AKB48 チームBのファンより

鈴木紫帆里さんを中心にAKB48 チームB について語るサイトです。

指原莉乃 「ミューズの鏡」第1話~第6話(総選挙分析ライター)

2012-09-27 23:10:00 | 映画・芝居・ミュージカル・ドラマ
指原莉乃 「ミューズの鏡」第1話~第6話(総選挙分析ライター)


指原莉乃「ミューズの鏡」第1話 マキ登場

指原莉乃の主演映画「劇場版ミューズの鏡 マイプリティドール」の全国公開日が9月29日に決定したそうだ。出演者はTVの面々に加えて新たにマイケル富岡、大西結花、平沼紀久、ドロンズ石本なども出演するという。

6月14日の文春報道によってHKT48へ移籍となり、その混乱の中で映画の上映も見送られるのかと心配していたが、6月23日の指祭りの成功、7月5日のHKT48劇場デビュー、7月23日のAKB48劇場での指原莉乃壮行会などによってスキャンダルのダメージが軽減され落ち着いてきたことを見ての判断なのだろう。再スタートを切った新しい指原莉乃のイメージが早く確立されていくことを望みたい。

さて、「ミューズの鏡」だがTVでは一月から六月まで24回の放送が行われた。一話11分という短い作品であるものの、今回全てに目を通してみると一話、一話けっこう話が込み入っていて、最初に見ていた印象とは大きく異なることに気がついた。

劇場版の上映に先立ち、一話、一話を振り返ってみる。

2012年1月14日放送の第1話で指原は稽古場を覗き見する向田マキという役柄で登場する。初主演の姿は白の割烹着を着て、岡持ちを持っての登場という予想外な格好(実はこれが定番の衣装)だった。初めてのセリフは「ご、ごめんなさい。わたし覗いてなんていません」劇団のドラマらしく、指原を初めとして出演者全員声のトーンが非常に強く大きい。マキ(指原)は一万円札も見たことがないという貧乏を絵に描いたような家庭の出という役柄のため、それを受けて指原(マキ)の表情はまじめで固く多少沈んで暗く明るさがない。(なお、この貧乏という設定がこのドラマのトーンを終始暗く印象づけることになったようだ。)

以外感があったのは、指原が「ロミオとジュリエット」の台本を音読するが、声のトーンが高くきれいだったところ。こんなに声が響き渡り、きれいなんだとびっくりした。

ストーリー的には、マキが稽古場を覗き見していて劇団員に見つかり稽古場に入って覗き見していた理由を説明する場面が最初の山場、メインはマキが沖田を腹筋の力で吹き飛ばしマキの底知れぬ潜在パワーを感じさせるところとマキによる「ロミオとジュリエット」の美しい朗読。最後にマキが母の由美子から平手打ちを受けるシーンはこの後の展開が波乱に満ちたものであることを予感させる。

ミューズの鏡 第1話 2012年1月14日放送
稽古場でやめた劇団員のうわさ話をするともか(上田眞央)、あやの(荒井萌)、麗子(水沢奈子)の3人。演出家の沖田(池田成志)の厳しい指導のため、劇団員がその指導についていけなくてやめていき、劇団員が減って芝居の上演が難しくなっている。しかし、その厳しい指導によって沖田は今まで幾多の名女優を輩出してきた。そのうわさ話の様子を覗き見していたマキ(指原莉乃)。マキは芝居が大好きなのだ。ただ、マキは一万円を見たことがないほどお金がないため舞台は見たことがないという。その話を聞いて驚く麗子とあやのは、稽古場からマキを追い出そうとする。ちょうどそのときに稽古場に入ってきたうらら(平野綾)は、マキに「芝居に経験は必要ない。やりたければやればいい。お金の有る無しは女優に関係ない」と言って稽古の見学を奨める。うららはマキに対して内心「まるで何かに憑かれたような目をしている。今にも何かを演じたくてたまらない顔。一度ここに足を踏み入れてしまったら、二度とここを出られない。そんな情念を感じ」たのだ。だが、マキはそのうららの言葉にもかかわらずあっさりバイトに行ってしまう。

稽古場で発声練習をするうらら、あやの、ともか、麗子の4人、そこに沖田が入ってきて、4人への厳しいレッスンが始まる。「腹筋を使って腹から声を絞り出すのだ。おまえ達の腹筋はいったいどうなっているのだ?(沖田)」と言うと、いきなり、麗子、ともか、あやののおなかにパンチを見舞うと3人はその痛さにのけぞってしまう。「腹筋がないからこんなザマになるのだ(沖田)」 しかし、うららにパンチを入れるとうららはそのこぶしを腹筋の力で跳ね除けてしまう。「さすがだな。綾吹うらら(沖田)」、「当然ですわ(うらら)」

そこに突然稽古場へ駆け込んできたマキ。「わたし、やっぱり演じたい。わたしにお芝居をさせてください」と劇団員らに訴える。その言葉に興味を持った沖田は、「おもしろい。今、ちょうど発声練習を行っていたところだ。いっしょにどうかな。だが、その前にお前の腹筋をためさせてもらう」と言うやマキのおなかにパンチを入れると、マキは腹筋の力で沖田を3~4メートルも吹き飛ばしてしまったのだ。驚く劇団員たち。「おまえー(沖田)」、「お芝居がしたい(マキ)」、「なにこの女(あやの)」、「こわい(麗子)」、「ふふふふ、おもしろい、ふふふふ、おもしろいぞ、ははははは(沖田)」

