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曹長青:中共の新疆事件における8つの誤り

2009-07-20 21:23:21 | 中国異論派選訳
曹長青:中共の新疆事件における8つの誤り

 新疆ウルムチの流血事件に関して、中共が公表した最新の数字(7月16日現在)では、184人が死亡(7月20日現在の当局発表は197人)し、千人余りが負傷(7月20日現在当局発表1700人)したということだ。だが、海外のウイグル人団体は、この数字は嘘であり、多分600~800人のウイグル人が命を落としたと言う。海外メディアも多くが中国当局の数字に疑問を投げかけている。だがたとえ死者が184人であったとしても、やはり重大な流血事件である。韓国でかつて世界を揺るがした光州大虐殺で、最終的に明らかになった直接の犠牲者は166人であった。今回の新疆流血事件は、発表された死亡者数ですでに光州を上回っている。

 事件からすでに2週間近くが過ぎたが、各方面の報道と情報からすると、これほど大きな流血事件をもたらし、これほど多くの生命が失われたことに、胡錦涛政権は主要な責任を負うべきである。中共当局はこの事件において、少なくとも8つの誤りと罪を犯している。

 第一の誤りは、新疆事件の導火線がその前に広東省韶関で発生したウイグル人殺害事件だと言うことである。当時ネット上に現地の玩具工場のウイグル族青年が漢族の少女を強姦したというデマが流れたことにより、現地の漢族が自発的に正義を実行するのだと主張して、工場のウイグル人に暴行を加えた。この工場には二万人の従業員がいるが、ほとんどが漢族であり、ウイグル族は800人だけで、しかもその多くが女子従業員である。ウイグル族は当然衆寡敵せず、中共当局の発表では、2名のウイグル人が殴り殺され、120人が負傷した(うちウイグル人が3分の2を占める)。

 人々が疑問に感じるのは、韶関で流布していた新疆人が漢人の女子従業員を強姦したというデマを、なぜ中共韶関当局が直ちに調査して処理しなかったのかということだ。もし本当に「強姦犯」がいるのなら、民族に関わらず法に基づいて処罰しなければならない。もしそんな事実がないのであれば、とりわけ「人種」という極めて敏感な問題に関わるので、速やかに解明し、広く知らせなければならない。しかも、この二万人の大工場には、必ず「労働組合」、「共産党組織」があるはずなのに、彼らは一体何をしていたのか? なぜこのようなウイグル人全体の名誉にかかわり、人種対立と衝突を招くかもしれない問題に対し、全く予防措置が取られなかったのか?

 現在韶関の警察はすでにデマを流した人間を逮捕した(この工場を解雇されたことを恨み、ネットでデマを流して事件のきっかけを作ったといわれている)。たったひとつのネット上の情報を見ただけで、現地の漢人は愚かにも激高し、一斉に立ち上がって工場内のすべてのウイグル族を攻撃した。彼ら漢人は全く法治意識がないばかりか、米国のクー・クラックス・クランが黒人が白人女性を強姦したと聞いた時と同じように、横暴で残忍なリンチを行った。あるいはかつていわゆる北京大学の女子学生沈崇がアメリカ人に強姦されたといわれたときに大規模な反米運動が爆発したのと同様に、個別の事件を人種・国家対立に高めた愚行である。どの民族にも強姦犯はいるし、性犯罪はある。このような「わが民族の女性に対する異民族の男性の辱めを許さない」一方で、自民族の男性ならいくら侮辱してもかまわないという発想は、もっとも卑劣な人種主義、もっとも原始的な部族的思考の発露である。

 漢人の今回のウイグル人に対する行為は、中国人の近年の民族主義感情の高まりと関係がある。オリンピックの開催や中共当局の煽動などにより、多くの漢人のショービニズム感情は催淫薬を飲んだようにこれまで以上に旺盛になっており、韶関の漢人たちはいわば「おれたちが主宰者だ」とか「おれたちが主人だ」、「新疆人を懲らしめてやる」といった人種的覇権意識を吐露している。新疆人が漢人の女性を強姦したり、漢人が他の民族の女性を強姦するといった、各民族間の犯罪はこんなに大きな中国では必ずあることだ。だが、なぜ以前漢人は「共通の敵への憎しみによって団結」して集団になって他の民族を襲わなかったのだろう? ウイグル人と見れば見境なく殴り殺すようなことはなぜこれまでなかったのか? この変化は、近年の中国人の民族主義感情の高まりによって生じた人種的優越意識と関係する。だが、いかなる「意識」であろうと、あきらかに韶関当局がこのことを軽視したことによって、これほど大きな犠牲が生じたのだ(いまだに66名の負傷者が入院治療を受けている)。これが中共の第一の誤りである。

