Sightsong

自縄自縛日記

バール・フィリップスの映像『Live in Vienna』

2012-04-24 00:00:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

バール・フィリップス『Live in Vienna』(Quantum Leap、2006年)を観る。

Barre Phillips (b)
guest: John Hollenbeck (ds, toys, piano, etc.)

胴体の木や弦の金属といった素材感を含め、独特の芳香を放つバールのソロには魅せられてしまう。このコンサートでは、聴客に対し、楽器から学ぶのだ、楽器に働きかけるのだと話したのち、ウッドベースという大きな楽器の可能性を試すかのように、さまざまな音の色を繰り出してくる。

さらには、「What's in the cracks between the keys?」と、詩の朗読とも取れる問いを発して、確かに、音階という不連続の間に潜む魔を解き放つかのようなアルコ・ソロ。ベースは不連続ではない、連続的なのだということを思い知らされる。

後半、ゲストとして、ジョン・ホレンベックが登場し、玩具や打楽器やピアノによって奇妙な音空間を作り出す。それに入っていくバールのソロ。このホレンベックという個性をもう少し堪能したかったところではある。

DVDにはインタビュー映像も収録されており、バールは米国生まれらしからぬ歯切れの良い英語で嬉しそうに話している(みんなこんな英語だったら自分も楽なのに)。曰く、インプロヴァイザーは毎日、新しいストラクチャーとヴォキャブラリーを構築しているんだよ、と。バールが言えば説得力がある。

先日聞いたところでは、この10月に再来日し、齋藤徹さんと共演するという。歌舞伎町ナルシスでのベース・ソロもありそうだ。わたしは1998年頃に、そのナルシスでバールのソロを聴いた。真ん前に座っていたので、バールの弓をスウェーしてかわしながら聴くという贅沢だった。それをまた体感できるのかと思うと!


バール・フィリップス、ナルシス(98年頃?) Pentax MZ-3、FA 28mm/f2.8、プロビア400、ダイレクトプリント

●参照
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』、バール・フィリップス+今井和雄『プレイエム・アズ・ゼイ・フォール』
リー・コニッツ+今井和雄『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』、バール・フィリップス+今井和雄『プレイエム・アズ・ゼイ・フォール』
歌舞伎町ナルシスでのバール・フィリップス


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Bemsha)
2012-04-26 13:01:05
以前何度かコメントさせていただきましたが,最近ご無沙汰しております。
バール・フィリップスは,2005年のナルシスでのライブで,私もかぶりつきで弓をよけながら聴くことができました(この席を用意してくれた夕子さんには大感謝です)。本当にぜいたくな経験でした。
ライブ中の張りつめた空気と終わった後のバールさんの穏やかな笑みが忘れられません(そして分かりやすい英語も)。
10月に再来日,しかもナルシスでライブをするとは!!
最近,私自身の音楽の好みが変わり,フリーや即興からは少し遠ざかっているのですが(Vijay IyerやMiguel Zenonといった私と同世代のミュージシャンを好んで聴いています),10月の再来日は必ず行きたいです。
Sightsongさんにもお目にかかれたら幸いです。

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Unknown (Sightsong)
2012-04-26 23:46:39
Bemshaさん
ナルシスでのスウェー仲間ということですね。これは嬉しいです。
ゼノンは先日はじめて聴きましたが悪くない、ちょっと発掘したいところです。
ぜひ10月、同じ場を共有しましょう。弓の前の奪い合いはなし、ということに。楽しみです。
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