YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

Juan Williams

2010-10-22 07:15:15 | アメリカ政治
Political Correctness (ポリティカル・コレクトネス)の話題が出る度に、黒柳徹子が「ハゲ」の事を「髪の毛が不自由な人」とやらかした事を思い出す。

アメリカのおける Political Correctness は明らかに行き過ぎで、逆差別が起こる様な社会を反映して過剰になっている。特に差別問題に過敏であるリベラルは、テレビ発言などでちょっとした問題発言があると異常なまでに反応する。個人的には、 Political Correctness を気にする人が一番差別意識が強いと思っている。(逆に一般的に差別用語と思われる言葉を何の気兼ね使う人は、差別意識が本当に強い人と、全くない人がいると思う)

昨日、NPRNPR のホームページ) が所属のニュースアナリスト Juan Williams との契約を途中で打ち切った。(打ち切り後の Juan Williams 本人のインタビュー)理由は、FOX NEWS に出演した際、「個人的な感情として、飛行機に乗る際にイスラム風の服装の人が同乗すると、気になる」のコメントが不適当という事である。

Juan Williams はリベラルである。黒人でパナマからの移民でリベラルという、リベラルにとっては理想のリベラルである。但し、ほとんどのリベラルと違って考える頭がある。以前、保守の代表的な政治コラムニストとして Charles Krauthammer を紹介したが、彼がパネリストとしてレギュラー出演する FOX NEWS のニュース番組で、Juan Williams はリベラル側の代表として頻繁に出演している。個人的には彼の意見に同意する事はほとんど無いのだが、論理がしっかりしており、紳士的でユーモアがあるので、いつも好印象をもっていた。(こちらは、今朝の ABC News のインタビューであるが、観てもらえば好印象を持つ理由が理解してもらえると思う)

NPR (National Public Radio) は政府の補助金(最近は寄付の割合が多い)で運営されているラジオ局である。南部の田舎でドライブするとニュースラジオは NPR だけにしか聞けなかったりするので地元の人にとっては貴重なラジオ局であろう。アメリカの放送局としては国際ニュースが充実しており、一時熱心に聞いていた事がある。但し、国内問題ではリバラル色が強い事もあり、段々と聞かなくなっていた。補助金が入った放送局の存在に疑問の声がずっと上がっている上に、最近では政治的にニュートラルで無くなってきているので、批判が強まっていた。

NPR は、Official Statement で、契約打ち切りの理由を説明しているが、興味深いのは、"Williams' presence on the largely conservative and often contentious prime-time talk shows of Fox News has long been a sore point with NPR News executives." の部分である。つまり、Juan Williams が FOX NEWS に出演している事が気にくわなかったと言っているのである。(この発表を書いた人は妙な所で本音が出て正直であるが、馬鹿であろう。これこそ政治的に不適当なコメントである)

FOX NEWS は唯一と言ってよい保守系の報道機関である故に、オバマ政権を筆頭にリベラルは毛嫌いしている。ホワイトハウスの品のなさで書いた事がある様に、一時期、 FOX NEWS をホワイトハウスから排除しようとした事がある。NPR が計らずも公式に FOX NEWS への不快感を示した事で、NPR への補助金が問題になるであろう。(今日、共和党の上院議員が補助金打ち切りを提案すると発表している)

リベラルは、リベラルが保守系と仲良くする事さえ我慢出来ないらしい。

表現の自由を根拠に、Juan Williams の契約打ち切りに抗議しているのは、何と保守系の放送関係者ばかりである。黒人の人道活動家、ヒスパニックの国会議員、リベラルのコラムニスト、未だに誰一人彼の擁護に立ち上がっていない。

話がややこしくなったが、NPR が Juan Williams の契約を打ち切ったという出来事は、Political Correctness の行き過ぎとリベラルの許容度の無さ、偽善を象徴している。