YS Journal アメリカからの雑感

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オバマ大統領の信仰する宗教は?

2010-08-20 01:57:31 | アメリカ政治
と聞かれて、なんとアメリカ人の18%がイスラム教と答えた。その上、43%の人がどの宗教を信仰しているのか分からないとしている。

一年前にオバマ大統領がイスラムと思っている人が10%しかいなかった事を考えると、フルネームが Barack Hussein Obama (バラク・フセイン・オバマ)で、ミドルネームがフセインなのとオバマ大統領の言動が、アメリカ人にとって普通のクリスチャンっぽくないと感じている連鎖的な決めつけと思われる。

ホワイトハウスも躍起になってクリスチャンで有る事を強調するのも変なのだが、オバマ大統領はクリスチャンである。但し、ミッシェルと伴に20年所属していたシカゴの教会(Trinity United Church of Christ)の黒人牧師(Jeremiah Wright)は、戦争、テロ、そして特に黒人関係の人種問題で、トンでもない発言をすることで有名であった。オバマは大統領選挙中に悪影響を恐れてこの牧師と決別して以来、教会に礼拝に行く事をしていない。クリントンやブッシュが日曜礼拝にホワイトハウスから行っていた映像が頻繁で放映されていたのとは対照的である。オバマ本人もワシントンに引っ越したら礼拝に行く教会を決めるとコメントしていたが、今のところウヤムヤになっている。

アメリカ人の18%(+43%)がトンでもない無知と考える事も強ち飛躍ではないのであるが、オバマが公式にクリスチャンと表明している事を知っているのに、イスラム教もしくは分からないと答えるのは、オバマを嘘つきと思っているのだろう。そんな訳で、オバマ大統領の支持率も、彼をイスラムと考えている人々の間で一番低くなっている。(信仰不明、クリスチャンの順に上がって行く)

では、オバマは自己申告通り本当にクリスチャンなのであろうか?

アメリカのリベラルは、なんちゃってクリスチャンになっているので、真剣に論ずる事自体がアホらしくもあるのだが、オバマのケースは特殊である。

オバマが20年通ったシカゴの教会(Trinity United Church of Christ)は、バチカンが異端と考えているLiberation Theology(救済神学と訳す様だが、日本語では英語版の様な適切な解説が無い)を更に黒人専用に特化したBlack Liberation Theologyの総本山的存在である。

では、Liberation Theology(救済神学)とは何ぞやという事になるが、簡単に言うと支配階級と非支配階級がいるので、非支配階級を救済してやらねばならぬ、という神学である。1950年代に、キリスト教信仰が厚い南米で、社会主義やマルキシズムといった理念では訴求力が無いので、神やキリストを持ち出し社会正義の実現のための理論として生まれ、実践されてきた。しかし、1980年代にローマ法王が、キリスト教本来の教えから乖離しており、マルキシズムの階級闘争に教会が加担する事になるという理由で、批判している。

オバマは、ある大学の卒業式で ”My individual salvation is not going to come about without a collective salvation for the country. ”と述べているのだが、意識的がどうかは別として、オバマは Social Justice (社会正義)という意味で "Collective Salvation" という表現を用いている。その前に ”My individual salvation" とあるので、間違いなくキリスト教の定義として "Salvation" を使っている。 "Collective Salvation" という考え方が、ローマ法王によって悪魔的だと断定されている事を考えると、オバマはキリスト教徒しては非常に異端な考えを、大統領として堂々と布教してる事になる。(前にも書いた映画「オーメン」が現実に起こっている様な感覚になる。)

最初にこのニュースを聞いた時は笑い話程度に考えてが、Glenn Beck のラジオを聞いたり、泥縄式で追っかけてみると、オバマが大統領就任以来やってきた事が、特にアメリカ国内の案件については Liberation Theology からブレていない事が分かる。さすがに大統領なので、Black だけを救済する Black Liberation Theology という訳にいかないが、所々で逆人種差別的なコメントが飛び出すのは、押さえ切れないものがあるのだろう。一貫性が無い様に見えたりする事もあるが、こんな危険な信念をカモフラージュしなければならないので、どうしてもチグハグになると考えると納得が出来る。

結論から言うと、オバマは異端のクリスチャンである。イスラムであると言う18%は短絡的過ぎて論外であるが、どのような信仰か分からないという43%は、普通のキリスト教の人々とは解釈や感覚が違うので、その違和感を表した数字と考えて良いだろう。


内容が重くなったので、おおらかなキリスト教的宗教観がある名曲をおひとつ。



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2 コメント

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全然別な反応ですが (ドイツ特派員)
2010-08-21 14:15:06
やっぱりJeffとRodのこの曲は良いですねえ。やっぱ天才だは、この二人。Jeffが、「僕がインストをやってるのは、Rod以上のヴォーカルを知らないからだ」と言っていますが、その感想は良く分かります。

宗教の問題を真に理解するのは私には難しいですね。「分からない」というのが本音です。ただ、もし異端である、ということがある程度共通認識で出てくるとかなりの議論になるのではないでしょうか?宗教の場合、「異教」以上に「異端」への攻撃性は高くなります。「異教」は、あくまで「正しい宗教を知らないから」という部分を含むのですが、「異端」は、「その宗教を知っていながら正しく理解していない」という救いがたい印象が持たれる傾向が強いです。歴史を見ても異教制圧より異端審問の方が苛烈を極めています。

何がこれから予想されるのでしょうか?
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宗教 (ysjournal)
2010-08-21 23:28:08
ドイツ特派員さん
この宗教問題(?)がどの位インパクトがあるのか、よく分かりません。感覚的には、アメリカはキリスト教である限りは、問題になる事は無いと思います。よって、オバマがイスラムという風評に敏感になっているのだと思います。

今後はについては、キリスト教理念の復活が起こる様な気がしています。政治的にはリベラル(プログレッシブ)の衰退を予想してます。

但し、豊かさがますと、宗教(メインの)と政治に力が無くなる(人々が無関心になる)ので、行ったり来たりでしょうな。

リベラル的な理想は麻疹みたいなものですが(私も患ったことがあります)、プロの活動家達は政治システムを改悪、悪用して寄生虫の様に生きる術を確立しました。挙げ句の果てに寄生虫である事を忘れて、本体を食いつぶそうとしています。

そう言う意味で、もしアメリカの保守がメインになったら寄生虫の撃退もしくは一定以上に大きくならない様なシステムを構築する方向にいくと思います。(多分に希望的観測ですが)

1つ確実だと言えそうなのは、社会正義が欺瞞である事が一般的に理解されると思います。
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