そこに君島(浪川大輔) と近衛(竹財輝之助)が入ってきて、倒れてよりかかっている沖田に驚きかけよる。マキは机に置かれていた「ロミオとジュリエット」の台本をおもむろに手にして読み出す。「君は誰なんだ?(近衛)」、「なんだと、ベテラン女優でも難しいと言われるジュリエットの役を見事に演じきっている(君島)」、「稽古場をのぞきにきた素人ですわ(うらら)」、「信じられない(近衛)」、「ふふふふ、おもしろい、おもしろいわ、ははははは(沖田)」

家の中でも一心に台本を読むマキ。そこにマキの母・由美子(陽月華)が帰ってきて「マキ、あんたまたバイトを休んだそうじゃないか。いいかげんにしないかマキ」と言って、台本を取り上げでマキの前で破り捨ててしまう。「芝居なんて、金持ちの道楽なんだよ」とマキをさとす母だが、マキは「どんな鉄壁であろうとこの恋の邪魔をすることはできないでしょう。恋とは欲する事ならどんなことであろうとも・・・」とセリフを言い続ける。「おやめ、もうそんなのおやめ(由美子)」と言ってマキの頬を平手打ちし泣き崩れる母。「おかあさま(マキ)」・・・

この日マキの中に眠っていた何かが目覚めた。お芝居の神、ミューズに愛された少女、向田マキ。ミューズはマキの体を借りて舞台に降り立ったのだ。マキは女優というイバラの道を歩まなければならない。


指原莉乃「ミューズの鏡」第2話 蝉のエチュード

2012年1月21日放送第2話の注目点は、冒頭、マキ(指原)が母・由美子と朝食を食べるシーンでのマキ(指原)の衣装。マキは半そでの黄色のTシャツとジーンズという姿で出ているが、半そで黄色のTシャツ姿はこのときだけ。Tシャツには水玉模様の水鳥?の絵が中央に描かれている。「ミューズの鏡」の衣装のバリュエーシュンは極めて少ないため、この冒頭の半そでシーンの映像は貴重だということは全編を通して観たあと初めて気がついた。

もう一つのポイントはマキ(指原)がうらら(平野綾)が演じる蝶のエチュードを見て、「見える。蝶ちょが飛んでいる。お花畑まで。これが、これが演技」と言うときにマキ(指原)がにっこり微笑む。「ミューズの鏡」は全編を通して暗いことは以前指摘したが、そのためマキ(指原)が微笑んだり、笑ったりするシーンも極めて少ない。数少ない指原が笑顔で微笑むシーン。

第2話最大の見所はマキ(指原)が演じる蝉のエチュード。マキ(指原)は蝉の幼虫が土から出てきて孵化し、空を飛び回り、木に止まり、オシッコをして死ぬまでを演じる。指原の独演会シーン。指原の演技、見ていてなにかおもしろくなる。

ミューズの鏡 第2話 2012年1月21日放送
家で(陽月華)と粗末な朝ご飯を食べるマキ(指原莉乃)、このあと朝からバイトに行くのだ。母はマキに「芝居に興味を持つ時間など無い」と強くさとす。

一方、稽古場では沖田(池田成志)が麗子(水沢奈子)、あやの(荒井萌)、ともか(上田眞央)3人の発声を鍛えている。だが、人気女優のうらら(平野綾)はその練習には加わろうとはしない。その理由を問う沖田に対して、うららは「わたくしにあの台本を演じさせてください」と沖田に直談判し始めるが、沖田はうららを殴りつけてその訴えを無視する。そこにバイト(出前)の途中立ち寄ったマキが入ってくる。「どうしても足がここを向いてしまうんです。止められなくて(マキ)」 ともかが月3万円の月謝を払えばレッスンが受けられるとマキに説明するがマキは「3万円・・・」と聞いて驚きその場に倒れてしまう。

気がついたマキの前には君島(浪川大輔)がいた、マキの出前は君島が届けてくれた。稽古場では決められた設定で台本なしに演じるエチュードが行われていて、あやのがミツバチを演じていた。その演技を見て「女優なんかやめてしまえ!」と厳しくダメ出しする沖田。「きょうは昆虫を演じるエチュードなのだ」とマキに教えてくれる君島。次に演じたのはうらら。まったく動かないうららの演技を「さなぎ」と言い当てるマキ。さなぎから羽化した蝶が蜘蛛の巣にかかるさまを演じるうらら、だが蜘蛛に食べられるまでも演じきらなかったうららの甘さを沖田は鋭く指摘する。

沖田がマキに「どろぼう猫、起きていたのか」と言うと、舞台に駆け寄ったマキは突然演技を始める。マキは蝉の幼虫が土から出てきて孵化し、空を飛び回り、木に止まり、オシッコをして死ぬまでの姿を演じたのだ。「今のオシッコでおまえの負けだな、うらら」と沖田に言われたうららは泣きながら稽古場を出て行ってしまう。

