フリーライターである私の取材対象者は、ほとんどが大人だが、時々子どもたちの取材もある。そんな取材前には、気持ちがウキウキする。
町郊外のMリンゴ果樹園に向かった。近くの幼稚園から歩いて来た園児たちに、M代表の手渡しでリンゴがプレゼントされる。予定の時間に、青い帽子の園児の行列が坂道を歩いてやってきた。
カメラを構えて、リンゴの手渡し場面を数枚撮った。直売所で試食のリンゴを食べて、代表に向かって全員で声を合わせてお礼を伝えると園児らは帰ってゆく。私は「給食が楽しみだね」と声をかけていると、4歳の子が寄ってきて、私の顔を見上げると両腕をいっぱいに広げた。私は腰を低くして両腕をその子の背中にまわすとハグしていた。マスク顔の私だが目を見合わせると、お互いに笑顔になった。
果樹園の小道を手をつないで園児たちはおりてゆく。ぼくの胸には、その子の笑顔が刻まれたままだ。
何が起こったのだろう。あの子の胸で……。