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中学生たちは八田與一の物語で心を磨いた ~ 歴人(歴史人物学習館)便り(3)(後編)

2024年02月02日 | 外国
台湾の人々と力を合わせて、戦前、東洋一のダムを作りあげた八田與一(はったよいち)の物語は歴史教育だけでなく、道徳教育にも有用。

(「外国のために尽力するというのはすごいこと」)
特に八田與一が台湾の人々と、民族の違いを乗り越えて力を合わせた点を、生徒たちは「すごい」と感じていました。

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すごいと思ったのは、このような大規模工事の指揮を母国でもない国のためにとり、豊かにさせたということです。日本国内も不安定な状況であったにもかかわらず、外国のために尽力するというのはすごいことだと感じました。
私は今回の学習で八田さんの凄さを感じました。人種差別をせず、台湾のために生きた八田さんのように、周りを気遣える人が世界にはもっと必要だと感じました。同時に私は八田さんのような人間になりたいと思いました。(男子)
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私は、この話を通して、歴史上の人物を知ることで、国どうしの繋がり、今の世の中に必要なことが分かると思いました。国どうしの繋がりという点では東日本大震災では台湾からの支援がありました。これは台湾の人々からの「恩返し」に思えました。
今の世の中に必要なことという点では、八田與一の「差別をしない」「どんな人でも平等」にする人柄にあると思いました。この二つのことから、私が世界に伝えることは「国や人種関係なく人助けすることは自分に返ってくる」ことです。(男子)
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グローバル化、国際協力などという抽象的な掛け声だけでなく、実際に民族の違いを乗り越えて、台湾農民と力を合わせた八田與一の物語こそ、生徒たちに真の「国際派日本人」の姿を教えるものであったでしょう。

(「八田與一さんが残してくれた日本と台湾の信頼をこれからも大事にしていきたい」)
先の東日本大震災でも、台湾は先陣を切って大規模な支援をしてくれましたが、その陰には台湾と日本の強い絆があり、八田與一の事跡もその大きな一因となっていることを生徒たちは学びました。
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八田與一さんが台湾の方々から慕われているのは、功績以外にもあると気が気づきました。国境を越えて思いやるという八田與一さんの行動は人々に敬われるべきものだと思いました。八田與一さんが残してくれた日本と台湾の信頼をこれからも大事にしていき、誰もが国や世代に関係なく人を想う心を持って、あたたかい世界になれたらいいなと思いました。(女子)
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私は八田與一さんが台湾に残した功績を学び、人に感謝する気持ちは世界共通なんだと感じました。
当時、台湾は日本の統治下にあったわけですが、現在でも八田さんの追悼式が行われたり、日本と友好関係を築き続けてくれる台湾を見て、どんな状況にあっても人々の助けになることを続ければ、その分遠い未来までも感謝し続けてもらえるんだなと感じたお話でした。(女子)
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これこそ、理想的な国際交流でしょう。

(真の深い学びとは)
ちなみに、現在の中学歴史教科書が八田與一を記述しているか、調べてみますと、8社中3社が記述なし、3社が数行のコラムなどで紹介。人物として、その苦闘ぶりを記述しているのは育鵬社、自由社のみでした。噴飯ものは教育出版で、「歴史の窓 台湾の植民地化」というコラムで、まずこう台湾統治を記述します。

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下関条約によって,日本は台湾を植民地とし,総督府をおいて約50年にわたつて統治しました。鉄道、ダムの建設や,産業の発展を図る一方で,日本の支配に反対する台湾の人々の運動を厳しく取りしまりました。しかし,日本からの独立を求める運動は,その後も長く続きました。[教育出版]
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この直ぐ横に、「台湾の鳥山頭ダムの建設に力を尽くした八田與一の像」と説明した写真をつけていますが、それ以外の説明はありません。これでは生徒たちは、八田與一は植民地支配の一環としてダム建設をした人間と捉えてしまうでしょう。

八田與一の苦闘ぶりをしっかり辿れば、台湾統治に関しても、次のような感想も出てくるのです。
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植民地と言えば、命令に従わなければならないし、自由や大切なものまで奪われてしまうようなものだと認識してきたが、日本による台湾の植民地化はそうではないことに気づいた。また、見下ろすような像にだけはしないでほしいと言った八田さんの言葉から、すごいことを成し遂げても慢心したり、人の上には立とうとはしない欲がない性格だったことが分かった。(女子)
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このように歴史人物を通じて史実をありのままに学べば、上述の教科書記述がいかに一面的、概括的なものか、分かるでしょう。こういう思想誘導型の教科書で学んでいる生徒たちにこそ、歴史人物学習で精確に史実を学んで欲しいと思います。

また道徳の教材としても、「人に親切にしよう」とか「差別はやめよう」などと抽象的な徳目を学ぶよりも、次のような「深い学び」ができるのです。
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八田さんについての動画を見たとき、第一に思ったことは「こんな人になりたい」です。
私は私生活でも人の手助けや手伝いを積極的に行っています。ですが、自分にとっての「鏡」となる存在がいませんでした。今回その「鏡」となる人物を見つけられたので、それに向かって走り続けたいと思います。(男子)
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八田與一を「鏡」として、自分が日常生活で問題にぶち当たった際には、「八田與一ならどうする?」と自問する事ができます。単に「人に親切にしよう」などと抽象的な徳目を覚えるよりも、はるかに自分の生き方に根ざした学びとなるでしょう。

歴史教育においても道徳教育においても、歴史人物学習は、これほど深い学びをもたらすのです。あなたが歴史人物学習館の賛助会員となっていただければ、毎年3千円の賛助会員費で、30名の生徒をこういう深い学びに導けます。明日の日本を支える国民を育てるために、ぜひご支援をお願い申し上げます。

歴史人物学習館 賛助会員申込み => https://rekijin.net/sanjyo_kaiin/
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(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

---owari---
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