「大変、早くお店にもどらなくちゃ」と我にかえったマキは、駆け出して稽古場を出て行く。「天才的な演技を見せたかと思えば、バイトを忘れるおっちょこちょい(君島)」、「どうした清次郎、おまえらしくもない、やさしい目をしてるぜ(近衛)」、「好きになっちゃうかもなぁ」と内心思う君島。

蝉の生き様を演じきったマキに長らく待ち焦がれた女優の姿を予感する沖田であった。


指原莉乃「ミューズの鏡」第3話 マクベス夫人

2012年1月28日放送第3話の注目点は、沖田(池田成志)が今日の稽古はシェイクスピアの「マクベス」だと発表。セリフを覚える時間はたったの1分。時間が短いと驚く劇団員に沖田は「マクベス夫人の気持ちさえ入ればセリフなど口をついて出てくるわ」と皿を飛ばしながら叱りとばすシーン。横の椅子に座ってその説明を聞いている指原が、皿を激しく飛ばして劇団員を罵倒する沖田(池田)の演技に本当に驚いてすくんでいる。池田成志の声の大きさとその気迫に指原がたじろぎ、びっくりしている表情がありありと出ている。

次の注目点は家に帰ったマキ(指原)の衣装。第2話の冒頭で着ていた黄色のTシャツの上にクリーム色をベースにこげ茶色の二本線が入った厚手のカーディガンを着ている。この後、白の割烹着かこの服装で押し通した。

見所は、マキ(指原)がマクベス夫人を演じるシーン。舞台に上がって振り向いた瞬間のマキ(指原)の顔つきが、暗く深く沈み目が冷たく据わっている。この表情は、当然ながらアイドルの映像としてはありえないものなので、極めて貴重。一度も見たことがない指原の顔。人を寄せ付けないような冷たい美しいすごみがあり、思わず「ぞくっ」として身震いした。「ミューズの鏡」全編の中でも指原の表情としては、最高の映像。(実にいい表情、惚れ直した)

ミューズの鏡 第3話 2012年1月28日放送
稽古場でともか(上田眞央)、あやの(荒井萌)、麗子(水沢奈子)の3人が話をしている。話はうららがいつも口にする「あの台本」のことだ。その台本とは「ミューズの鏡、沖田先生(池田成志)が10年前に発表し演劇賞を総なめにした伝説のお芝居なの、ただ沖田先生が溺愛した主演女優が事故で死んで、それから先生はミューズの鏡を封印したの(麗子)」 そこに近衛(竹財輝之助)と君島(浪川大輔) が駆け込んできた。直後に沖田がうどん屋でバイト中のマキ(指原莉乃)を強引に稽古場に連れて来た。戸惑う劇団員とマキに対して沖田は「おまえ(マキ)は、ここで毎日演技をするんだ」と宣言する。

沖田は劇団員に今日の稽古はシェイクスピアの「マクベス」だと発表する。セリフを覚える時間はたったの1分。時間が短いと驚く劇団員たちに沖田は「マクベス夫人の気持ちさえ入ればセリフなど口をついて出てくるわ」と叱りとばす。1分間で必死にセリフを覚える劇団員たち。初めに近衛とあやのが演技をするがセリフが途中で出てこなくなってしまい打ち切られる。そこにドラマに出演していた人気女優のうらら(平野綾)が入ってきて、この練習を見て驚く。次は君島と麗子が挑戦するが、麗子はまったくダメ、君島はおしいところまでいくが完全には覚えきれずに終わる。「マクベスは俺にも降りてきてはくれなかった」とつぶやく君島。

「よーし、次はいよいよどろぼう猫の番だな、返事がなーい」と言う沖田に、無言で立ち上がり舞台に向かうマキ。舞台に上がって振り向いたその形相はマクベス夫人に一変していた。「あの目はマクベス夫人(沖田)」、「夫マクベスを操り、自らの欲望を果たさんとする業深き女マクベス夫人の目(うらら)」、「シェイクスピアが求めた真の姿なのか(君島)」 セリフをあたかも台本を平読みするようにたんたんと言うマキに沖田は「レイカだ、レイカと同じだ」、「レイカ?あの花柳レイカと同じ!(うらら)」、「あいつもカンペを読むようにセリフを言っていたっけ、そうか、やはりそうだったのか(沖田)」、「こいつは、とんでもない娘があらわれたのかもしれんな(君島)」

家に帰ったマキ、内職中の母・由美子(陽月華)から「きょうはお給料日だろ、早く出しな」と言われ、「すいません。おかあさま。わたくしくびになってしまいました。わたくしがあまりにお仕事ができないのが原因です。(マキ)」、「お芝居かい、出ておいき、出ておいきったら出ておいき、お前なんかおかあさんの子じゃないよ(由美子)」、「おかあさま、そんな(マキ)」、「今から次の仕事を決めておいで、決めるまで帰ってくるんじゃないよ!(由美子)」

