夜の風の中にタバコのけむりがとけていく。
けむる空はゆっくりとした月が並び、整列された星が見える。
”こんな夜中にどこへ行くんですか? 今日はこんなにさむいのに”
声をかけられてふりかえる。白い服を着た少女。
”今日はこんなに月が並んでるんだ。外に出ないわけにはいかないじゃないか”
つぶやく男。
いつもよりも暗く、いつもより多く、いつもよりなお明るい。まるであやふやな空が広がる。
”そうですね。今日の月は何か違うんですね”
タバコのけむりが空を舞う。
かわいた空気が、ぴんと張りつめて、すいこむ息は白くけむる。
”なんだかここでこうしていると、僕等もあやふやになってしまいそうだ。ほらもうタバコの火が消えそうになっている。君は、帰らなくてもいいの?”
見上げた月は、どろどろととけはじめた。
どろどろと、どろどろと。
”こんな月の日は帰らなくてもいいんです。いえ、たぶん帰れないのです”
大きくなったあやふやな月が、ゆっくりととおくの街へと落ちていく。
”まさか・・・・・・”
”そうなんです。今日月は生まれ変わるのです。私たちのいた街を食らって”
その街が光につつまれ、そこから大きな月がせり上がってきたのは、つぎの日の夜だった。
いまでもこんな月を見ると思い出す。
あの日出会った月の事を。月をやさしくつつみこむ白い服を着たあの少女の事を。
けむる空はゆっくりとした月が並び、整列された星が見える。
”こんな夜中にどこへ行くんですか? 今日はこんなにさむいのに”
声をかけられてふりかえる。白い服を着た少女。
”今日はこんなに月が並んでるんだ。外に出ないわけにはいかないじゃないか”
つぶやく男。
いつもよりも暗く、いつもより多く、いつもよりなお明るい。まるであやふやな空が広がる。
”そうですね。今日の月は何か違うんですね”
タバコのけむりが空を舞う。
かわいた空気が、ぴんと張りつめて、すいこむ息は白くけむる。
”なんだかここでこうしていると、僕等もあやふやになってしまいそうだ。ほらもうタバコの火が消えそうになっている。君は、帰らなくてもいいの?”
見上げた月は、どろどろととけはじめた。
どろどろと、どろどろと。
”こんな月の日は帰らなくてもいいんです。いえ、たぶん帰れないのです”
大きくなったあやふやな月が、ゆっくりととおくの街へと落ちていく。
”まさか・・・・・・”
”そうなんです。今日月は生まれ変わるのです。私たちのいた街を食らって”
その街が光につつまれ、そこから大きな月がせり上がってきたのは、つぎの日の夜だった。
いまでもこんな月を見ると思い出す。
あの日出会った月の事を。月をやさしくつつみこむ白い服を着たあの少女の事を。