《 1票の格差 違憲状態 》 【 もう国会の自浄能力は限界だ 】 2014/11/27 地方紙「社説」より
[昨年夏の参院選「1票の格差」をめぐる全国訴訟について、最高裁大法廷が「違憲状態」だったことの判決を言い渡した。これまでのたび重なる司法の警告を無視し続けた国会に対する最高裁の当然の判断であり、最後通告である。
各地の高裁判決は「合憲」がゼロ、「違憲状態」が13、「違憲」が3。うち広島高裁岡山支部が選挙無効に踏み込んだ経緯を見れば、違憲の判断もあり得た。実際、15人中4人が「違憲」、うち1人は「無効とすべきだ」との意見だった。1996年に最高裁が初めて違憲状態と判断して以来、20年近く放置してきた国会の怠慢を問いたい。
立法府が、自らの正当性を司法に否定されるという異常事態である。衆院と合わせ、違憲の状態が続く前代未聞の現状は、国民の政治離れをさらに加速しよう。国会はあらためて、司法の継承を真摯に受け止めるとともに、抜本的な改革を急がねばならない。
安倍晋三首相は0増5減といった小手先改革でお茶を濁したまま解散に踏み切った。衆院でも違憲状態が続いているのに、である。選挙制度改革を検討する有識者調査会を存続させたとはいえ、12月に行われる衆院選で1票の格差が問われるのは必至だ。
特定秘密保護法の強行採決や集団的自衛権行使容認の閣議決定、憲法改正―。安倍政権が次々と打ち出す国の形を変えかねない重要課題を、正当性のない国会が議論する資格はない。違憲状態の議会が法律をつくるというあり得ない事態であり、もはやは法治国家の名に値するまい。
どうやら、国会は自らが置かれた危機に鈍感なようだ。議員歳費削減を5月にやめるなど、身を切る覚悟は感じられない。この際、厳格な第三者委員会の設置などで早急に改革せねば、いずれ各地で無効判決が続出しよう。現実には、現行の選挙制度から完全に脱却しなければ投票の平等性を保つことは不可能だ。
ただ、それは国会議員の偏在を招くことになる。中山間地から国会議員が消える恐れもあろう。判決を契機に地方は、参政権の行使を国会議員に頼りすぎた歴史を見直さねばなるまい。政治以外にも、地方の声を国政に反映させるシステム作りが必要だ。
都市の有権者の中には、地方で育ち、地方で教育を受けた人たちも多い。そうした人材を生かすのも、政治の仕事である。政府の各種審議会や委員会に地方代表を迎えるなど、行政システムへ反映させるための配慮も求めたい。
そもそも、ここまで国会のバランスが崩れたのは、富と権力が都会へ集中し過ぎた結果である。政治は、利益の再配分という役割こそ持たねばならない。判決を深読みすれば、そういうことだ。
[昨年夏の参院選「1票の格差」をめぐる全国訴訟について、最高裁大法廷が「違憲状態」だったことの判決を言い渡した。これまでのたび重なる司法の警告を無視し続けた国会に対する最高裁の当然の判断であり、最後通告である。
各地の高裁判決は「合憲」がゼロ、「違憲状態」が13、「違憲」が3。うち広島高裁岡山支部が選挙無効に踏み込んだ経緯を見れば、違憲の判断もあり得た。実際、15人中4人が「違憲」、うち1人は「無効とすべきだ」との意見だった。1996年に最高裁が初めて違憲状態と判断して以来、20年近く放置してきた国会の怠慢を問いたい。
立法府が、自らの正当性を司法に否定されるという異常事態である。衆院と合わせ、違憲の状態が続く前代未聞の現状は、国民の政治離れをさらに加速しよう。国会はあらためて、司法の継承を真摯に受け止めるとともに、抜本的な改革を急がねばならない。
安倍晋三首相は0増5減といった小手先改革でお茶を濁したまま解散に踏み切った。衆院でも違憲状態が続いているのに、である。選挙制度改革を検討する有識者調査会を存続させたとはいえ、12月に行われる衆院選で1票の格差が問われるのは必至だ。
特定秘密保護法の強行採決や集団的自衛権行使容認の閣議決定、憲法改正―。安倍政権が次々と打ち出す国の形を変えかねない重要課題を、正当性のない国会が議論する資格はない。違憲状態の議会が法律をつくるというあり得ない事態であり、もはやは法治国家の名に値するまい。
どうやら、国会は自らが置かれた危機に鈍感なようだ。議員歳費削減を5月にやめるなど、身を切る覚悟は感じられない。この際、厳格な第三者委員会の設置などで早急に改革せねば、いずれ各地で無効判決が続出しよう。現実には、現行の選挙制度から完全に脱却しなければ投票の平等性を保つことは不可能だ。
ただ、それは国会議員の偏在を招くことになる。中山間地から国会議員が消える恐れもあろう。判決を契機に地方は、参政権の行使を国会議員に頼りすぎた歴史を見直さねばなるまい。政治以外にも、地方の声を国政に反映させるシステム作りが必要だ。
都市の有権者の中には、地方で育ち、地方で教育を受けた人たちも多い。そうした人材を生かすのも、政治の仕事である。政府の各種審議会や委員会に地方代表を迎えるなど、行政システムへ反映させるための配慮も求めたい。
そもそも、ここまで国会のバランスが崩れたのは、富と権力が都会へ集中し過ぎた結果である。政治は、利益の再配分という役割こそ持たねばならない。判決を深読みすれば、そういうことだ。