貧乏を恨むか才能を恨むか、悩みの淵をさまようマキであった。


指原莉乃「ミューズの鏡」第4話 最後のレッスン

2012年2月4日放送第4話、ストーリー的には冒頭マキの母・由美子(陽月華)がマキ(指原)のために見つけてきたバイトがすごいので驚き。朝は新聞と牛乳配達、学校の昼休みは駅前で30分チリ紙配り、学校が終わってからはガソリンスタンドでバイト、学校が休みの日曜日はマキが泳げないにもかかわらず遠い海で海女さんになってあわびとり。さらに、まだマキが免許をとっていないにもかかわらず20歳になったらデコトラの運転手を決めてきたという。女工哀史か蟹工船の世界。

注目点は沖田(池田成志)がマキ(指原)に行う最後のレッスンでマキが電車へ乗車するシーン。設定していた電車の乗車口とはまったく違うところからマキが電車に乗り込み、沖田が「駅に着いてもいないのに、ふらりと乗りよった。型破りな演技を見せてくれることよ」と言ったシーン。たぶん、指原が間違ったのだろう。

もう一つは、電車に乗り込み座席に座り、周囲をチラ見するところ。指原がアンダーガールズ時代に出ている「Choose me!」のPVによく似たシーンとなっている。

見所は沖田がマキ(指原)に「そんなに母親が大事か、おまえはどうする?おまえはどこに行くんだ?」とマキに迫り、沖田はライオンが自らの子を千尋の谷に突き落とす例でマキを説得しようとする。その沖田にマキが返答するシーン。沖田のマキへの問いにマキが真正面から真摯に耳を傾け、目を大きく見開いて「わかります」と答える緊張感は秀逸。指原の顔がアップで映り、張り詰めた表情は劇団型ドラマならではの緊張感が伝わってくる。

ミューズの鏡 第4話 2012年2月4日放送
仕事が決められないマキ(指原莉乃)のためバイトを見つけてきた母・由美子(陽月華)。朝は新聞と牛乳配達、学校の昼休みは駅前で30分チリ紙配り、学校が終わってからはガソリンスタンド、学校が休みの日曜日は海で海女さん。20歳になったらデコトラの運転手の予定だ。

稽古場では、うらら(平野綾)と君島(浪川大輔)が小さいころの思い出を語りあったあと「どう思う、向田マキ?(君島)」、「どう思うって?(うらら)」、「彼女は天才かもしれないな。花柳レイカのミューズの鏡、彼女ならやれるかも(君島)」、「やめて、なんてこと言うの(うらら)」、「ごめん、うららもやりたかったんだよな、あの伝説の戯曲を(君島)」、「絶対にわたくしのものよ(うらら)」

そこにマキが入ってきて、「きょうは皆さんにお別れを言いに来たんです。新しいバイトを始めたが、休む時間がなくて。先生には毎日来るように言われているが、お金のないわたしには無理なんです」と2人に説明するマキ。

ともか(上田眞央)、あやの(荒井萌)、麗子(水沢奈子)、近衛(竹財輝之助)の4人も現れ、マキは劇団員に「芝居をしたいが、おかあさんを楽にしてあげたいので芝居を忘れることにしました。失礼します」と挨拶して稽古場に別れを告げようとする。そこに沖田(池田成志)が「そんなに母親が大事か、おまえはどうする?おまえはどこに行くんだ?おまえは何をしたい?」とマキに迫る。「わたしは演技がしたい」が母親をとると言うマキに沖田は最後のレッスンをすることにした。

舞台では電車内という設定で、近衛、ともか、あやのがつり革につかまり、麗子と君島が座席に座ったポーズをしている。「よし、うらら、次の駅で乗ってみろ(沖田)」 うららは電車に乗るとつり革につかまっている近衛の横で本を読み始めるが、突然、「やめてください。この人痴漢です」と叫んで近衛の腕をとり大きく振り上げる。乗客は騒然とする。その騒ぎの中に「入ってみろ(沖田)」と言われたマキは、席に座るとこの騒ぎをチラ見するだけで騒ぎに加わろうとはせず、なんと本当に眠ってしまったのだ。「やっぱり天才女優だったのだ。生まれつきの女優だったのだ。一瞬にして疲れきったOLを演じきったぞ」と沖田はマキを絶賛した。「演じきったのではない。彼女は疲れきったOLそのもの(うらら)」 あやのに起こされたマキは「もうこんな時間、先生、最後のレッスンありがとうございました」と言って出て行ってしまう。

「どこまで俺を翻弄する気だ。向田マキ」最後と決めたレッスンで、三たび心捕まれた沖田、その背中に今はなき花柳レイカの面影を見るのだった。


指原莉乃「ミューズの鏡」特別編 福田雄一との対談

「カッコイイ自分を演出することをあえてしない私」・・・指原莉乃

2012年12月12日に放送された指原莉乃主演ドラマ「ミューズの鏡」は、指原と監督(脚本・演出)の福田雄一が第4話までを振り返っての対談(特別編)だった。

この対談は監督の福田が、「女優指原の仕事を訴えたい」という気持ちから企画したものだが、ジャンルが指原にとって初主演のドラマ(演劇)という分野であることや対談者の福田監督が指原から本音を引き出そうと第4話までの指原の演技をもとにしたさまざまな質問、さらに指原の早口も加わり、見ていて決してわかりやすいというものではなかった。

