春の南阿蘇

2018年03月29日 | 日記
「早春の南阿蘇」というタイトルにしようと思っていたのですが、20℃を越える暖かさでしたから、春たけなわというべきでしょうね。
3月27日、南阿蘇のカフェ・ティッペルさんにお邪魔してミニ・コンサートを開催しました。昨年に続き2度目です。今回はメゾソプラノのIさんは外遊中(笑)で、M先生と、M先生のお嬢さんのRさん、それに私の3人組でした。
今回はM先生のお知り合いのKさんの別荘に泊めて頂けることになっていたので、コンサート前日に父の運転で一路南阿蘇へ。余談ですが、うちの父は南阿蘇が大好きで、つい先日の日曜日にも、春休み中の孫たちを従えて南阿蘇までドライブ兼花見に行ったばかりでした。
行きがけにUさんのお宅に寄ってキーボードとギターを積み込み、いざ出発。夕方早めに着いたので、Kさんが近くの温泉に案内して下さり、その後はKさんの奥様の手料理をご馳走になり、ご夫妻とお喋りをしながら、木造りの素敵なお宅でゆっくりくつろがせて頂きました。一方、M先生とRさんは、今回は東京から大分へ、そしてレンタカーでKさんの別荘へおいでになることになっていました。ところが、Rさんが乗るはずの飛行機が欠航となり、次の便に切り替えて来られることに。予定が大幅にずれたRさんとM先生は、夜の山道を3時間も車を走らせ、夜11時ごろやっと到着されました。お疲れさま!(M先生曰く、「ソファに横になって2秒で前後不覚に眠り込んで、目が覚めたら朝だったわ」(爆))
そんなアクシデントもありながらのコンサート当日。午前中いっぱい、3人で合わせの練習をしました。M先生とは毎月お会いできるので、打ち合わせや練習もできましたが、Rさんのギターと合わせるのはこの時が初めてです。でも、何も心配なく歌えました。アンサンブルに天性の感覚をお持ちのようで、細かい所の確認だけで十分でした。
昼食後、いざ鎌倉。平日の昼間のミニ・コンサートにベストマッチの、のどかでうららかな日和でした。前回よりは若干少なめですが、お客様もぼちぼちご来場。驚いたことに、ここ数年レッスンをお休みしていらっしゃる県北の元生徒さんが突然現れました。まったく思いがけないご来聴でした。「ブログを読んでますから」と仰って下さって、感謝感激。
小さなカフェの空間がほどよく埋まり、定刻2時に開演。初めに「グリーン・スリーブス」、「埴生の宿」、「庭の千草」などのイギリス民謡を歌いました。古雅な調べが素朴なギターの音色とよく合います。次にRさんとM先生の演奏を挟んで、「野ばら」、「ローレライ」、「ムシデン」などドイツの民謡。またRさん&M先生コンビで、ゴスペル等。最後にブラームスの素朴な歌曲とイタリア歌曲、そして皆さんとご一緒に「早春賦」と「ふるさと」を歌って、1時間余りのコンサートは無事終了しました。
演奏の出来は定かではありませんが、雄大な山懐の瀟洒なカフェで、美味しいコーヒーと自家製本格バウムクーヘンと美しい音楽を味わう、こんな「プチ非日常」は、命の洗濯には最適ですね。私は演奏する側ですから、そう手放しに非日常を謳歌する立場ではないのですが、それでも、熊本市内から車で1時間もかからずに、これほど雄大な自然の懐に飛び込むことができる、という環境がどれぼど恵まれたものか、今回はしみじみと感じました。自然は時に暴威をふるいます。まだその傷跡が生々しく残る阿蘇ですが、それでもやはり、自然は私たちがいずれ還る魂のふるさとですから、自然に抱かれることは、魂の里帰りのようなものですね。帰りがけ、「ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらん」という紀友則の和歌と、「ねがはくは花のもとにて春死なむ その如月の望月のころ」という西行の和歌がふと想起されました。雪道で斃れ、早春に逝かれた、山がお好きだった礒山先生の面影が心を去らないからでしょうか。

