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EU(欧州連合)はなぜ崩壊するのか

2016年04月19日 | 外国

EU(欧州連合)の加盟国は28か国にのぼり、その人口は5億人を超えます。 

世界全体の約7%の人口がこの地域に住み、経済規模は世界の約25%を占めるほど大きなものです。通貨も「ユーロ」に統一されており、国際決済通貨(ハードカレンシー)として、ドル、円、ポンドと並ぶ信用を持っています。

 

EUの一番の特徴と言えば、「人、モノ、サービス、資本」の自由な移動です。これは「シェンゲン協定」を結ぶことで成り立っています。このEUの中核となる「シェンゲン協定」が今、難民問題によって存立の危機を迎えているのです。

 

*「シェンゲン協定」とは、EU諸国が定めた国境コントロールに関する取り決めで、協定締結国では自由往来を可能にして、域外とは共通査証での往来を認めるというものです。

理念的には欧州統合の中枢を担うものである。(by Wikipedia)

 

この「シェンゲン協定」が崩壊し、欧州諸国が恒久的に国境警備を敷いた場合、国境に位置する国々は今後10年間に、約1100億ユーロ(1200億ドル)相当の損失になるという。

現在、一部の国は、アフリカや中東から大量の移民が流入する状況に国民が不安を募らせており、一時的に国境警備を強化している。

 

このように現在、EUは崩壊しつつあります。理由は皆さんご存知の「難民問題」です。去年1年間で、ドイツに100万人強の難民がやってきました。特にシリアから多いのですが、他にイラク、アフガン、リビアなどです。

 

それでEU諸国は、「俺たちは、もう難民を入れたくない!」と拒否しているのです。いくつかの国は、国境に鉄条網をつくり、隣国から難民が流入してこないようにしています。

なぜこれが、「EUの崩壊」につながるのでしょうか?

 

EUは、1つの国のように、人、物、金の行き来が自由になっている。人の流れは、「シェンゲン協定」で定められています。EU内なら、まったく「1つの国内」にいるがごとく、隣国から隣国に、なんの検査もなく移動できるのです。

 

ところが難民問題に対する立場の違いから、隣国との国境を封鎖し、「入国管理」がどんどん復活しているのです。つまり、EUの柱の1つである、「人の往来を完全に自由にする」は、事実上崩壊しているのです。

 

1つ例をあげましょう。難民が来る、もっともポピュラーなルートは、トルコとギリシャです。この2国に上陸して、豊かなドイツを目指すのです。現在ギリシャには、「1日2,000人」の難民が来ているといいます。

 

ところが、隣国マケドニアが、国境を封鎖してしまいました。それで、難民たちはマケドニアに抜けることができず、ギリシャ国内に封じ込められているのです。そのギリシャは、皆さんご存知のように、事実上の「国家破産状態」にあります。失業率は27%(!)で、難民に仕事を与えるどころか、自国民も働く場所がない。

 

それで、難民たちは、住む場所も提供されず、路上生活をしているのです。こういう悲惨な現状について、EUでもっとも影響力のある政治家メルケルさんが非難されています。

解決策は明らかで、難民が祖国に帰れるよう、祖国の復興を支援すべきなのです。そして、すでに来ている難民に対してはできる限りの支援をしなければなりません。

 

ところがメルケルさん、いまだに、「EUは、人口5億人もいるのだから、数百万の難民を受け入れられないはずがない」などといっています(つまり、「もっと受け入れる」と宣言している)。

しかし、100万~200万というのは、「1年間で」です。この状態が10年もつづけば、難民は「数千万規模」になる。いったいどうやって住居を提供し、食べさせていくつもりなのでしょうか?

 

いずれにしても欧州は、「難民問題」があまりにも深刻で、他のことが何もできない状態になりつつあるのです。

 

先月の3月7日、ブリュッセルでEUの緊急サミットが、トルコを交えて開かれた。

EUを破壊しそうになっている難民問題。その解決策を見つけるための重要なサミットでした。

ここで何も決まらなければ、あるいは、今までと同じく決まったことが何も実行に移されなければ、EUは急速に「崩壊」に向かうだろうと、事前にさんざん危機感が煽られました。

 

そのメルケル首相が強く主張しているのが、難民問題の「EUレベルの解決」。具体的には、トルコを引き込んでのEU国境の防衛です。

「ドイツは難民の受け入れ数の上限を作らない」という崇高な理念を貫いている。しかし、何のことはない、今後、難民はEUの国境のところでシャットアウトしてしまうという構想なのです。

 

トルコは、すでに中東難民を250万人も保護している。中東からヨーロッパに渡る難民は、まずトルコに入る。トルコは中東難民の一大中継地なのです。その難民は、機を見てボートでギリシャに渡り、そこからバルカン半島を北上して、最終的にオーストリア、ドイツへ到達する。この流れを遮断できれば、EUの難民は劇的に減る。だからEUは、トルコの協力を得ようとしていたのです。

 

トルコ政府は、今回のサミットにおける自国の優位性はしっかりと自覚している。トルコの協力なしに、EUは難民問題を解決することはできない。このまたとない機会を利用するためか、トルコ政府はサミットの2日前と当日、反政府の市民デモを放水やら催涙ガスやらゴム弾で蹴散らすなど、かなり強引なことをやったのです。

 

案の定、EUはそれに対して強く抗議もできず、サミットでの交渉がスムーズに行くよう、トルコの代表を相手に必死の調整に追われていたのです。

そして7日、緊急サミットの蓋が開いたら、そのトルコが突然、新しい提案を持ち出し、EUの国々をびっくりさせたのでした。

 