福田監督が指原に聞いた内容は、主役が決まったときの感想、女優の仕事をどう感じるか、どのような気持ちで、またどのようことを考えながら主人公向田マキを演じているか、女優としての今後の目標など盛りだくさんである。

対談の中で、福田監督が指原を評価しているのは、セリフを真剣に覚え、演技も真剣で、真面目に女優業に取り組んでいるところや、「欲のない演技」をしているところである。

特に演技においては、指原の「一瞬の視線のそらし方」、全力の迫力をこめた「わかります」という返事、「岡持を置いての倒れ方」、ステージへいやらしくなく「乗る」ところ(後記載)など、それぞれのシーンにおいて期待以上(120%)の演技をしており、福田監督をして指原を『天才』とまで言わしている。

一方、福田の質問に対して指原は、「ミューズの鏡」を最初コントだと聞かされ後でドラマとわかり驚いたことや「女優をやっていると言いたくない」、「余裕がなくて人を笑わせる演技」など思いもよらず、「演技の経験が無いのでちゃんとやんなきゃという気持ちだけ」で監督の言うとおりに「真剣に」やっている。そして、あえて「カッコイイ自分を演出しない」などと返答している。

最初はまじめに一生懸命答えていた指原だが最後の方で、バラエティー・トークにおける持ち前の受け狙いを押さえきれなくなったのか、福田監督から「カッコイイ自分を演出しない」自分がカッコイイと思っているといやらしさが出るので、そこをわかっていて、なおかつ、そこをちゃんと狙いにいかずにやるのは女優の仕事だと言われると「もしかしたら自分は女優なのかもしれないと思い出してきちゃった。」と茶目っけ気味に答え、最後に福田監督から今後の女優としての目標を聞かれた際には「11時台のドラマに出演したい」とユーモアを交えて返答し福田の笑いを誘って締めくくっている。さすが指原と言うべきか、指原恐るべしと言うべきか、圧巻である。

冒頭では対談が盛りだくさんの内容で必ずしもわかりやすいものではないと述べたが、そもそも、約10分間という比較的長い時間、指原が一つのテーマについて語った記録自体珍しいし、話された内容が初めて経験する「女優」の体験談なので真剣である。そういう点から評価してみると、わかりやすくはないが貴重なものと言えるだろう。

また、普段バラエティやトークで話題を集める指原が、初めて経験する女優業でのとまどいや女優という仕事に対して一途にひた向きでまじめな態度で臨んでいる姿を素直に語っているので共感が持てる。

このほか、対談に答える指原の表情がすまし顔や真剣な表情、真剣なまなざし、まじめな表情やどや顔、嘘くさい真剣なまなざし等いろいろ変化する。その表情の変化を追っていくだけでも大いに楽しめる内容である。

対談において指原が福田監督から受けた主な質問と答えた内容は以下のとおり。

「ミューズの鏡の主役については(福田)?」
⇒初めコントと聞いていたので、後で、ドラマとわかり、えっと思った。そのため、いまでもドラマなのかコントなのかわからない気持ちで撮影に臨んでいる。そのせいか、イマイチ女優としての実感(イメージ)がわかない。撮ってみたら、マジだったので話が違うと思ったが、同時にがんばらなくてはいけないと思った。・・・指原

「女優の仕事をしているという感覚については(福田)?」
⇒女優の感覚があると言ったらウザイし、女優を感じていることが嫌で、女優をやっていると言いたくない。セリフを真剣に覚えるのは、せっかく仕事をいただいているのに、やってないと思われるのが嫌だから。女優(業)は、余裕があれば楽しいと思う・・・指原

「ミューズを表立ってコメディと言わず、みんなシリアスな顔をしてやっていることについては(福田)?」
⇒ブログのコメントにサッシーはとてもかわいそうという深刻なコメントがあってそんな真剣に見てくださっているんだと思っている。・・・指原

「マクベスの台本を取り上げられた時にすごくいい顔をするシーンについては(福田)?」
⇒計算づくの表情。私としては、マキの気持ちに入って、読んでいる時にパッと取られて。ハッどうしよう、ハイというやつ。もらって、取られて、あっもっとやりたかったのに、ということを表現した。・・・指原

「うまく見てもらおうとか笑ってもらおうとか私を見てなにか感じてほしいという欲のない演技をしていることについては(福田)?」
⇒見せるとかそういうことに余裕がなくて、台本を覚えるだけで、アドリブがきかない。ドラマのときにおもしろい演技、人を笑わせる演技をできると思ったことは1回もない。私は本当に演技の経験が無いので、ちゃんとやんなきゃという気持ちだけ。私の演技で進行を妨げたくない。だから、真剣に演技するだけではなく、こうした方がいいとのアドバイスをそのままやるだけで、私は何もしていない。・・・指原

「岡持置いて倒れるシーンはあそこまでやってと言っていなかったが(福田)?」
⇒監督が置いてと言ったから置いた。でも、置くという自然の動作がわからないから、置いてと言われたら置くしかない。・・・指原
⇒「置こうと思って置いて、倒れろと言われたから倒れた。天才なんじゃないの。(福田)・・・指原を大絶賛」

