百醜千拙草

何とかやっています

The Persuit of Funding

2017-03-07 | Weblog
ようやくグラントを提出しました。これで半年ほどホッタラカシになっている仕事に取りかかれそうです。今日は平日ですが、帰ったらお気に入りのホップとシトラスの風味のビールを飲んでリラックスします。試験を終えた受験生の気分です。

それにしてもどういうわけか、グラント書くのが、自分にとって、年々難しくなってきているように感じます。自分では作文の技術は上達したと思うのに、十年前よりも3倍は余分に時間がかかるようになったのはどういうわけでしょうか。このネタは五年前からのもので、取り掛かりは良かったものの、なかなかグラントの中心仮説を立てるためのいいデータが出ずに、ずっと書けずにいたものです。前回、前々回、と見送り、今回の締め切りが最後と考えて、半年前から、本格的に書き始めたのですが、最初の一ページを書くのに数ヶ月かかり、足りないデータを出すために実験を追加したりしている間にあっという間に時間が経って、なんとか初稿を書き上げたのが3週間前、そこから頼み込んで、同僚数人に読んでもらって推敲を重ね、締め切りギリギリ、提出の日の朝まで校正作業をしていました。今回は熟成期間が不足しています。

リンカーンは『もし8時間、木を切る時間を与えられたら、そのうち6時間を私は斧を研ぐのに使うだろう。』といったそうですが、グラント書きに関しては、私はお勧めできません。斧を研いでいる間にすっかり精神力を使い果たしストレスがたまり、残り2時間となって焦って書き始め、結局、その仕事の質をチェックする時間が十分に取れませんでした。頻繁に斧の切れ味を確かめて、研ぐ時間と切る時間のバランスを図り、十分な余裕を持って切り追えるようにできないようならば、その仕事はやめた方が良いと感じました。一旦仕事を完成させてから、熟成期間を置き、仕事の質を客観的にチェックするのことは良い計画書を書くにの不可欠です。思うに、グラントに関してのベストは、木を切り終えてから、その木を切る計画を申請することです。すでに仕事が終わっているのだから、完璧な計画が立てられます。しかし、現実はなかなかそう簡単にはいきません。建前上、木を切るために必要な金がそもそもないので研究費を申請するわけですし。

また、計画書は面白いノンフィクション小説のようである必要があります。読み手の興味を引きつけ、期待を高めた上で、意外な展開を導入して飽きさせず、そして高揚感のあるフィナーレまで引っ張っていかねばなりません。しかし、言うは易し、行うは難しです。そんなことが簡単にできれば、失敗しない映画はないでしょう。そのためには、レビューアというシニカルなお客様の視点にどこまで近づけるかがキーであるのは間違いありません。彼らがどういう研究が意義があると考えているのか、彼らにとってのブレークスルーやイノベーションとは何か、彼らがどういう言葉遣いを好み、どういう考え方を嫌うのか、そうした分野に特有な明文化されない文化、共有された無意識とでもいうような部分に入り込み、彼らの興味と共感を得た上で、しかもそこから一歩先を目指す、という微妙なバランスが要求されます。、、、自分で言っていて虚しくなってきました。

それにしても今回のグラントは辛かったです。今年はあと二本は別の小さなものを出すことが決まっていますし、今回ものが採用されなかった時の予定も組み込んでおく必要があります。いずれも、今回ほど困難ではないと予測していますが、すでに頭が痛いです。いつまで続くのでしょうか、この綱渡り人生は。
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