 第二の誤りはもっと重大だ。漢人のウイグル人に対する集団暴行流血事件は、5時間以上にわたって続いたのに、なぜ中共当局はすぐに制止しなかったのか? 韶関市は人口わずか三百万人で、北京や上海のような巨大で複雑な都市ではないのに、なぜ現地公安機関は速やかに出動してこのような大規模な暴行事件を制止しなかったのか? もしこれが中共韶関当局の官僚主義がもたらした人命軽視だとすれば、重大な職務怠慢行為だ! もし座視して救わず、漢族ショービニズム心理で、現地の漢人がウイグル人に「懲らしめる」のを黙認もしくは放任していたのであれば、それは人種差別であり、ヒトラーのナチスと同じ思想である。一般の漢人の手を使って、人種迫害を行ったのだから。

 第三の誤りは、韶関流血事件発生後、中共当局は事件を起こした漢人の処分を大々的に宣伝しないばかりか、公表すらしなかったことだ。このような(単純な集団抗争とは全く違う)人種主義的攻撃事件を、中共当局は全く重大事件と捉えなかった。その新疆に住むウイグル人に対する影響や、将来の後遺症などについて、全く理解していないか、もしくは冷淡であった。韶関現地では、中共の上級機関を含めて、官僚主義・人命軽視だけでなく、さらに漢族を中心とする中共官僚にも一種のウイグル族に対する人種差別意識があり、ウイグル人の死亡や、ウイグル人であることを標的にして攻撃され暴行された事実をまったく何とも思っていない。

 第四の誤りは、主に中共新疆自治区委員会、とりわけ共産党委員会書記王楽泉に表れている。ウイグル人が韶関で殴られている画面がユーチューブにアップされ、ウイグル人でも誰もが見ることができたので、その民族感情は刺激された。ある読者はその映像を見て、次のように書いている。「地面までウイグル人の血で染まっているのに、無数の漢人がなお殴り続けている。ウイグル人の女性まで殴っている。地面に倒れて全く動かなくなった人まで殴り、叫んでいる。……興奮した野次馬はなんと『何でまだ死なないんだ……』と怒鳴っている」。

 韶関流血事件はたぶん中共が政権を取ってから、新疆の外の漢人居住地で発生した最大のウイグル人排斥事件である。だが、中共新疆のトップとして、王楽泉は全く冷淡だった。これが全ウイグル人の敏感な神経を極端に刺激する悪質な事件であり、中共トップが厳しく処分することではじめてウイグル人の集団的怒りを鎮められると言うことを全く意識していない。人々は今はっきりとわかった。王楽泉と中共新疆委員会は、事前に全くこの面での「説得、予防」工作をおこなっていなかったのだ。王楽泉はなぜ職務怠慢だったのか? たぶん官僚主義などではなく、韶関の中共官僚と同様、やはりウイグル人を見下す人種差別意識のゆえである。数十年間漢人が少数民族を差別しいじめてきたので、全く漢人がウイグル人を侮辱することを問題にしていないのだ。

 第五の誤り。韶関流血事件後の10日間、新疆のウイグル人の間で怒りの感情が燃え盛っており、各種の電子メールやネット情報が飛び交っていた。7月5日にウルムチに集まって抗議デモを行うという情報も、早いうちからブログに書き込まれていた。だが王楽泉と彼の中共官僚たちは、完全に蚊帳の外にいた。新疆でこんなに長く共産党委員会書記をやっている人間(すでに3期目で14年間)が、人種衝突事件に対してかくも無関心で、自分が管轄する地方でどんな大事件が発生するのか、全く意識していなかった。まるで豚のように愚かな党官僚だ。重大事件における王楽泉の態度は、はっきりと人々に中共官僚のレベルがどれほど低いのかを示した。

第六の誤り。1万人のウイグル人がウルムチの人民広場に集まって、韶関でのウイグル人殺害事件の抗議のデモをした時、王楽泉たちの最初の反応は、なだめて説得するのではなく、ウイグル人の民族的怒りを理解しできるだけ温和な手段で穏便に処理しウイグル族民衆の怒りを鎮めるのでもなく、逆にすぐに高圧的な態度を取り、軍隊を出動させ鎮圧を行った。その後に発生したウイグル人による漢人襲撃事件は、もし事実だとすれば、もちろん愚かで野蛮な暴行であり、責められるべきである。だが、その触媒は中共だった。新疆のウイグル人は韶関での漢人によるウイグル人集団暴行事件に怒っていたのであり、デモを通じて不満を表現しようとしたのに、当局の野蛮な弾圧に遭った。その結果彼らの怒りはより一層刺激され、一部の人の理性を失わしめた。ある意味で、これは王楽泉ら中共当局の愚かで野蛮な政策がもたらした悲劇である。

 しかも、ウイグル人が立ちあがり、明確な民族衝突になった時、現地の漢人がどのような生命の危険と財産の損失を被るのか、王楽泉たちは全く予想しておらず、いかなる予防措置も講じていなかった。ウルムチで発生した流血事件は、ウイグル族にとっても漢族にとっても、その死亡の主な責任は王楽泉、中共当局にある!