「シャープ4の電車のエチュードで舞台の正面から乗っていくマキの演技については(福田)?」
⇒監督がステージに乗ってと言われたからステージに乗った。(そこにおもしろく乗ってやろうという気持ちは)ない。乗れと言われたから乗った。(ちょっとおもしろくしてやろうということ)については、こいつおもしろいことをしてるという空気が嫌。カッコイイ自分を演出することをあえてしない私。あらためて、そう思って見てほしい。(こういうことをやる自分は)もしかしたら女優なのかもしれないと思い出してきた。・・・指原

「この先女優としてやっていったときの目標は(福田)?」
⇒女優としてなんでもやりたいが、とりあえず11時台のドラマに出たい。・・・指原 ドーン

2012年12月12日25:55 指原莉乃「ミューズの鏡」特別編 福田雄一との対談
福田「今日はミューズの鏡の特別編といいますか、僕はもともとこれをやりたかったんですよ。最初この企画を出したときに10分ぐらいドラマをやった後に毎回その回の収録を終えたサッシーにその回の自分の演技に関してのコメントをもらって終わりにするという構成にしたかった。女優指原の仕事であるということを割りと前半で訴えたいというのが僕の方にあって、みんながそれを聞きたいと思っているので。今回主役の仕事が来たよ、ということで伝わったわけですよね。」
指原「はい。(多少スマシ顔)」
福田「最初どう思ったですか?普通に。」
指原「私、コントと聞いていたんですよ。ほんとにコントの仕事だと言われて。私、次の日、仕事がちゃんと決まって、放送時間帯がこうこうこういう内容だよ。福田さんがこうこうだよという話を伺って、公式の発表がされたじゃないですか。そうしたら、私、ブログを見たら、コメントにドラマ主演らしいですね、と書いてあって。(大きな声で)えっ、ドラマかと思った。」
福田「新聞に載って初めてドラマだとわかったんだ。」
指原「そうなんですよ。だからいまでもドラマなのかコントなのかわからない気持ちで撮影に臨んでいるから。女優としてどうなのと言われてもイマイチ女優って・・・(すまし顔)」
福田「最初にお母さんとのシーンから入ったじゃないですか。陽月さんがかなりストイックなお芝居だったでしょう。そこでどう思いましたか?」
指原「私としては話が違うと思った。そっちか。マジの方や。撮ってみたら案の定マジの方だったから。」
福田「案の定、マジの方だったね。」
指原「すごい。これはがんばらなくてはいけんやつだと思いましたね。(真剣な表情)」(思わず大分弁が出てしまう。)

福田「コントだったらワーとやってハイ終わりでいくじゃないですか。指原さんのワンショットだけいきます。一言だけください、というみたいのがあるじゃないですか。ああいうのは女優の仕事をしているなという感覚はないですか?」
指原「あると言ったらウザイですよね~。」
福田「そんなことはない。」
平野綾「私はまったくそういうふうには感じない。」
指原「あると言ったらウザクないですか。女優を感じている感じがして嫌なんですけれど。」
福田「逆に女優を感じてもらわないと困るもんね。」
指原「お仕事としてはちゃんとやっているんですがそういうふうに言いたくないだけなんですけれど。私女優やっているわよ、と言いたくない。」
福田「どうしてですか。今回、女優の仕事ですよ。」
平野「本当に謙虚ですよね。現場の雰囲気なんかも自らなごませてくれたりとか。話しかけてくださったりとか。」
福田「たんにおしゃべりなだけだとか。」
指原「そう、よくしゃべるんです。」
平野「はっと見ると台本に集中していて。こういうところはストイックなんだなという感じを出している。」
福田「前の夜とかすごい悲痛なブログとかを書いているんですよ。」
指原「プッ、覚えるのが遅いから。」
平野「間違えたことないですよね。」
福田「すごい真剣に覚えてきているんですよ。」
指原「それは、せっかく指原がお仕事いただいているのに、やってきてないじゃんと思われるのが嫌なんですよ。(まじめな表情)」
福田「それはどんな仕事でも同じ臨み方なんですか。」
指原「私がやってきてないと、ほら、やっぱりな、となるじゃないですか。」
福田「女優、女優業は楽しいですか?」
指原「う~~ん。(目をつむり上を向く)余裕があれば楽しいです。」

福田「今回のミューズで、表立ってコメディと言ってないじゃないですか。みんなものすごくシリアスな顔をしてやっているじゃないですか。」
指原「ブログのコメントなんかにサッシーはものすごく貧乏な家庭の役なんですね。とてもかわいそうです、という深刻なコメントがあってそんな真剣に見てくださっているんだと・・・」
福田「本当にそうですよ。本当にサッシーが真面目に女優業に取り組んでいると思っているのではないかな。」

