アラン・レネ『去年マリエンバートで』(1961年)を観る。有名な作品ながら初見である。
ヨーロッパの古いホテル。感情を可能な限り押し殺した人びと。囁きと舐めるようなカメラとによって、過去の記憶と現在の挙動が交錯する。確かにメソドロジーで言えば明快なのかもしれない。少なくとも、今や公開当時とは違って、難解だと騒ぐほどの映画でもない。(要はあまり好みではないのです。ああ!マルグリッド・デュラス『インディア・ソング』を思い出した)
併せて、もっと前にレネが撮った短編ドキュメンタリー『夜と霧』(1955年)を観る。学生時代に、荻窪だったかどこだったか、中央線沿線の小屋のような「シネマシオン」で観て以来だ。言うまでもなく、ナチスのホロコーストについての映画である。
改めて『去年・・・』と続けて観ると、感情を押し隠して舐めるように撮るカメラ、やはり能う限り静かに語ろうとする声、過去と現在との往還など、全く異なる映画のようでいて実は共通する側面があることに気付く。戦争は終わっていない、近くの叫び声に耳を傾けようとしないだけだ、との最後のメッセージが作品の価値を高めている。良いドキュメンタリーだ。
●参照
○『縞模様のパジャマの少年』
○クリスチャン・ボルタンスキー「MONUMENTA 2010 / Personnes」
○徐京植『ディアスポラ紀行』
○徐京植のフクシマ