梅雨入り

2018年05月31日 | 日記
今年は季節の移り変わりが速いですね。もう梅雨入りしてしまいました。
この季節の変化に体がついて行けなかったようで、コンサートの後ひいた風邪がなかなか抜けず、ずっと半病人でした。加えて右の股関節痛が一向に改善しないので整形外科でレントゲンを撮ってもらったところ、何と変形性股関節症との診断。もともと股関節亜脱臼でしたが、今までは特に問題を感じたことはありませんでした。痛みは歳のせいだそうです(苦笑)。
いやはや、歳を取るとはこういうことなのですね。疲れがいつまでも残る、風邪がなおりにくい、痼疾が痛み出す。でも、どんな無茶もできた若い頃、存分に無茶をしてきたのですから本望です。50をいくつも過ぎた今、無理がきかなくなっても当然というもの。右足の付け根をさすっては「今までよく頑張ってくれたね~、有難うね~」とつぶやく毎日です。
1週間ほど前、咳が抜けなくて背中がバリバリになったので、たまりかねて鍼治療に行きました。お陰でラクになりましたが、その時「吉田さんは毎年この時期に体調崩しますね。湿邪の体質なので、気を付けて下さい」と言われ、ああそうだったな、と思い出しました。湿邪の人は体質的に水はけが悪く、外に湿気の多い梅雨時は特に、内にも水分が溜まりやすいのだそうです。去年も言われましたが、あまり水をがぶ飲みせず、室温の水を少しずつ飲むように心がけて下さい、とのこと。気を付けます。
それにしても、湿邪や風邪のせいばかりとは思えないほど気分が沈むので、何か変だなと思っていたら、またしても訃報が届きました。それも2人続けて。お一人は仕事の関係でお世話になった方だったので、お通夜に参列してきました。そして、それを機に体調はほぼ元に戻りました。以前にも書きましたが、私は知り合いの訃報が届く前には決まって抑鬱状態になるのです。本当におかしな体質です。
さて、これからは9月24日のメサイアの公演に向かいます。ヴィンテージ・カルテットの伴奏で、メサイアを2時間弱に収まるように抜粋して演奏します。指揮はM先生。合唱大好き人間の私は、リサイタルよりこっちの方がワクワクです(笑)。皆様、どうぞご来聴下さいね。
先日のコンサート前にM先生から教わったストレッチが、呼気圧を高めて呼気を飛ばすのにとても効果的なのでご紹介したいのですが、何というか、言葉で説明するのがとても難しいのです。今度の発声セミナーまでにはきちんと言語化したいと思います。どうぞお楽しみに、
それでは、皆様もこの梅雨をどうぞお元気で乗り切られますように!