福田「僕すごく好きなシーンがあって沖田先生にマクベスの台本を渡されるシーンがあるじゃないですか。取り上げられた時にすごくいい顔をするんですよ。」
指原「(大きな声で)オー」
平野「一瞬、視線をそらすやつですよね。」
福田「そう、そう、そう。」
指原「(一段と大きな声で)エー、毎回入れましょうよ。」
福田「やってくれないと。入らないですけれど。あれを意識してやっているのかを聞きたかった。」
指原「まったくしてないです。(まじめに)」
福田「視線をくくってそらすやつです。」
指原「それは計算ずみの、ハイ。(大きくわざとらしくうなずく)」
平野「そうなんだ。」
福田「あれはどんな演技理論に基づいているのですか。ちらっとはずすのは。」
指原「そうですね。私としては、マキの気持ちに入って、読んでいる時にパッと取られて。(大きな声で)ハッどうしよう、ハイというやつ。(照れ笑い)」
福田「ん?」
平野「今のハイの部分ですか?」
指原「そうです。もらって、取られて、(大きな声で)あっもっとやりたかったのに(一瞬、視線をそらす)、ということですかね。(ドヤ顔)」
福田「なるほどね~。」

福田「今までシャープ4まで放送されているんですけれど。僕がずっと編集の時に言っていたのは、欲のない演技ということをずっと言っていた。いわゆるうまく見てもらおうとか。笑ってもらおうとか。私を見てなにかしら感じてほしいという欲がまったくない、という感じがした。」
指原「なんですかねえ。たぶん、見せるとかそういうことに余裕がなくて。台本を覚えて、アドリブがきかない。」
指原「だって真剣ですもの。」
福田「本当に真剣だよね。でも、自分でちょっとおもしろいと思っているところあるでしょう?」
指原「ドラマの時はいっさい思わないです。ドラマのときに成志さんみたいにおもしろい演技、人を笑わせる演技をできるなと思ったことは1回もないです。(真剣な表情)」
福田「成志さんがたとえ話が適切ではないという話をするところがあるじゃないですか。『だから俺はたとえ話はせん。わかるな。』と言ったときに『わかります。』と言うじゃないですか。あの『わかります。』は、僕は120点だと思うんですよ。」
指原「へー、やった。」
福田「『わかります。』と言ったって、本当はわかっちゃいけないところでしょう。あそこって、『わかるな』、あんなんでわかるなと言われていることがおかしいでしょう。それをあんなに一生懸命『わかります。』とひたむきに言うのはなかなかないと思うんですよね。なんかこう全力の迫力があるんですよね。それはある程度の演技プランに基づいた全力なんですか?」
指原「なんというんですかね。私は本当に演技の経験が無いので、ちゃんとやんなきゃという気持ちだけですね。(真剣な表情)」
福田「ちゃんとやんなきゃというのは、皆さんに迷惑をかけてはいけないという・・」
指原「そう、そうです。私の演技で進行を妨げたくない。(真剣な表情)だから、真剣にだけではなくて、こうした方がいいよ、といものは私にちゃんとアドバイスしてくださるので、それをそのままやるだけで、私何もしていないですよね。」

福田「岡持こう置いて倒れるシーンなんて、あそこまでやってくださいと言っていなかった気がする。」
指原「置いてと言われたから置いたんです。」
平野「あれちがうんですか?」
指原「監督が置いてと言ったから置いたんです。でも、置くという自然の動作がわからないから、置いてと言われたら置くしかない。(ひた向きな表情)」
福田「置こうと思って置いて、倒れろと言われたから倒れた。天才なんじゃないの。」
平野「本当にマキみたいですね。」
福田「本当に本当。本当。本当にシャープ4の電車のエチュードをやっていてウララがちゃんと駅に着いたという設定で出入り口から入ってくるのに対してなんの関係もなく舞台の正面からドーンと乗っていくマキがいるわけじゃないですか。なにもいやらしい考えがない背中なんですよ。だから気持ちよく笑える。あれも普通にこう・・・」
指原「あれも監督がゆき?ところでステージに乗ってと言われたからステージに乗ったんです。」
福田「そこにおもしろく乗ってやろうという気持ちは?」
指原「ないですよ。のれと言われたから乗ったんですよ。(真剣な表情)」
福田「ウララの振りがあって正面からドンとのっちゃうことが笑いにつながることがなんとなくわかったうえですよね。そうするとちょっとおもしろくしてやろうと普通は思うんじゃないですか?」
指原「こいつおもしろいことしてるという空気が嫌なんです。(明るくさわやかな表情)」
福田「なるほど。それを感じさせたくない。」
指原「そうです。だからカッコイイ自分を演出してやれ、をあえてしない私。(ドヤ顔)」
福田・平野「カッコイイですね。」
福田「カッコイイこと言ったなあ。」
指原「あらためて、そう思って見てください。(堂々としたドヤ顔)」
福田「そこって、あえて狙わない自分がカッコイイと思っているといやらしさが出る、そこを出さない理論が何かあるんじゃないかと思って。」
指原「(笑いながら)なんですかねえ。」
福田「そこをわかっていて、なおかつ、そこをちゃんと狙いにいかずにやるということ、それはもう女優の仕事だと思う。」
指原「そう言われるともしかしたら自分は女優なのかもしれないと思い出してきちゃった。(嘘くさい真剣なまなざし)」
福田「(笑い)」

福田「最後にこの先女優さんとしてやっていったときに自分の目標はどこに置きますか?」
指原「女優としてやらしてもらえるならばの話ですが、やらしてもらえるならばなんでもやりたいですが(上を向いて少し考えて)、じゃあ、11時台のドラマに出たいです。(ニヤ顔)」
福田「(下を向いてくすくす笑いをしながら)11時台ですね。」


