映画とライフデザイン

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映画「おはん」 吉永小百合&大原麗子

2023-11-08 08:55:58 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「おはん」を名画座で観てきました。


映画「おはん」は1984年(昭和59年)の東宝映画、宇野千代の原作を市川崑監督で映画化する。吉永小百合が主演のおはんを演じる。この年の日本アカデミー賞で数々の賞を受賞し、キネマ旬報ベスト10で6位で吉永小百合が最優秀女優賞を受賞している。吉永小百合はこの頃から文芸作品での主演が増えてきた。でも、この当時吉永小百合の映画にはまったく関心がなかった。昭和の頃は,よく宇野千代が雑誌に載っていたなと思い出す。あまり関心がなかった。

古物商を営む幸吉(石坂浩二)は色街の芸者おかよ(大原麗子)のもとで一緒に住むことになり、妻のおはん(吉永小百合)と別れる。それから7年経った時、幸吉は町でおはんとバッタリ会う。おはんに息子がいることを知り、一度店に寄るように言いその場は離れる。来るとは思っていなかった幸吉は店頭でおはんを見つけて、隣のおばはん(ミヤコ蝶々)の部屋に行って情交を交わす。それ以降、おかよの目を盗んでこっそりと逢引きをするようになる。


2人の人気女優の演技合戦が見ものの映画だ。
浮気相手のもとに行ってしまった元夫と逢引きを繰り返して、再度自分の息子と一緒に3人で住もうと望む女が吉永小百合だ。まさか元妻と浮気をしているようには思えず、家を改築して2人で夫婦生活をもっと楽しもうとする活発な女性が芸者の大原麗子だ。その間に入った石坂浩二はモテると言えばモテる男だけど、どちらにもいい顔をしている情けないダメ男だ。森繁久彌はこんな男を演じるのが得意だった。

現代でも、妻とは別れると言いつつ、一切別の女の存在を自分の妻には言わずに浮気している男は確かにいる。ただ、このおはんのように別の女に行ってしまった裏切り者の元夫との復縁を待つ女は明治の女なんだろう。当時は、甲斐性のある男には妾は1人ならず大勢いた。天皇家だって、女官という名の皇族の側近の女性がいた。大正天皇までは正妻の子ではない。医療事情が悪いので子供が育たない。仕方ない。

様々な映画賞を受賞した主演の吉永小百合は奥ゆかしい明治の女を情感こめて演じて確かに良い。今から39年前なので彼女がまだ30代,年齢を感じさせない妖怪のような美しさを備えた現在の吉永小百合もいいが,当然若い時はもっと美しい。当時,いろんな女優が潔くヌードになる映画が多く吉永小百合にも同じような期待がかかっただろう。石坂浩二との絡みできわどいシーンはある。ただ、ここで寸止めで終えたは良かったかもしれない。

大原麗子が非常によく見える。住み込みの芸妓を抱えている置屋のやり手女将である。最後に向けて,大原麗子と吉永小百合が対峙する場面がある。吉永小百合との浮気がばれた後だ。そこでの大原麗子は泣いたりわめいたりせずに落ち着いた面持ちだ。この貫禄はなかなかだせない。今思うといい女優だったんだなと思う。自分から見ると,賞は大原麗子にあげてもいい気もする。


近江八幡や岩国で撮ったとされるロケ地は、ひと時代前の建物が建ち並んで趣がある。セットでなく実際の建物を利用しているので,リアル感が高まる。39年経ってもすべて残っているのであろうか?

市川崑らしいアップを多用する映像はいつも通り。スローモーションで石坂浩二と吉永小百合の絡みを撮るカメラワークも良い。ただ,バックのミュージックにマーラーの交響曲5番の有名なフレーズを使っている。ちょっと違う印象を受けた。最後はストリングスだったからいいけど,途中は陳腐なオルガンもどきを使ってしけた感じがする。五木ひろしの主題歌もどうなのかなあ?映画音楽がもう少しまともだったらもっと良くなっていたのにと感じる。この当時いい作曲家がいなかったのかなあ。

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