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ObamaCare: 連邦最高裁判決は6月末

2012-04-01 10:13:17 | アメリカ政治
先週3日間に渡って、最高裁判所で審理された ObamaCare が結審し、6月末に判決が言い渡される。

論点は3つ。

1)健康保険購入が義務付けられた場合、違反した時の罰金は税金であるか

オバマ政権と民主党は、ObamaCare が憲法違反である事を意識していた。未加入の罰金を税金と規定出来れば、連邦議会にのみ与えられた徴税権の概念で ObamaCare は憲法問題ではなくという屁理屈を法案成立後に宣伝した時期があった。

法案自体に税金の記述がなく、法案の意図としても税金という考え方は示されていないという結論となり、審議が続けられる事となった。

この論点は意外と重要で、もし、税金だという事になれば、Social Security, Medicare と同じ事になり、憲法違反ではなくなる。(Social Security, Medicare も、原理的に憲法違反であると思われるが)また、現時点では法が完全施行(購入義務付けは2014年)されていないので、税金と規定した場合、まだ誰も被害(税金支払い)を被っていないので、被害無し(予定被害)の提訴は出来ない。

2)政府は国民に健康保険購入を義務付けられるか

被告側は、健康保険は特殊なサービスで、国民ぼぼ全てが生涯で必ず医療サービスを受ける事になると主張したが、誰もが死ぬからと言って葬儀の義務付けや規制を政府が出来ないと、裁判官の一人に反論されていた。

別の判事も、この法律は、政府と国民の関係を根本的に変えるとコメントしていた。

3)ObamaCare が違憲となった場合、全ての法律が無効となるか (含む Medicaid )

健康保険購入の義務付けだけではなく、例えば26歳まで親の保険に入っていられるとか、避妊薬のカバーとか、細かい規定があるのだが、これらは、果たしてそのまま施行されるのか、が審理された。

判事の一人は、2,700 ページもの法律を全て最高裁判所が判断すること自体が、裁判所の権限、役目を超えているとコメント。

ObamaCare の成立過程で、憲法問題とその他の項目を分ける事も出来たのだが、上院の成立案を下院で可決して成立という特殊な過程だったので、結局、オバマ政権、民主党は、上院案での不完全な所が修正出来ず、ヘンテコリンなままで法律となってしまった。

よって、ObamaCare が違憲となった場合、法律自体も無効となりそうだ。

ObamaCare は、低所得者向けの政府医療サービス (Medicaid) の改革も含んでいたが、これも反故になりそうだ。Medicaid 自体は州が国の補助を受けて運営しているのだが、この件のやり取りで、一番新しい判事である Elena Kagan が原告に対し、政府からもっと多くの補助金が出るのに何が不服なのかと、リベラル丸出しのお間抜けなコメントを出していた。さすがオバマ直々に選んだ人物だけの事はある。

審理中の判事の質問やコメントで判決の行方を判断するのは危険であるが、素人の私でも被告(オバマ政権)の分は悪いと感じた。

民主党からも、違憲判決が出た方が、オバマ再選の可能性が高まるといったヘンテコリンな悲壮感の漂う楽観的見通し、が出てきたしているので、ヤバいと感じる人が多いのだろう。

まあ、後は判決を待つだけだ。


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