 第7の誤り。ウルムチ流血事件発生後、中共の最初の行動は、情報封鎖であった。アメリカなどからウルムチに電話をかけても、数日間通じなかった。ウルムチ現地の人は、彼らの携帯電話のショートメールが切断されたと言っている。また、インターネットも封鎖され、「ウイグルオンライン」の創設者が逮捕された。中共当局のこのような報道封鎖のやり方は、20年前の天安門事件、去年のラサ事件と同様、彼らにやましい所があり、真相を隠そうとしていることを証明しただけである。もし本当に中共が言う通りウイグル人が集団で漢人に暴行を加えた「暴行破壊略奪放火事件」ならば、なぜ西側メディアに自由に新疆を取材させないのか? 国際的により信用のあるメディアが伝える「真相」が、中共の主張と一致するならば、北京の言い分にとって有利ではないか? それなのになぜ公開できないのだ? 唯一可能な解釈は、中共当局は今回も天安門事件、ラサ事件の時と同様、嘘をついているということだ。

 第8の誤り。大規模な流血事件が発生したばかりの、死亡者数さえ分かっていない初期段階で、中共新疆委員会書記王楽泉は、流血事件の責任を外部に押し付け、米国のウイグル人リーダーのラビア・カーディルが計画し、煽動したのだと発表した。これはイランが国内反対派の抗議デモを西側の煽動と言うのと全く同じである。独裁者のやり方はいつも驚くほど似ている。

 ラビアの米国における身分、境遇を知っている人なら誰でも分かっているが、もし彼女にそれだけの力があれば、新疆はとっくに中共の手から離れている。これは明らかに王楽泉の責任逃れである。なぜなら責任を外に押し付けなければ、内部の原因ということになり、当然王楽泉たち中共官僚の無関心、官僚主義、職務怠慢などの責任が追及されるからだ。だが王楽泉たちはあまりにも拙劣である。新疆の状況について多少なりとも理解している西側の専門家は、みなウイグル人が中共の植民地支配、とりわけ漢族ショービニズムの人種差別に対する忍耐がとっくに限界にきていることを知っている。ウルムチ流血事件は、単なる序幕にすぎない。

 序幕の後はどうなるのか? ウイグル人と漢人にそれぞれ大きな影響がある。

 まず、ウイグル人にとっては、彼らのデモ抗議は中共が大規模に派遣した軍隊による残酷な弾圧(千人以上のウイグル人が逮捕された(7月20日現在当局発表は4000人))のもとで、あたかも平定されたように見える。だが、表面的な静けさの裏で、より深く、より強烈で、より激しい悲憤が、ウイグル人の間に広がり燃えている。新疆人の民族意識、独立意識は、どちらも以前より強烈になった。あるウイグル人学者が言っているように、この事件は「私たちの考え方を変える」だろう。ウイグル人民衆の間だけでなく、ウイグル人エリート(政府幹部を含めて)の中にも深い影響を与えるだろう。かつて私がトルコで元ウルムチ文化聯合会主席、児童文学者、東トルキスタン独立運動組織事務局長のアブドクリムを取材したとき、彼は憤慨しつつ次のように予言した。「中共当局は我々を分離主義者、テロリストと非難するが、我々の人民を殺し、我々の子供たちを拷問している彼らこそ国家テロリストだ。我々はすでに我慢の限界を超えており、反抗しか残されていない。遅かれ早かれウイグル人と中国人の間に大きな流血の衝突が起きるだろう」。このような気持ちは、ウルムチ事件が鎮圧されたことによって解消するものではなく、むしろより強くなり、今後の爆発はより激しくなるだろう。

 漢族にとっては、彼らの新疆での安全感がさらに失われるだろう。また彼らが世界各地のイスラム国家で仕事や生活をするときにも、安全感が脅かされるだろう。中国では、漢人が絶対多数だが、世界の他の場所では少数派だ。アルジェリアだけで5万人の中国人出稼ぎ労働者がいる。アルカイーダは既に中国人に報復するという声明を出した。〔訳注:ウイグル人と同じテュルク民族の〕トルコにも大勢の中国人がいるが、なおのこと防ぐに防ぎきれない。無実の人をむやみに殺すことはテロリストと同じ論理であり絶対に容認できないが、今回の新疆事件は次のような現実をもたらした。漢人の世界各地での安全が、みな中共当局の非道な行為によって葬り去られたのだ。米国の「ニューヨークタイムズ」はウルムチ流血事件の報道の見出し文に「共倒れの新疆人種衝突」と書いた。ウイグル族も漢族もともに中共という「殺人族」の副葬品となったのだ。これは中国のすべての民族にとっての不幸だ!

2009年7月16日 米国にて

原文出典:http://www.observechina.net/
info/artshow.asp?ID=60902

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http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/
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