百醜千拙草

何とかやっています

長官の死

2023-12-05 | Weblog
先日のニュース。ニクソン、フォード時代に国務長官だったキッシンジャーが100歳で死去とのこと。私が小学生ぐらいの時は、日本の子供がアメリカの歴代大統領の名前を覚える遊びがあったほど、日本はアメリカの植民地色が残っておりました。ケネディー、ジョンソン、ニクソン、フォード、、、子供ですから、ニクソンがなぜ任期中に辞任したのかなど知りません。ただ、彼らは「宗主国の偉い人々」でテレビでよく聞く名前だから子供が覚えただけです。ニクソン、フォード政権のころは、テレビのニュースでは「キッシンジャー長官」は、しょっちゅう出てきて、あの陰気臭い顔を何度も目にしたのを覚えております。日本の子供が名前と顔を覚えてしまうほどアメリカの国務長官がテレビのニュースに頻繁にでてくるという異常な事態は、当時は誰も疑問に思っている人はいないようでした。多分、戦争であまりにコテンパンに負けたので、戦争が終わって30年以上たっていても、日本人は戦争に負けたからアメリカの偉いさんがアレコレ言うのをおとなしく拝聴するのは仕方がないとでも思っていたのでしょう。

そのころ、アメリカは中国との国交正常化に向けて準備中で、キッシンジャーは1971年、秘密裡に周恩来と会談を持ちます。これは翌年のニクソン訪中のお膳立てが目的でありましたが、会談内容は秘匿され、機密期間が過ぎた2002年になって内容が明らかになりました。当時、中国は日本の経済発展を見て、日本が再び再軍備化をすすめアジアの脅威となるという懸念を示しました。現在、日本は世界8位の軍事大国であり、軍拡については50年前の中国の懸念の通りになりましたが、戦争をやるような体力はとてもなく、中国の軍事力は日本をはるかに凌駕するようになり、まともにやれば日本の勝ち目はありません。それはともかく、この周恩来の懸念に対して、キッシンジャーは、日本の軍拡に関しては「在日米軍が抑止力である」という話をします。つまり、在日米軍の真の目的は日本の防衛ではなく、日本をコントロールすることであると考えていたいうことで、これが日米安全保障条約の目的でした。今でも横田米軍基地を「横田幕府」と呼び、真の日本の支配者は在日米軍とその最高司令官のアメリカ大統領だと考える人々が少なくないです。実際、日本の多くの政策を決めているのは、日米地位協定に基づいて開かれてきた定例会議、日米合同委員会での在日米軍からの要求のようです。この委員会は、日本側は防衛省、財務省などを含むいくつかの省庁の役人、アメリカ側は在日米軍司令部の軍人と大使であり、アメリカの日本の政策への「命令」は在日米軍を通じて日本の官僚に下され、それに基づいて官僚が内閣を振り付けるという段取りになっているようです。この度のGDP2%の軍事費拡大も、バイデンが在日米軍を通じて日米合同委員会で出させた命令をキシダが実行したものと考えられます。

さて、米中国交に向けて、密かに段取りを進めてきたキッシンジャーですが、そのお膳立てで実現した1972年初頭のニクソンの訪中のあと、同年秋に田中角栄が首相着任早々、訪中し周恩来と電撃的に会談を行い、アメリカに先駆けて中華人民共和国との国交正常化を宣言するという事件がありました。アメリカが正式に国交正常化を宣言する前に、日本が宗主国の許可なく(本当は田中はアメリカに知らせたらしいですが)中国との国交正常化を宣言した田中の行動にキッシンジャーは「Jap」と呼んで激怒したと伝えられています。それが直接原因なのかどうかわかりませんが、キッシンジャーは田中を快く思わず、数年後のロッキード事件で田中角栄の失脚の絵を描いたという本人の証言もあります。その後、角栄の流れを汲む派閥(経世会系)の政治家は悉くスキャンダルで失脚したり死亡したりした一方、アベ派につながる清和会系の議員は守られてきたことを思うと、従順なる「アメリカの犬」たる清和会系に日本の政治権力を与えてきたのもキッシンジャーであろうと想像されます。

そういうわけで、キッシンジャーは、戦後、アメリカが戦争ビジネスで経済を回すための外交という名の他国の戦争の仕掛け人であり、無数の罪なき人々の死の責任者であると一部では評価されております。アメリカでは、アジアや世界でアメリカが介入した戦争の黒幕という扱いで、市民の反感は強く、政府ポストを去ったあとにコロンビア大学教官へ天下ろうとしたら、学生の抵抗が強くて断念したというエピソードがあります。

イスラエルを使ってアメリカの中東利権を確保するという路線にも寄与してきたと考えられます。現在のイスラエルによるガザのジェノサイドもこの人に責任があると言えないことはありません。Wikipediaによると、国務長官時代に多くのシオニストを政府機関に斡旋し、彼らの活動を支援したという記載があります。日本同様、キッシンジャーは、アメリカの利益のために、南米、アジアの諸国に政治的に介入しました。国際法も正義も人道もアメリカの金儲けに勝るものはないと考えていたでのでしょう。アメリカで権力を得たシオニストがイスラエルのシオニスト政権を支持し、ガザやウエストバンクの数多くの子供や病人や市民の生命や生活を破壊しつづけてきました。そこには彼らの損得計算があります。アメリカはイスラエルを使って中東での立場を強固にしたい、そのためにはガザを完全にイスラエルの領地にして、新たな運河を築きたい、その目的達成のために、イスラエル軍がこの二か月で殺した一万人の子供の命はコラテラルに過ぎないとでも考えているのでしょう。そうでなければ、ほとんど抵抗もできない相手を自国の人質を犠牲にしてまで、ここまで大量殺戮し、街を徹底的に破壊しようとする動機がわかりません。アメリカとイスラエルにとってはパレスティナ人とガザという土地は彼らの望む中東利権に邪魔なのです。ならば、 イスラエルはハマス殲滅を口実に核爆弾をガザに使うようなことを計画しているかも知れません。

もし、キッシンジャーがいなければ、中東の風景もウクライナの風景も、そして東南アジアや南米の風景も現在とは違ったものだったかもしれません。そんなことを思いました。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 腐敗の構造 | トップ | バカの壁 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事