最近入門された男性の生徒さんのレッスンで、今日、ちょっとした実験をしてみました。小学唱歌の「富士山」を、4小節をワンフレーズで(=ノンブレスで)歌って頂いたのです。「あーたまをくもの」で切らず、そのまま「うーえにだーし」まで一息で。「しほうのやーまを」で切らず、そのまま「みーおろーしーて」まで一息で。この調子で「かーみなりさーまーをしたにきく」、「ふーじはにっぽんいちのやま」と最後まで歌って頂きました。その時、胸は軽く張ったままで。息が足りなくなると前かがみになって息を絞り出そうとしがちですが、そうすると呼気筋(内肋間筋)優位になるのでますます息が足りなくなります。ですから、決して胸をすぼめないようにします。
Kさんとおっしゃるこの男性は、標準かそれ以上のしっかりした体格ですが、筋力(特にインナーマッスルの筋力)は必ずしも体格に伴っているとは限りません。Kさんは、歌ではなく話し方のトレーニングの一環として最近ヴォイトレを始められた方です。まだ初心者なので、この練習は結構大変だったらしく、最初はフレーズの後半で身をよじりたいのを必死にこらえているという歌い方になっていました。体がぐらぐら揺れそうになるのです。もともと下腹が少し突き出たような姿勢なので、下腹を軽く引いて体をまっすぐにして頂いた上で、鏡を見ながらもう一度トライしてもらいました。「鏡を見て、最後まで胸を軽く張ったままの姿勢を保って歌って下さい」と言いました。すると腰回りにすごい抵抗がかかるようです。「これが歌うための筋力なんですよ」と言うと、納得の面持ち。相当お疲れになったようです。
この練習は、その前に充分に全身の筋肉を伸ばして柔軟性を回復し、且つ下あごの力を抜き、喉頭蓋を開け、声楽発声のためのフォームを充分に整えてからやらないと、腰回りの筋力不足を代償しようとして下あごや上半身に力が入って逆効果になります。Kさんもレッスンの前半でしっかりと体をほぐしてから、最後の仕上げにこの練習をしたのでよくわかったのだと思います。使っているのは外側の筋肉ではなく、インナーマッスルです。Kさんは「なんか、体の内側が熱くなってきました」と言いながら帰って行かれました。
胸を軽く張った姿勢を保つには全身の筋力が必要です。その姿勢で歌い続けるには、さらにインナーマッスルの筋力が必要です。横隔膜や、横隔膜と拮抗する補助呼気筋群、骨盤低筋など、腰回りの筋肉の動きを自分でコントロールできるようになるには、正しいトレーニングの積み重ねが必要です。発声に必要な筋力は声を出しながらでないと鍛えられない。これは声楽発声のポイントとも言えるかもしれません。発声時に反射的に体が正しく反応するようになれば、体が楽器になったと言えるでしょう。ヴォイストレーナーの仕事は、体という楽器を作ることなのです。声帯は楽器全体の一部に過ぎません。どんな声も磨けば光ります。磨くというのはつまり、共鳴の良い楽器を作ることなのですね。
Kさんとおっしゃるこの男性は、標準かそれ以上のしっかりした体格ですが、筋力(特にインナーマッスルの筋力)は必ずしも体格に伴っているとは限りません。Kさんは、歌ではなく話し方のトレーニングの一環として最近ヴォイトレを始められた方です。まだ初心者なので、この練習は結構大変だったらしく、最初はフレーズの後半で身をよじりたいのを必死にこらえているという歌い方になっていました。体がぐらぐら揺れそうになるのです。もともと下腹が少し突き出たような姿勢なので、下腹を軽く引いて体をまっすぐにして頂いた上で、鏡を見ながらもう一度トライしてもらいました。「鏡を見て、最後まで胸を軽く張ったままの姿勢を保って歌って下さい」と言いました。すると腰回りにすごい抵抗がかかるようです。「これが歌うための筋力なんですよ」と言うと、納得の面持ち。相当お疲れになったようです。
この練習は、その前に充分に全身の筋肉を伸ばして柔軟性を回復し、且つ下あごの力を抜き、喉頭蓋を開け、声楽発声のためのフォームを充分に整えてからやらないと、腰回りの筋力不足を代償しようとして下あごや上半身に力が入って逆効果になります。Kさんもレッスンの前半でしっかりと体をほぐしてから、最後の仕上げにこの練習をしたのでよくわかったのだと思います。使っているのは外側の筋肉ではなく、インナーマッスルです。Kさんは「なんか、体の内側が熱くなってきました」と言いながら帰って行かれました。
胸を軽く張った姿勢を保つには全身の筋力が必要です。その姿勢で歌い続けるには、さらにインナーマッスルの筋力が必要です。横隔膜や、横隔膜と拮抗する補助呼気筋群、骨盤低筋など、腰回りの筋肉の動きを自分でコントロールできるようになるには、正しいトレーニングの積み重ねが必要です。発声に必要な筋力は声を出しながらでないと鍛えられない。これは声楽発声のポイントとも言えるかもしれません。発声時に反射的に体が正しく反応するようになれば、体が楽器になったと言えるでしょう。ヴォイストレーナーの仕事は、体という楽器を作ることなのです。声帯は楽器全体の一部に過ぎません。どんな声も磨けば光ります。磨くというのはつまり、共鳴の良い楽器を作ることなのですね。