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※- 激増! 外国人旅行者 2016年01月22日
1月22日、NHK website ー: 「外国人旅行者2000万人なんて遠い先の話と思っていたが、一気にその時代が到来した!」
取材で印象に残った観光関係者の言葉です。 去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は=1973万7400人(推計)まで増え、2020年までを目指していた政府目標の2000万人をほぼ達成。
「爆買い」に象徴される訪日外国人旅行者の消費額は初めて3兆円を超え、この“宝の山”を取り込もうと企業も知恵を絞っています。
その一方で旅行者の急増は、さまざまな課題も浮き彫りに・・・。
≪ 外国人旅行者数 過去最高に! ≫
“2020年までに2000万人”。政府が掲げた訪日外国人旅行者の数値目標です。
東日本大震災が日本を襲った2011年は、日本を訪れた外国人旅行者は=621万8752人でした。
しかしその後、右肩上がりで増え続け、去年(2015年)は1973万7400人(推計)と、目標達成をほぼ手中に収めました。
追い風となったのが、円安基調や中国人向けビザ発給要件の大幅緩和で、中国からの旅行者は499万人とおととしより2倍以上増えました。
韓国・400万人(+45.3%)、
台湾・367万人(+29.9%)となり、
米国・103万人(+15.9%)と、初めて100万人を超えました。
この結果、去年は『日本を訪れた外国人旅行者(1973万人)>海外へ出国した日本人(1621万人)』となりました。
こうした「逆転現象」は大阪万博が開かれた1970年(昭和45年)以来、実に45年ぶりのことで、訪日外国人旅行者の急増ぶりを象徴する出来事となりました。
≪ 外国人旅行者 消費額も過去最高! ≫
激増する外国人旅行者。去年1年間に日本国内で買い物や宿泊などに消費した金額は3兆4771億円に上りました。
おととしの2兆278億円から1兆円以上も増え、過去最高を更新。
旅行者の大幅増に加え、おととし10月から消費税の免税対象の品目が拡大されたことが主な要因です。
こちらも中国の旅行者が最も多く、おととしより2倍以上増えて1兆4174億円。
外国人の消費額全体の40%を占め「爆買い」に象徴される購買意欲の旺盛な中国からの旅行者の消費が全体を大きく押し上げました。
台湾の旅行者の消費額が5207億円(+46.9%)、韓国の旅行者が3008億円(+43.9%)でした。
観光庁の田村長官は記者会見で、「3兆4000億円という額は、電子部品の輸出額(3兆6908億円)や、自動車部品の輸出額(3兆4750億円)に匹敵する規模で、観光を日本を代表する産業に成長させていきたい」と力説しました。
≪ リピーターにも売れる商品を ≫
最近では、何度も日本を訪れる“リピーター”も多くなってきた外国人旅行者、その消費行動には変化も見られます。
外国人旅行者専用の特設売り場を設けている「ビックカメラ」。
最近、「帰国したあと、そのまま使える家電製品はないか」と尋ねられることが増えているといいます。
日本製品を単に買い求めるのではなく、自国で使えるメイド・イン・ジャパンを求める外国人旅行者の増加。
こうした消費行動の変化を販売拡大につなげようと電機メーカーの間では外国人旅行者専用の家電製品を強化する動きが広がっています。
このうち「パナソニック」は、炊飯器や電気ポット、美容家電など外国人旅行者専用の家電をおよそ30種類販売しています。
去年12月に新たに投入したロボット掃除機は中国人旅行者をターゲットにしていて、操作ボタンはすべて中国語表記。
デザインも金色の本体に桜の花をあしらう中国人好み。
極めつきは、「変圧器なしで!」というニーズに応え、中国国内の220ボルトの電圧に対応できる製品に仕上げる徹底ぶりです。
パナソニックのクリーナー事業総括の周防和馬さんは「商品をグローバルに拡大していくためには、日本向けの商品を買って下さいというのではなく、海外のそれぞれの地域で使ってもらえる商品を開発していかなければならない」と話しています。
≪ “モノ消費” から “コト消費” へ ≫
外国人旅行者の消費行動は単にモノを買う“モノ消費”から日本ならではの体験を求める“コト消費”へと幅が広がってきています。
全国に69店舗を展開しているネイルサロンの運営会社「ノンストレス」。ストーンや筆で細かい絵柄を描く日本ならではのネイルアートが外国人の人気を集めています。
私が東京・渋谷の店舗に取材に訪れた際、来店したトルコ人の女性は「トルコにはネイルアートはあまりないので、日本で何がはやっているか知りたかった」と話していました。
この女性はネイルの施術が終わると「インスタグラム」を使って、さっそく発信していました。
こうした外国人旅行者の行動について、ホットペッパービューティーアカデミーの斉藤陽子主席研究員は「日本の若い人たちがしている“コト”をそのまま体験したいというニーズが高くなってきている。
日本の美容室やエステサロンなどを体験したいという“コト消費”が広がれば、何度も訪日するリピーターの増加につながる」と話しています。
≪ 買い物だけでなく、ビール工場にも ≫
“モノ消費”から“コト消費”へと広がる外国人旅行者の消費行動。
福岡市にあるアサヒビールの工場では、去年、見学に訪れた外国人が8万3000人と、前年より30%も増え、見学者全体の半数を占めるまでになりました。
このうち、80%は地理的に近い韓国からの旅行者。
無料で製造工程を見学できる上、韓国では価格が高めの輸入ブランドとして知られるこのメーカーのビール、しかも“出来たて”を3杯、無料で飲めるとして人気を集めています。
訪れた韓国人の男性(39歳)は「新鮮な日本のビールが飲めると聞いて来ました。韓国では販売されていないビールも飲めて最高です」と話していました。
日本ならではの体験を求める動きが広がってきている背景には、インターネットを通じた「口コミ」の力があるようです。
韓国人の女性(28歳)は「個人のブログを読んで来ました。私も撮影した写真をブログに載せて、感想を書きたいです」と話していました。
工場では、訪れた外国人旅行者が自らの体験をネットに紹介することで、自社の知名度が高まり、海外での販売拡大につながる効果も期待できるとして、スタッフの語学研修を行ったり、韓国語の予約サイトを設けたりするなど対応を強化しています。
≪ 世界に冠たる観光大国をめざせ! ≫
空前絶後といっても過言ではない訪日外国人旅行者の急増。
しかし、最大の顧客である中国で景気が減速し、その余波が世界中に広がりつつある中、訪日外国人旅行者は去年のようには増えないのではないか・・・。
関係者からは早くも懸念の声が上がっています。
ただ、私たちは今の訪日観光ブームを逃してはなりません。
宿泊施設の不足、わかりにくい案内板や地図表記、外国語に対応できるガイドの養成、新たな観光資源の開発、そして地方への誘客など、さまざまな課題を克服し、より多くの人たちに来てもらう取り組みを推し進める必要があります。
日本を訪れる外国人の増加は、消費拡大という経済効果にとどまらず、日本の良さを理解し、世界中に発信してもらうソフトパワーの強化にもつながります。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックというビッグイベントに向け、日本は観光大国へと飛躍していけるのか。
国・自治体・企業の三位一体となった戦略が問われることになります
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