春秋社から中村元先生監修の原始仏典第7巻が10月に発行された。「一夜賢者の偈」に関心のあるものとしては、この第7巻中部経典Ⅳの発行を待ち望んでいた。
こまでもブログ内で「一夜賢者の偈」「一夜賢者経」などとしてこの歌「偈」を題材に所信を書き綴ってきたが、この書籍では「吉祥なる一夜」と題し131から134の4経が掲載されている。
131経 跋地羅帝経
132経 阿難説経
133経 温泉林天経
134経 釈中禅室尊経
となっており各経の共通の偈は、
過去を振り返るな、
未来を追い求めるな。
過去となったものはすでに捨て去られたもの、
一方、未来にあるものはいまだ到達しないもの。
そこで、いまあるものを
それぞれについて観察し、
左右されずに、動揺せずに、
それを認知して、増大させよ。
今日の義務をこそ熱心にせよ、
明日の死を知りえる人はないのだから。
死神の大軍勢と
戦わないという人はいないのだから。
このように熱心に禅定を行う人、
昼夜怠けぬ人、
その人こそが「吉祥なる一夜における、
こころしずまった聖者」として語られる。
と訳されている。
増谷文雄先生の「一夜賢者の偈」の訳は、漢訳のこの経はないのであるが、パーリ語原典に漢文的な日本語訳の旋律を与えた形で訳されている。
それに比べ上記の「吉祥なる一夜」は現代語訳の教示的な表現で綴られてい