司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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定時株主総会の不開催と取締役等の任期満了の問題について

2011-04-02 00:42:09 | 会社法(改正商法等)
 取締役の任期に関して,会社法は,「取締役の任期は,選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」と定めている(会社法第332条第1項本文)。

 そして,定時株主総会の開催時期については,「定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」(会社法第296条第1項)とあるのみである。

 ところで,大多数の株式会社は,定款に,「定時株主総会は,決算期後3か月以内に招集する」旨の定めを設けている。

 当該定めがある株式会社が,決算期後3か月以内に定時株主総会を開催しないときは,当該定時株主総会の終結の時に任期満了となるはずの取締役は,決算期後3か月の期間の経過により任期満了となる,とするのが登記実務の取扱いである。

 それでは,当該定めがない株式会社,又は当該定めがあっても法務省の救済解釈により定時株主総会を定款所定の時期に開催しなくてもよいと解される株式会社において,定時株主総会が開催されないまま長期にわたっている場合,取締役は,いつ任期満了となると考えるべきか?

 普通に考えると,これらの株式会社においては,「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会」が開催されない限り,取締役は,任期満了にならないことになってしまう。
※ ただし,後者の場合,定款所定の時期より後れて開催された定時株主総会の終結の時に任期満了となると考える立場によればである。

 もちろん,定時株主総会を開催しないことは,「会社法第296条第1項の規定・・・に違反して,株主総会を招集しなかったとき」(会社法第976条第18号)に該当し,取締役には過料が科され得るわけであるが,大多数の中小零細株式会社がまともに定時株主総会を開催していない実情に鑑みると,過料の制裁も現実的には難しい。

 となれば,取締役の任期に関する会社法第332条第1項等の規定は,形骸化したものとして,甚だ実効性がないものとなってしまう。中途半端に定時株主総会を開催することをしなければ,取締役の任期は,満了しないままだからである。

 果たして,それでよいのか?

 「毎事業年度の終了後一定の時期に」を限定的に解釈して,リミットを設ける必要があるであろう。その場合のリミットは,「翌事業年度の終了までに」と考えるのが合理的であると思われる。会社法に,例えば,「ただし,当該定時株主総会が開催されないときは,取締役の任期は,翌事業年度の終了の日までとする」旨の明文規定を置くのが最も明快な解決策であると考えるが,どうであろうか。
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