思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

母という名の花・日めくり万葉集・おひさま

2011年06月10日 | 文藝

 最近のNHK[日めくり万葉集」で印象に残った歌に、長野県上田市にある無言館館主窪嶋誠一郎さんの選んだ防人の歌があります。

 時々の

 花は咲けども

 なにすれそ

 母とふ花の

 咲き出来けむ

巻20-4323 丈部真麻呂(はせつかべ・ままろ) 遠江国の防人


 四季折々の
 花は咲くのに
 なぜ
 母という名前の花が
 咲きだしてこなかったのだろう
 ああ、母さまに合いたいことだ

という歌です。何とも悲しい歌なのだろうと思うわけです。
 窪島さん選んだ歌は、

日めくり万葉集・「画(ゑ)・縁(え)」の意外性[2011年04月27日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/133e5e5b7b42651c61a3e4b2d93c234d

でも紹介しました。
 窪島さんは、第二次世界大戦で亡くなられた画学生の絵を全国から集め展示している美術館の館長です。



 戦没された画学生の心と防人の心に重なる部分、死を覚悟して旅立った若者たちの心を、この歌に感じて選出しました。

 番組に窪島さんは次のように語っていました。

【窪島誠一郎】

 花の持っている強さと弱さ、母というのはそんな二つを持っている大切なもののような気がします。

 お母さんは決して、そんなに強くはない。自分のことをいとおしんでどこかで泣いている母も想像できる。しかし、一方では強い。絶対枯れない。ずっと自分を待っていてくれる。

 花の持っている可憐さと強さを、母親は兼ね備えている、そんな気がします。

 ですから僕たちは、花を見ても母を感じるし、母を見てもそこには花を感じる。二つを重ね合わせる。とりわけ、子ども時代はそうでした。だから、四季折々の花のなかにお母さん花がないというのは、わかります。そのぶん、子どもの心の中にはいつもお母さんの花は揺れているんです。とてもいいですよ、この歌。

<以上>

 第二次世界大戦中、出征兵士が持って行くことができる本は制限されていました。多くの兵隊さんが選んだ本、それは万葉集でした。

 コロンビア大学名誉教授日本文学研究者ドナルド・キーン先生は、太平洋戦争中、アメリカの日本語学校を卒業した後最前線に送られ、終戦後日本人捕虜や兵士が残した書類や所持品の整理をしていてそのことに気がついたということです。

 万葉集は地方を含めた多くの歌を集めたものです。中国古代では、民謡を集めることはいわゆる諜報活動の一環で、地方の不穏な動きは民間で歌われる歌謡に見ることができるという考え方で集められました。

 したがって万葉歌もそうだろうと考える方もおられるのですが、このような「母恋歌」を詠んでその説は、いかがなものでしょうか。

 NHK連続テレビ小説「おひさま」主人公陽子(井上真央)の旦那さん和成(高良健吾)が出征してしまいました。



陽子の心の内を思うと涙なのですが、和成の母徳子(樋口可南子)の子を思う心にも涙です。



※今朝の写真は、Eテレ「日めくり万葉集(272)」NHK総合「おひさま」からいただきました。

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