その内容は、

①トルコ国内の250万人の難民の待遇改善のための資金として、EUが2018年までに30億ユーロを拠出する(EUは昨年11月に、2016年、17年分としてやはり30億ユーロの援助を約束しているので、合計すると60億ユーロだ。日本円にして約8,000億円)
②トルコは今後、トルコからギリシャの島に渡った不法難民を全員引き取る用意がある。ただしその経費はEUが負担する
③トルコがギリシャに渡ったシリア人を引き取った場合は、その数と同じだけのシリア難民をEUがトルコから正式に引き取る
④ 今年6月末、トルコ人に対するEUの旅行ビザの義務を廃止する
⑤ トルコのEU加盟交渉の再開に向けてEUは早急に準備にとりかかる

などなど。

 

これらの条件は直前まで行われていた交渉では明らかにされていなかったため、当日のサミット本番でトルコが読み上げた途端、爆弾が炸裂したような騒ぎになってしまったという。EUの弱い立場はことさら明確になり、会議は30分も中断されたのです。

 

これにより、7日中に何らかの結論を出すという希望は消え、EUの難民問題は次回サミットまで持ち越されることになったのです。

 

これから、トルコの提示した条件が慌てて検討されるのだろうが、ドイツの州選挙までには、もう間に合わない。メルケル氏は、十分に資金援助をすれば、トルコは難民を自国に留めおいてくれると思っていたのかもしれないが、そう簡単な話ではなかたのです。

 

このように、EUの結束は無残にも引き裂かれて行こうとしています。

そもそも、EUの結成には勝算があったのでしょうか。私にはまったく見えてきません。

 

EUはもともと日本一国と対抗するために誕生したものです。

つまり、アメリカ、EU、日本の三極体制だったわけです。

しかし、現状のEUは貧乏な国ばかり集まっているからどうしようもないのです。

EUはほとんど助け合いの労働組合の色合いが強い。だから、力強さがないわけです。

 

EUは大きな破局を迎えるはずです。おそらく、とんでもない混乱になります。それがわからない今のヨーロッパの人たちは、どれほど知性が低くなっているのかと憂えています。

どのような形をつくっても、これはやがて崩壊します。

 

国が集まれば強くなると思って、問題のある国どうしが欲得で集まっているのですが、強い国が集まれば強くなりますけれども、ガタガタの国どうしが集まって強くなることは絶対にありません。これは、お互いの病気が感染しあうだけです。

 

また、各国のエゴが本格化して、どこがリーダーシップをとるか、どこが利益を集めるかということで、いろいろな争いが起きてきます。

ドイツ以外の国は、ドイツから利益を取ることだけを考えています。ドイツがもっと調子がよければなんとかなるのですが、今のドイツにはそのような力はありません。

 

そして、東欧とロシアの情勢があるので、ヨーロッパ全体のエネルギー力学から見るかぎり、この統合による経済的発展はありえないのです、と断言できる状態に今、あるのです。

 

本当はドイツが強くなければ、EUは繁栄しないのです。

EUはドイツをもう少し自由にしてやらないかぎり、あるいは、発言権を与えてやらないかぎり、やはり、EU全体として繁栄することもないのではないでしょうか。

 

みんなでドイツを責め続けつつ、金だけをむしり取っているような状態なのです。これでは力がでません。お金をあげても、むしり取られるだけで、何もさせてもらえないんですからね。お金を出し渋るのは当たり前です。

 

まるで、「一パーセントの大金持ちから巻き上げたら、あとの九十九パーセントは食える」と言っているような感じに近く、EUは加盟国ばかりが増えましたが、貧乏な国ばかり増えてくるため、たまらないわけです。

 

やはり、ドイツに、「どこの国も、“生活保護”が欲しくて集まってきているが、“生活保護”の国ばかりでは困る。考え方を教えるから、経済的に発展するような、ドイツ的な国のやり方に変えてくれ」という意見ぐらいは言わせてやらないと駄目なのです。

 

「自分の国をもう少し豊かにしてくれ」と指導させてもらわないといけません。ドイツを解き放ってやらないとかわいそうです。これが、EUを救う方法の一つですが、時すでに遅しの感があります。

 

---owari---

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2 コメント

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欧州連合(EU)崩壊後の世界 (稲美弥彦)
2016-05-07 14:27:04
欧州連合は、落ち目のアメリカの基軸通貨である米ドルに代わりユーロが基軸通貨にしようとしているが肝心のEUがガタガタなら欧州連合崩壊はアメリカより先に来るでしょう。
ちなみにロシアとイランは欧州連合崩壊肯定し、アメリカと中国が欧州連合崩壊否定派だそうです。
何れにせよロシアとイランの新銀行でAIIBやIMFなどは消滅するでしょう。
BRICS銀行はアメリカや欧州にとっては脅威だし。
返信する
こんにちは (このゆびと〜まれ!)
2016-05-07 16:40:21
稲美弥彦さんへ

はじめまして。
私の稚拙なブログにもかかわらず、コメントを頂きまして、ありがとうございます。

政治・経済に大変お詳しい方とお見受けしました。

ロシアとイランの新銀行について先行きは分かりませんが、AIIBやIMFなどの消滅は十分にありそうですね。

また、何かお気づきのことがありましたら、ご投稿ください。ありがとうございました。
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