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ノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典栄誉教授の深い言葉

2019年04月23日 | 政治・経済
日本人の話題は多くの分野にわたる。
自然科学を見てみよう。
2016年のノーベル医学・生理学賞を、東京工業大学の大隅良典(おおすみよしのり)栄誉教授が受賞した。飢餓(きが)状態に陥った細胞が自らの蛋白質(たんぱくしつ)を食べて栄養源にする自食作用(オートファジー)の仕組みを解明した功績が評価された。日本のノーベル賞受賞は3年連続で計25人。医学・生理学賞は平成27年の大村智氏に続き計4人となった。

オートファジーとは、ギリシャ語の「オート」(自分)と「ファジー」(食べる)を組み合わせた造語で、栄養がなくなった細胞内に、二重膜で蛋白質などを取り囲むオートファゴソームという小胞ができ、分解酵素が入った細胞小器官と融合して蛋白質をアミノ酸に分解し、栄養源として再利用する仕組みだという(平成28年10月4日付「産経新聞」より)。

この現象の存在は1950年代から知られていたそうだが、分子レベルでのメカニズムや生理学的な意義は謎で、大隅氏はその解明に取り組んだ。

昭和63年(1988年)、酵母(こうぼ)で蛋白質などが分解されていく様子を光学顕微鏡で観察することに世界で初めて成功し、平成5年にオートファジーに不可欠な14種類の遺伝子を特定した。オートファジーが細胞内に侵入した細菌や不要物の除去など重要な役割を担っていることを突き止め、この分野の研究を急速に発展させた業績はこれまでにも高く評価され、ノーベル賞は“本命”だったという。

私が面白いと思ったのは、大隅氏が記者会見で、研究者がオートファジーに関心を寄せなかった時代に自分が研究を始めたこと、「人がやっていないことをやるほうが楽しいというのが本質」で、「誰が一番乗りするかを競うより、誰もやっていないことを見つける喜びのほうが大事」と語ったことだ。

そして、大隅氏が研究を始めたときには、「オートファジーが必ずガンや寿命の問題につながるなどと確信していたわけではない」とし、基礎科学の重要性を強調したことである。

民主党政権時代の事業仕分けで、蓮舫(れんほう)氏が「二番じゃダメなんですか」と予算カットために発した言葉が物議(ぶつぎ)をかもしたが、大隅氏の言葉は深い。「一番乗りを競うよりも誰もやっていないこと」に研究の意義を見出した大隅氏は、すぐには利益に結びつかない基礎研究の重要性を同時に訴えている。

つまり、どちらも大切なのである。そして日本には、その両方がある。

---owari---
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