バッハ頌

2018年05月12日 | 日記
M先生のピアノリサイタルが終わりました。
何しろ色々な意味で規格外の方ですから、リサイタルと言っても、私たちが常識的にイメージするコンサートとは随分違っています。
まず、プログラムが無い(!)。今日、Iさんと一緒にランチをしようと思って少し早めに県立劇場に行き、レストランに入ると、M先生とスタッフの皆さんがちょうどお食事中でした。せっかくなので相席させて頂いたのですが、その場でM先生はまだ「何を弾こうかな~」なんて仰っているのです(笑)。もちろん、先生のアタマの中には既に青写真は出来上がっていたはずですが、とにかく抽斗が多く、しかも次々とアイディアが溢れ出てくる方ですから、すべてがフレキシブルなのです。
半ば闇鍋をつつくような気分で客席に着きました。カナダからやってきたバイリンガルの司会者(M先生の長年のお友達、日本人女性です)のMCで、日本の歌、外国の歌、映画音楽など、馴染みやすい曲が次々とメドレーでピアノから流れ出てきました。どれもM先生のアレンジです。それはごく自然で、雄弁で、温かく生き生きとしたスケールの大きな演奏で、ピアノの音はこんなにも豊かな表情を持っているのか、と目の覚める思いでした。
中でも圧巻は、バッハの「トッカータとフーガ」でした。オリジナルはパイプオルガンの曲ですが、ピアノ楽器の特性を最大限に生かしたアレンジで、しかもこれが紛れもなくバッハなのです。M先生はオルガニストでもあるので、それぞれの楽器の可能性を知り尽くしていらっしゃいます。そのM先生の手になる「ピアノ版トッカータとフーガ」は、バッハも泉下で唸っているだろうと思うほど見事な音楽でした。
また、このコンサートには先生や私の母校の中学校のコーラス部が友情出演しましたが、少ない人数ながら澄み切った歌声を聴かせてくれて、心が洗われるようでした。数日前、伴奏合わせに行かれるM先生のアッシー君として練習に同伴したのですが、中学生ってすごいですね。M先生がちょっと一言アドバイスするだけでパッと声が変わるのです。そして、その1回きりの練習で本番もばっちり歌ってくれました。最後のアンコールでも、突然校歌の伴奏を弾き出したM先生に合わせて、ちゃんと校歌を歌ってくれました。実はこの学校の校歌は混声4部合唱なので、男子が1人しかいないコーラス部の編成で歌うのはちょっと無理があるのですが、男声が主旋律になるところは、どうもM先生も一緒に歌っていらした気配。中学生たちもさぞ戸惑ったことでしょうが(笑)、音楽とは本来、心から溢れ出る想いの結晶なのだ、ということをリアルに体験できたのではないかと思います。音楽とは、初めから形が決まっているものではない。楽譜が音楽なのでもない。まず最初に心が動き、それが音や声を誘発するのです。音楽だけでなく、人間の営みは皆、心が動くことから出発しているのですよね。目に見えざる心の動きが、形となって表れる。心は形になる。心の動きはエネルギーなのだ、ということをつくづくと感じたコンサートでした。
感じる心って、枯渇しがちです。「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」という茨木のり子のドキッとする詩がありますが、芸術家は感受性が命。一方、世の荒波を乗り越えてたくましく生き抜くためには「鈍感力」も必要です。転んでも立ち上がり、前へ進む強い意志がないと、その感受性を世のため人のために生かすこともできません。しかし、少々のことには動じずに自分を貫こうとすれば、「少々のこと」に対する感受性は鈍ります。「優しく、強く」生きることは、実際にはなかなか難しい。M先生が時折見せられる、驚くほどハッキリした言葉や態度は、この大切な感受性を守り、他者に対する愛を実践によって現実化することとセットなのでしょう。
見習うべきことがいっぱいです。

