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羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 5

2015-07-18 19:35:02 | 日記
「礼子!!」(ごめんね)礼子は飛び降りた!「やめろォッ!」「槍よ! 行けぇッ!!」潮は槍を投げ付けた! 獣の槍は邸のバルコニーの下辺りに突き刺さり、柄一本で気を失った礼子の背を支えた! 潮と間崎は邸の中に駆け込んだ!! 礼子はフラフラとして、柄から滑り落ちた!「どぅあああッ!」間崎は落下してゆく礼子に躊躇無く窓硝子を突き破って手を伸ばし、その手を掴んだ!! だが、体制を崩し落下する間崎の手を掴む潮! 潮自身もギリギリ残る片手で窓枠の外の壁の縁を掴んでいる! 潮の握力!!
「礼子ぉお」鬼の声に礼子は気が付いた。真下で鬼が手を拡げて待っている!!「ここだよ、お父さんはここだぁッ!」礼子は間崎を見上げた。「手を離して! お父さんは私が行けば満足するもの!」「馬鹿野郎!」「ケンちゃん?!」「嫌だぁ! 俺はもう離さない!! お前が一番辛い時に手を離したのは俺だぁ! もう、絶対離さねぇぞぉおッ!!」間崎はいつか傷付けて包帯を巻かれた礼子の腕を掴んでいた。「羽生礼子! お前に行ってほしくないヤツがここに二人もいるんだぁッ!! さぁ上るのか行っちまうのか、どっちなんだよぉ?!!」礼子は、「おいでぇ、礼子ぉぉ」間崎の腕をもう片方の手で掴んだ! 潮は笑うと、「いおおおぉあああッ!!!」とんでもない怪力で間崎と礼子の二人を腕一本で窓の内側に引っ張り上げた!
間崎は強く礼子を抱き締めていた。「痛ぇッ!」手が凄いことになったらしい潮!「ごめんなさい。あたし、やっぱりこっちがいい!!」鬼は醜く哀しんだ。「嫌だぁ、礼子ぉ、お前までもぉッ!! お前までもお父さんを裏切るのかぁ!!!」鬼は礼子を抱えて連れ去ろうとした!「礼子!」間崎がすがり付く! 二人は鬼に連れ去られた!!「槍よ来い!」壁に刺さった槍は壁を突き通して潮の元へ来た!
     6に続く

うしおととら 6

2015-07-18 19:34:52 | 日記
鬼は件の絵の中に礼子と間崎を引き摺り込もうとしている!!「ふぅぅああッ!!」変化して、飛び掛かり鬼の眉間に槍を打ち込む潮! カチィンッ! 金属音がして槍が通らない!「礼子は私と絵の中で暮らすんだぁ! 永遠になぁ!!」「礼子さんはなぁ! 生きながら死んでんだぜわかってんのかよぁ?! 友達も! 喜びも! 笑い顔も取ったら、女の子には骨だけしか残らねぇじゃねーかぁッ!!」何度も槍を打つが通らない!「あ~あ、馬鹿だねぇ。あの絵の元は絵に塗り込められた人の魂なんだぜ? だから鬼が絵に戻ったところを突かんとダメなのによぉ」後ろで見物を決め込むとら。潮は鬼に掴まれた!「ゆっくり、永遠に葬ってやる!」「ま、勝手にやってくれや」槍が効かず、絵に引き込まれてゆく潮!「ありゃダメだねぇ。おい! 潮! 惨めっぽく泣いてみろよぉ! 助けてくれぇ! って言やぁ、助けてやってもいいぜぇ? へへへっ。さあ泣けよ、泣いて頼んで見やがれ!!」煽るとらを、潮は黙って睨みながら絵に完全に引き込まれてしまった。
「ま、しゃーねーか」一瞬呆気に取られたとらだったが、すぐに絵に背を向けた。黙っているとら。さらに黙るとら。イラつくとら。本格的にイラつくとら!!「ああーッ!!
ホントに腹が立つ!」電撃を出しつつ、絵に手を突っ込むとら!「ぬぅうううッ!!」頭を掴み、槍をくわえた潮の上半身を引っ張り出したとら!「なんでお前は他のバケモノに喰われたがんだよぉ?! こっちへ来い! 今すぐここで喰ってやる!!」引っ張り出された潮は両手に間崎と礼子を掴んでいた! それを鬼が掴んでいる!!「んん? そいつらを離せよ!」「ひやた(嫌だ)ッ!!」とらはウンザリして絵の中に入った。「おい、知ってるかぁ? 人間には潮時って言葉があるんだってよぉ!」鬼の頭を掴むとら! そのまま爪で引き裂く!!
     7に続く

うしおととら 7

2015-07-18 19:34:43 | 日記
「今がソイツよぉ!」「あああぁぁッ!!」鬼が絶叫する中、完全に脱出した潮達、とらも出てきた!「潮、絵を突けぇ!!」「どぅおおおッ!」「お父さん?!」獣の槍を礼子は庇った!! 礼子の胸に突き刺さった! が、するり、と槍は礼子の体を抜けて傷付けず、絵の鬼のみに突き刺さった!! 呆然とする潮。「当たり前だろ? 獣の槍はバケモノを殺す為の槍だなんだぜ?」とらは呟き、「アアアアッ!!」絵の鬼は砕け散った!!
絵の前に、浄化され、人の姿を取り戻した羽生道雄が朧気な姿で現れた。「お父さん」「礼子、幸せにおなり」「お父さん」羽生道雄は潮達に深々と頭を下げ、昇天していった。「お父さん」涙を溢す礼子。間崎は礼子の肩に手を置いた。「羽生さん! ほら!!」件の暗い絵が、明るいタッチに変わり、絵の中の幼い礼子も微笑んでいた。絵を見た今の礼子も微笑んだ。「そうそう、その顔! その顔でモデルになってよ!!」「うん!」「約束だぜ!」と爽やかにしていると、とらが背後から食べようとしてきたので槍で小突いてやる潮。「ばっか野郎! ちょっとはマシなとこもあるかと考えた俺が馬鹿だったよぉ!」モメてると、「おい、蒼月。それとか、さっきの格好とか」「んあ?」間崎を振り向いた瞬間、とらは逃げ出した。「だぁッ? また今度話しするわ!」潮はとらを追い掛けていった。「待ちやがれとら! ここで退治してやる!!」「へんッ!」罵り合いながら去っていく二人を、礼子と礼子の絵が微笑んで見送っていた。
・・・熱血バトルだけじゃない、ギトギトした話も描いちゃうぞ! という回だったね。負の感情を描けるから後の白面の悪や哀れさも描けたのかも。
にしてもよく1話で纏めましたなぁ。