第2回AT講習会

2018年03月20日 | 日記
昨日は、カリオペくまもと主催の第2回目のアレクサンダー・テクニーク講習会でした。先週金曜日から熊本入りされた講師のS先生は、うちの生徒さんたちのために金曜夜に少人数のレッスンをして下さり、土曜日のクラスにもうちの生徒さんたちが何人か参加させて頂きました。そして昨日は、午前中に県南で10人のグループレッスン、わずか15分の昼食休憩をはさんで引き続き午後9人のグループレッスン、終わってすぐ熊本市内に移動して、夕方からまた11名のグループレッスン。相当にタイトかつハードなスケジュールを精力的にこなして下さいました。
グループレッスンも、2桁の人数になると2時間の枠では収まりきれず、時間が超過しました。やはり1グループ7名ぐらいまでが理想ですね。それでも、皆さんとても熱心に参加され、喜ばれました。私も昨日は先生に同伴して3コマのレッスンを見学させて頂いた余得で、今日は体が軽いです。
毎回思いますが、これは世にも不思議なワークです。「足は床に乗っています」、「座骨は椅子に乗っています」、「頭は背骨に乗っています」、「鎖骨と肩甲骨も腕の一部で、それは肋骨に乗っています」、「背骨は尾骨から頚椎の一番上まで全部で24個あります」、「だから胴体は長いです」、「首は耳の高さまであります」というガイドを一日中何度も聞かされ、膝と股関節を伸ばして立ち、膝と股関節を折って腰かける、その「立ったり座ったり」を人がやるのを延々と見ている、それだけで自分の体が微妙に変化してくるのです。意識の力って本当に大きいのですね。体を正しくマッピングすることと、その認識をはっきりと意識化するだけなのですが、それで動きが変わるのです。
面白かったのは、ワークの後、「どうですか?」という先生の問いかけに、皆さんが異口同音に「体が軽いです」と答え、それに対して「それじゃ、体重計に乗ってみますか?」と先生が混ぜっかえされることでした(笑)。物体を「重い」と感じるのは、その物体を保持するために力を使っている時ですから、体が軽い、ということは、今まで体を保持するために力を入れていた、ということなわけです。つまり、必要最小限の力で体を保持することができれば、余った力をもっと有効に活用できる、ということですよね。発声には相当なエネルギーが要りますから、これはとっても有難いことです。ムダな力を入れさえしなければ、誰もが本来持っている潜在力を自在に発揮できる。いろんな技術を身に付けることもラクにできる。未来が明るくなる、希望あるメッセージではありませんか。
先ほどストレッチに行って来たのですが、前回の講習会の翌日と全く同じことをスタッフさんに言われました。「今日は全然体が違いますね。柔らかいです」と。
この調子でいくと、受講希望者は増える一方かも。次回はもう少し小人数で、枠をたくさん作って、また多くの方にこの不思議ワークを体験して頂きたいです。


春の発声セミナー

2018年03月18日 | 日記
彼岸の入りの今日、春の発声セミナーを開催しました。
今日はオハイエくまもとや、その他音楽関係のイヴェントが重なり、いつものメンバーが参加できなかったのですが、その代わり(?)ニューフェイスの方々がたくさん参加して下さいました。合唱をしている方も多く、2部の合唱はとても良く声が出ていました。もうすぐ大学進学で上京する男の子も、挨拶かたがた参加してくれました。彼はお母様の伴奏でクリスマス会で歌ってくれたこともあり、高校ではグリークラブで歌っていて、進学後も合唱を続けるようです。こういう歌好きの若者がいてくれて、とても嬉しいです。最近の学校では、ブラスバンドに押されてコーラスが下火になっていますからね。
セミナーの内容はいつも通り、第1部では呼吸、発声、共鳴の「レクチャー&エクササイズ」を行い、それを踏まえて第2部で合唱をしました。曲はモーツァルトの「Ave verum corpus」です。ラテン語ぼ歌詞は読み方が難しくなく、しかも発音の練習が発声の復習につながるので、素材としては使いやすい言語です。
ここ最近改めて感じていることですが、発声の基本中の基本は「呼気」ですね。呼気のスピードは速ければ速いほど良い。つまり、呼気圧が強いことがとても大事なのです。そして、その呼気圧の源泉は下半身の瞬発的な筋力です。W先生はよく「足の親指に力を入れて!」、「骨盤底筋を上げて!」と仰っていましたし、M先生も内転筋や中臀筋の使い方を教えて下さいましたが、それは「息を強く、速く、高く」飛ばすために必要な力なのです。W先生が以前学会発表された時の資料に「呼気流の方向と強さ」というようなタイトルがついていたように記憶していますが、当時は「呼気流」という言葉の意味もよくわからず、ただ言われるままにトランペットのマウスピースを吹いたり、胸を軽く張って、呼気を頭上高くにと意識しながら歯擦音を長く引っ張ったりしていました。今はその意味がよくわかります。私は歌うと声が嗄れることが悩みでしたが、「喉に息がまとわりつくと声が嗄れるのよ」と言われて納得。喉(声帯)を通り抜けた瞬間に頭上に抜けるぐらいに呼気のスピードが速ければ、呼気は目と鼻の裏側にある蝶形骨洞に瞬時にたどり着き、喉にはほとんど負担がかからず、共鳴もよくなるのです。私はとても筋肉が弱かったので、呼気のスピードが遅くて上に抜けきれず、声帯を通り抜けた後も声帯にまとわりついていたために声が嗄れやすかったのです。これは今も同じで、以前に比べれば多少はましになりましたが、まだまだ息の抜けが十分ではないので、やはり声は嗄れやすいです。声帯が薄いせいもありますが。
うちの生徒さんたちを見ていると、キャリアや年齢、性別には関係なく、呼気が速い人と遅い人に分かれます。そして、呼気が遅い人は概して歌うときのテンポが遅くなりがち、音程が下がりがち、フレーズの最後まで息がもなたい、声がひっくり返りやすい、といった傾向があります。呼気が蝶形骨まで届きにくいので、共鳴不足を補おうとして必要以上に大声になる場合もあります。そういえば、W先生の初めてのレッスンは、ほとんど息の吐き方の練習だけでした(余談ですが、その1回のレッスンで、ずっとアルトを歌っていた私がハイソプラノに生まれ変わってしまいました)。それがどれほど重要で、正しいアプローチだったか、今はよくわかります。
初心に戻って、生徒さんたちのレッスンでも、息の吐き方の練習を今一度徹底しなければ、と思います。