緑のそよ風コンサート終了

2018年05月05日 | 日記
昨日「みどりの日」に、緑のそよ風コンサートを無事終えることができました。出演者一同、ご来場の皆様に心より厚く御礼申し上げます。
実は、5月4日がみどりの日であることに、出演者4人とも全然気が付いていませんでした(爆)。ただ何となく「新緑の季節ですよね~」ということで自然に浮かんだネーミングだったのです。
それはともかく、4人でのジョイントコンサートを自主開催するのは初めてでした。主幹のM先生の力強いバックアップがあればこその企画でしたが、個性の異なる4人がそれぞれの持ち味を生かしつつ調和するコンサートにするためには、プログラミングに工夫が必要です。特に今回は、ピアニストのUさんにとっては長年のブランクからの復帰コンサートでもあったので、お客様に楽しんで頂くという大切な目的と併せて、M先生が曲目や演奏順などを吟味して下さいました。
コンサートはUさんの「トロイメライ」から始まりました。いつもながらUさんのトロイメライは絶品です。楽屋で聴いていると泣けてきました。続けて私の大好きなバッハの「イタリア協奏曲」の2楽章、3楽章。ややもするとだらだらになりやすい2楽章が胸に響いてきました。3楽章はスリリングなほどのアップテンポで、まるでカーレースを見ているようでしたが、まさに「血沸き肉躍る」という感じ。
Uさんのソロが無事終わり、フ~~と息が抜けていきました(まだ自分の演奏は始まっていないのに(笑))。続いてメゾソプラノのIさんが登場して、城ヶ島の雨、六騎、風の子供、たあんきぽーんき、4曲の日本歌曲が披露されました。Iさんはスローな曲も軽やかな曲も自在にこなします。よく練れた、素敵な歌声でした。
次が私の出番だったのですが、舞台に出たとたん、あれ、最初の曲何だっけ??とアタマの中がまっしろに。伴奏のM先生を見つめると、出だしのきっかけだと思われて前奏が鳴り出しました。ピアノの最初の音を聴いたとたん「あ、「お菓子と娘」だった!」と思い出した私は、何と前奏をすっとばしていきなり歌い出してしまいました(爆)。朝ドラばりの「やってまった!」なのですが、そこはお互い剛の者(?)、何事もなかったかのようにそのままどんどん先に進み、無事1曲終了。曲をご存じのお客様には当然バレていたでしょうが、こういう編曲だと思って頂くことにしよう、と心の中で呟きながら(笑)十八番の「からたちの花」へ進み、次は鬼門の「たんぽぽ」です。この曲は、どうしても「た」がうまく出なくて音程が狂うのが常だったのです。「あ」が短すぎるのよ、と指摘されるのですが、それを意識すると「たあんぽぽ」みたいになっちゃうし、何度やってもうまくいかなくてトラウマになっていました。あんまり考え過ぎると曲のイメージが無くなってしまうので、えーい、ままよと腹を括って歌ったら、音程は何とか決まりましたが、「たんぽぽ」の部分の声が出過ぎて、何だかオニユリみたいになっちゃいました(笑)。そして最後に「夢みたものは」。今の自分の心境に一番ぴったりな曲です。幸せは足もとにある、というメッセージに感謝と祈りをこめて歌いました。
前半の最後は二重唱です。さくらさくら、緑のそよ風、荒城の月、花、と春の歌を4曲メドレーで歌いました。歌っていてとても楽しかったです。やっぱり日本語の歌はいいですねえ。
休憩をはさんで後半。二重唱からスタートです。今度はドイツもので、モーツァルトの「春への憧れ」とシューマンの「田舎の歌」の2曲ですが、シューマンの方は昔アルトを歌ったことがあるため、アルトパートがしみついていて、ソプラノ先行の時につい待ってしまったり、アルトに無い歌詞が出てくるところがなかなか覚えられなかったり、練習ではいろいろ大変でした。本番は、やっぱり歌詞が飛んでしまったところがありましたが、何とか破綻せずに歌えて一安心。
次はIさんのソロで、ドイツ歌曲、ロシア歌曲(ドイツ語)、スペイン歌曲と彼女の真骨頂を遺憾なく発揮した曲目です。最後の曲の後にはブラボーが出ました。続いてUさんとM先生の連弾、「汽車は走るよ」という中田喜直の楽しい連弾曲(M先生はかつて、中田喜直先生とこの曲を連弾されたとか)と、ご存知「ハンガリー舞曲第5番」の2曲で盛り上がったところで、ラストステージは私のソロ。シューマン、ブラームス、シュトラウスとドイツ歌曲オンリーでまとめました。大好きな曲ばかりです。思い入れが強すぎると体が揺れて発声が崩れ、かえって表現をこわしてしまうので、なるべくセーブしたつもりですが、やっぱり体が動いてしまいました。まだまだ修行が足りません(-_-;)でも、ブラボーおじさんが親切にブラボーと叫んで下さいました(笑)。
アンコールとして最後に4人で「アメイジング・グレイス」を演奏して、約2時間のコンサートはつつがなく終わりました。終演後、ダッシュでロビーに向かい、お客様にご挨拶。たくさんの友人知人が声をかけてくれました。思いがけない顔もあり、皆さんとても楽しんで下さったようで、こういう触れあいの時間が本当に嬉しいですね。
終演後は、IさんとUさんはそれぞれ遠方から駆け付けられたご親族とお食事に。私はM先生と、今回もスタッフをやってくれたアシスタントのSさんの3人で回転寿司で打ち上げをしました(笑)。M先生は今回も、最初のUさんのソロ以外は出ずっぱりでした。その上「明日は福岡で本番」と仰るではありませんか。まったく、あのエネルギーはどこから来るんでしょうね?いずれにしても、企画から本番まで、M先生のお支え無しにはあり得ないコンサートでした。今日からまた、コツコツ精進していきたいと思います。
5月12日には熊本県立劇場コンサートホールでM先生のピアノリサイタルがあります。お時間がおありでしたら、どうぞご来聴下さい。いろんな意味で型破りのコンサートになると思います(笑)。