指原莉乃「ミューズの鏡」第6話 地面を這いつくばる

2012年2月18日放送第6話の注目ポイントは最終場面でうららがマキ(指原)にチェーホフの『桜の園』が観られるように1万円札を渡すシーンがあり、その一万円札が聖徳太子の旧一万円札だということ。この一万円札は1958年から1984年まで流通しているので、「ミューズの鏡」の時代背景は今から約28年前以前ということがわかる。

第6話は「ミューズの鏡」全編の中でストリー的には最も暗い。それは、貧しさ故にチェーホフの『桜の園』の切符を買うことができないマキに麗子(水沢奈子)が3回まわってワンと言えば自分の持っている余った切符を渡すと言っておきながら、その約束を反故にしてマキの前で切符をこなごなに破り棄ててしまうという陰湿ないじめシーンがあるからだ。「ミューズの鏡」というドラマが持つ暗さの象徴的シーンのひとつである。

このシーンを演じる指原も迫真の気迫で演じている。麗子(水沢奈子)に「券が欲しければ、3回まわってワンと言え」と言われたときの指原の表情は、目を大きく見開き麗子の顔をしっかり見つめ人間不信の感情を露わにしている。さらに、「お芝居が見られるなら何回でも回ります」と言って、麗子の前をなかばやけくそに何度もまわり、ワンワンワンと吠えている。ドラマとはいえトップアイドルがここまで人間性を否定した演技を受け入れると胸が苦しく痛くなるばかりか気分が悪くなる。

筆者的にはストーリーにまったく楽しい気持ちになれるところがないので、第6話は何度も見たいとは思わない。

ミューズの鏡 第6話 2012年2月18日放送
マキ(指原莉乃)の母・由美子(陽月華)を訪ねる沖田(池田成志)。一方、マキは沖田から稽古場にいることを命じられる。

稽古場では劇団の面々がチェーホフの『桜の園』を観に行くという。貧乏でお金がないマキは観たいが観ることができない。すると麗子(水沢奈子)が余分な券をもう一枚持っていると言い出すが、マキにあげるぐらいなら捨てると言ってマキにあげようとはしない。欲しければ、3回まわってワンと言えとマキに迫る。「お芝居が観られるなら何回だってまわります」と言って麗子の前で必死に何度もまわり、ワンワンワンと吠えるマキ。だが、麗子は非情にもマキの前で芝居の券をこなごなに破り棄ててしまった。「地面を這いつくばる人間が観るものじゃないのよ、『桜の園』は」麗子はマキにそう言い捨ててあやのと出て行ってしまう。

場面は変わりマキの家を訪ねた沖田は由美子に「私に向田マキを預からしていただきたい。あなたは彼女を育てる必要はない。彼女は私が育てる。あなたは一人でどこぞへと行くがいい。私は彼女を救いに来た」と言い放つ。それに対して、「(由美子)バカを言わないでおくれ。私はあの子を働かせて少しでも楽がしたいんだよ。」、「(沖田)娘さんはあなたの奴隷ではない。娘さんにも将来を選ぶ権利がある。夢を選ぶ権利がある。なにより彼女には才能がある」、「(由美子)あたしはねえ。あいつがどうなったっていいのさ。」、「(沖田)ほほう。母親の言うセリフではありませんね。」、「(由美子)母親じゃないのさ。私は、あの子の実の母親じゃないのさ。他人の、他人の子なんだよ」、「(沖田)それを彼女は、彼女は知っているのか?」、「(由美子)ははは、知るわけないだろ」、「(沖田)なんてことだ」、「(由美子)そんな他人の子をここまで育ててきたんだ。働かせて何が悪いんだい」

一人稽古場でうずくまり、こなごなになった券をつなぎ合わせるマキ。そこにうらら(平野綾)が入ってくる。「(うらら)何をしているの?」、「(マキ)『桜の園』の券がばらばらになってしまって」、「(うらら)そんなになってしまってはもう使えないわね」、「(マキ)いえ、集めてくっつけたらきっと入れてくれるはず」、「(うらら)無理よ、半券を離されてしまったらもう最後、ただの紙屑なんだから」、「(マキ)観たい、『桜の園』が観たい」「(うらら)おやめなさい、あなた」、「(マキ)観たい、観たい」、「(うらら)おやめなさい、見てられない」、「(マキ)やめて、あっうららさま」

「なんなのこの娘をここまでつき動かすものは?初めてだわ、こんな恐怖を感じるのは。負ける。こんな娘と同じ舞台に立ったら。私は負ける。この綾吹うららが」 うららがマキに一万円札を差し出しすとマキはひったくるようにうららからその一万円札をとって飛び出して行った。「そうやって女優としてどんどん成長すればいい。わたくしと同じ舞台で闘える女優になるの。楽しみね。待っているわ(うらら)」

由美子と床を同じくする沖田。決して開いてはならぬ扉を開けた沖田、それを知るよしもないマキであった。


以上
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 指原莉乃 「ミューズの鏡」第... | トップ | 島崎遥香は、「ぽんこつ」で... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画・芝居・ミュージカル・ドラマ」カテゴリの最新記事