風と僕の歩調

釣りが好きで、台所に立つ事が好きで、音楽が好きで、毎日の暮らしの中で感じたことを僕の言葉で綴ります

黒いアナゴ  その二

2010年06月14日 | 回想録
つづきです。


そして、黒い穴子の正体は・・・・。



「うなぎ」


天然のうなぎ。「かば焼き」「白焼き」「うな重」、「ビール」に「冷酒」

心は、釣りから食べることへ変わっていった。氷づけにして持ち帰ったうなぎを水桶に入れる。捌き方は、穴子と一緒、目打ちをして背開きにし、中骨とわたを取る。前はよく失敗したものだったが、今は手慣れたものである。


「・・・・・」

「・・・・・」


何か動いた・・・確かに、今、水桶の中で!!!

「わっ!わっ!わっ!」息を飲んだ。驚いた。

水桶の中であれよあれよと、死んだはずのうなぎが踊り始めたのである。
仮死状態だったのだろう。すごい生命力である。今まで蚊やゴキブリはやっつけた事はあるが、命ある動物を自らの手で直接殺生した経験はない。

出刃包丁を持ったまま妻を見た。
一歩退く妻。
「わたしは、や~よ!」と顔に書いてある。
踊るうなぎとにらめっこの挙句、僕はとうとう決心した。やってやろうじゃないか!
「飼えば~」と、変なこと言う妻を無視し、僕は腕まくりをした。
うなぎをつかむ、しかし、動くは、踊るは手から滑り落ちたうなぎは、床を這いまわる。妻も子供も悲鳴を上げて逃げまわる。阿鼻叫喚、驚天動地、うなぎも僕の決心を知ってか必死である。やっとの思いで、まな板の上にのせたうなぎの目を打つ。いささか残虐な気持ちになる。背を開こうとするがとてもきれいに包丁が通らない。とうとう小一時間の戦いで2匹を捌いた。
たっぷりと身を残した骨は油で炒めて骨せんべいに、昆布で出汁を取り肝吸い、身は蒲焼きにして鰻丼にした。
「残酷だ」何だとか言っていた妻と子は、美味しい、美味しいといって平然と食べていたが、僕は食欲がなかった。あの残虐な気持ちがまだ残っていた。


そして月日が経っても、
うなぎを口にするたびに、あの日を思い出す。


おしまい


写真は、
何年か前の・・・
仲の良かった時の?今も仲好いと思っている父親なのですが・・・






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2 コメント

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(笑) (Cinnamon)
2010-06-14 22:24:37
なんとも…

情景が目に浮かぶ素晴らしい文面で
笑ってしまいました


ちなみに…

私。。。生まれてこのかた
鰻を口にしたことがありません

俗に言う

「食わず嫌い」(笑)
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Cinnamonそうなんですか? (風と僕)
2010-06-15 12:50:52
「食わず嫌い」もったいない・・・。
何でもチャレンジ精神ですよっ

って僕も、嫌いなものありますが・・・

http://blog.goo.ne.jp/takeshin0512/e/ec5f42c994923fb85cc1b93d25ecd9b7
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