答えた。「さすが、天才的な『診察眼』だ」「そんなことはありませんよ」為頼が呟いていると、和代が為頼が診療所に忘れた薬品を届けにきた。「御加減いかがですか?」「楽な方だな」しかし辛そうな久留米に和代は為頼にモルヒネの量を増やすよう促す素振りを見せたが、拒否された。「わからなくなるよ、孫の声さえも。痛みを感じてる方が、人間らしい」久留米はそう言うのだった。
早瀬は太田と共に先日一家惨殺事件の起きた石川家を訪れていた。土足で血の跡の残る現場に入った早瀬。床一面血の跡。一際血の跡の濃い場所に来た。ちょうど四人分、壁にも跡がある。小さな跡もあった。拘束された一家は頭に布袋を被せられ、金槌で頭を躊躇無く大人も子供も同じ力で叩き割られ殺されていた。監察医は犯人の理性的な判断能力を疑っていた。花束を置き、手を合わせる早瀬は無言で顔を上げた。
帰り道、為頼は和代と別れた後、自転車に乗った男と擦れ違った。男の顔に異様な紋様が見えた為頼。振り返ると、鞄から刃物の柄が見えた。焦る為頼。男は和代の去った方へ向かっていた。知り合いとのおしゃべりに夢中の和代は電話の着信に気付かない。「まずいっ!」為頼は警察に刃物を持った男が広場で『暴れている』と通報した。男は怪しくはあるがまだ暴れてはいない。
為頼は走って広場まで来た。刃物男は花壇の縁に座っていた。近くで知り合いと話していた和代は少し驚いた。「どうした?」「あの男、危険です!」「診えたのぉ?」察する和代。5時の時報が鳴り、為頼達が男の様子を伺うと妊婦が一人、
2に続く
早瀬は太田と共に先日一家惨殺事件の起きた石川家を訪れていた。土足で血の跡の残る現場に入った早瀬。床一面血の跡。一際血の跡の濃い場所に来た。ちょうど四人分、壁にも跡がある。小さな跡もあった。拘束された一家は頭に布袋を被せられ、金槌で頭を躊躇無く大人も子供も同じ力で叩き割られ殺されていた。監察医は犯人の理性的な判断能力を疑っていた。花束を置き、手を合わせる早瀬は無言で顔を上げた。
帰り道、為頼は和代と別れた後、自転車に乗った男と擦れ違った。男の顔に異様な紋様が見えた為頼。振り返ると、鞄から刃物の柄が見えた。焦る為頼。男は和代の去った方へ向かっていた。知り合いとのおしゃべりに夢中の和代は電話の着信に気付かない。「まずいっ!」為頼は警察に刃物を持った男が広場で『暴れている』と通報した。男は怪しくはあるがまだ暴れてはいない。
為頼は走って広場まで来た。刃物男は花壇の縁に座っていた。近くで知り合いと話していた和代は少し驚いた。「どうした?」「あの男、危険です!」「診えたのぉ?」察する和代。5時の時報が鳴り、為頼達が男の様子を伺うと妊婦が一人、
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