ご案内

2018年03月09日 | 日記
スキャナーの調子が悪く、画像が添付できないのですが、コンサート案内を。
少し先の話ですが、5月4日(金・祝)午後2時から、熊本市黒髪の男女共同参画センターはあもにいメインホールにて「緑のそよ風コンサート」。M先生が主幹で、ピアノのUさん、メゾソプラノのIさんと4人のジョイントです。
5/12(土)午後1時30分から、熊本県立劇場コンサートホールにて「蓑毛富子ピアノリサイタル」。熊大附属中学校コーラス部も友情出演します。
9/24(月・祝)には、同じく県立劇場コンサートホールで「メサイア」の公演。世界的ソリストたちによるスペシャル・カルテットが伴奏して下さいます。こちらは詳細はこれから詰めますが、3年越しの計画がいよいよ実現します。
5月の2つのコンサートは、チラシとチケットが完成しました。大谷楽器、西野楽器店、熊日プレイガイドでもチケットを取り扱っています。5/12の分は県立劇場でも買えます。
多くの皆様のご来聴を心からお待ちしています。特に県立劇場は、収容人数1800人余の大ホール。一人でも多くの方にお運び頂きたいです。それだけの価値が十二分にあるコンサートです。
コンサートの準備や、間近に迫った発声セミナーの準備、アレクサンダー・テクニークの講習会のお世話などに忙しくしていると、少し心が落ち着いてきます。不思議なもので、何か役割があって、そのために喜んで時間や心身を使っている時には、寂しさや虚しさを忘れることができますね。自分のなすべきことがある、というのは有難いことだとつくづく思います。大学の春休みも半分以上過ぎました。新年度の授業の準備にもそろそろ取り掛からなくては。
それにしても、今年は花粉の飛散がすごいですね。私は花粉症ではありませんが、咳やくしゃみや目のかゆみなど、花粉が原因だろうと思われる症状が出ています。調子を崩している生徒さんも多いです。皆様もどうぞお気をつけ下さい。外出時にはマスクを着用なさいますよう。

思い出すこと

2018年03月05日 | 日記
今日は朝から合唱団の練習日でした。バッハの「マタイ受難曲」の中の有名なコラール「血と傷にまみれた御頭」の練習をしながら、大学3年生の時、礒山先生の「マタイ受難曲」の講義に深い感銘を受けたことをありありと思い出しました。練習の中で、ご著書『マタイ受難曲』から引いた歌詞対訳を読み上げながら、胸に迫る思いを抑えきれませんでした。今日は先生のお通夜なのです。
今日はまた、句会の投句締切日でした。本音を言えば、まだ俳句を作るような気にはなれないのですが、私はお通夜にも葬儀にも行けないので、先生のご霊前に捧げるつもりで言葉を絞り出しました。

はふりの日彼方(あなた)の山の春霞
あらみたま安かれと降る春の雨
たまきはるいのちただよふ春の夜半
遠き日の冬のかたみやバッハの碑

先生のブログには、その多岐に亘る精力的なお仕事ぶり、超多忙な日々の様子、人との交わりを大切になさる姿勢、旺盛な読書欲、スポーツや政治、社会に対する関心等々が綴られ、そこには、ご自分の志を誠実に積極的に果たしながら、一方でこの世の楽しみも十二分に満喫される、非常に充実した見事な人生が透けて見え、私も頑張ろう、といつも前向きな気持ちになれました。わけても、研究や仕事に対する真摯で挑戦的な姿勢には、本当に敬服の他ありませんでした。ただただ毎日をこなすのに精いっぱいの私に、仕事に取り組む姿勢のお手本を示して下さっているように思えました。そう思うだけで少しも向上のなかった自分。先生が私に遺して下さったのは、それでいいのか?という問いかけだったのかもしれません。