東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2016年02月05日 | Weblog

「蚊に魂はないが、蚊の飛ぶ音は魂をも苦しませる」。そんなことわざが、トルコにあるという。中南米の妊婦さんの心労は、この格言の通りだろう▼蚊に刺されることで感染する「ジカ熱」が大流行し、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出した。この病気は発症しても風邪のような症状が数日続くだけだ。だが昨年五月に流行が始まったブラジルでは、新生児の脳が十分に発達しない小頭症が急増した▼妊娠中に感染すると、小頭症を起こすのではないかとの恐れが強まり、二〇一八年まで妊娠を控えるよう呼び掛けた国もあるから、蚊がコウノトリを追いやりつつあるのだ▼不気味なのはジカ熱の足取りである。そのウイルスは一九四七年に東アフリカ・ウガンダの「ジカの森」で発見されたが、人間への感染はまれで、現地では深刻な病気ではなかったという。それが今、中南米で「魂をも苦しませる病」となって広がっているのだ▼グローバリゼーションの恩恵を受けたのは、多国籍企業や投資家らだけでなく、蚊でもあったという皮肉な指摘もある。発達した物流は蚊もまた、地球規模で素早く動かす。そうして広がる感染症の犠牲となるのは、公衆衛生への投資が不十分な貧困な地域に住む人々だと(R・スウィフト著『軍服のモスキート』)▼ジカ熱との闘いは、そういう現実との格闘であるのかもしれない。