この文章は2002年7月にRFAで発表された。
新疆の「焚書坑儒」
曹長青
「新疆では今まさに小型の文化大革命が進行しており、焚書と知識人の迫害が行われている」。前中国共産党新疆自治区古書籍整理事務室主任の著名なウイグル族学者クルバン・ワリはワシントンの彼の事務室で私に言った。彼が持ち出した今年5月20日付けの新疆『カシュガル日報』は中共当局が5月14日にウイグル語書籍730種を焼却したと報じている。それには『匈奴簡史』(128冊)、ウイグル族『手工芸ハンドブック』(3,200冊)、それにウイグル族の古典文学書籍などが含まれていた。当局の焚書の理由は、テロリズムを根こそぎにし、イスラム原理主義を撲滅し、新疆の動乱と分裂を防止するためだと説明している。
これらの書籍はイスラム原理主義を宣揚し、新疆独立を宣伝しているのだろうか? この問題についてクルバン・ワリは十分な発言資格がある。なぜならこれら焼かれた書籍の多くは、その多くが彼が指導した「新疆古書籍整理事務室」が出版したものだからだ。
今年50過ぎのクルバン・ワリはウイグル族の著名な古文書学者である。彼は以前北京で学び、著名な学者の季羨林の「5人の弟子」のうちの一人だ。北京大学を卒業してから、彼は新疆に戻って古文書の整理に従事していた。今回焼かれた『手工芸ハンドブック』は、彼が昔の写本を整理したものだ。彼は言う「この本はイスラム原理主義やテロリズムとは全く関係がない。これはちょうど中国の明清時代の『天工開物』や『夢渓筆談』などの古書籍と同じで、ウイグル人の昔の手工芸に関する記事で、イスラム教の伝統儀式に関する内容が若干含まれているだけだ。また、『匈奴簡史』は題名からもそれが歴史書であることが分かるだろう」。
以前古書籍整理事務室主任だったころ、クルバン・ワリはウイグル語の古書籍と文化の収集整理に力を入れたために粛清され、故郷を追われて米国に来た。現在ワシントンのあるラジオ局のウイグル語部で仕事をしている。
新疆の「焚書」は期せずして中国古代の秦の始皇帝の焚書坑儒と、近代中国の毛沢東の文化大革命の大規模な焚書と知識人迫害を思い起こさせる。このような「焚書」行為は、典型的な思想独裁であり、根元から言論の自由を滅ぼすことを意図している。
書籍は文字の集まり、考え方の表明に過ぎず、それは行動ではない。言論の自由の原則によれば、たとえ異端の学説に対しても、思想によって挑戦することができるだけで、「諸子百家を失脚させ」他の考え方の出版流通を禁じることによってある理論の「独尊」を維持してはならない。これこそ米国の先人たちが建国のときから報道と言論の自由の原則を確立させ、「言論の自由市場」を作り、各種の考え方や言論すべてに商品と同じようにショーケースに乗せ市場で販売される機会を保障し、消費者に自由に選択させることによって優勝劣敗を図った理由である。米国の先人たちがこのように考えたのは、人は生まれながらにしてだれも奪うことのできない言論の自由という天賦の人権を有していると考えただけでなく、人々に(考え方と理論の)自由選択の機会さえあれば市場で物を買うのと同様、何度も選択するうちに最終的に品質の良いものを選択(肯定)し、品質の悪いものを淘汰すると確信していたからだ。最終的にある価値が確立することは、民衆が選択した共通認識であり、権力者の独断の結果ではない。そして、民衆の選択により確立された「高品質」の考え方や思想によって支えられた社会こそが本当に安定した社会である。また、民衆の自由選択によって認められた価値こそが、本当に人間性の価値に適合する。
今新疆で行われている「小型文革」は焚書に表れているのみならず、ウイグル人が自分の故郷で自分たちの言葉を学ぶことを禁止することにも表れている。イギリスBBCの記者が新疆大学校長のインタビューで確認したところによると、この新疆の最高学府は今年9月1日から、ウイグル語による教育を廃止し、全て漢語で教えることに決定した。
中共の軍隊が1950年に新疆に進入する以前、漢族は現地で総人口の5%しかいなかったが、今日では42%に激増している。98%を漢族が占める「新疆生産建設兵団」が1,700万人の新疆の人口のうち240万人を占める(彼らは最良の水源、最良の草地および主要都市近郊の土地を強奪した)。だがそれでも新疆は、ウイグル人が多数を占め、ウイグル語が地元の主な言語である。しかも新疆大学は過去50年来一貫して学生に漢語とウイグル語を選択させてきた。現在このような決定をするのは、ウイグル族の文化と歴史を根底から破壊するに等しい。
焚書坑儒の始皇帝の王朝は14年間しか続かず、中国の歴史の上で最も短命の王朝であった。大規模に焚書と知識人の迫害を行った毛沢東の文革も、10年で続けられなくなった。共産党が今日新疆で焚書とウイグル族知識人の迫害を行っていることも、始皇帝や毛沢東と同様、罪悪の記録を増やすとともに、共産王朝の寿命を縮めるだけだろう。このようなウイグルの文化と歴史を根底から破壊するやり方は、地元人民の強烈な反発と抵抗を招くだけだからである。もし将来新疆で本当に動乱が起きたら、黒幕は間違いなく共産党である。
RFA 2002年7月10日
原文:http://caochangqing.com/big5/
newsdisp.php?News_ID=195
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http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/
e8c0dc7d98d0212deee3039ef96b6470
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