Sightsong

自縄自縛日記

沖縄戦に関するドキュメンタリー3本 『兵士たちの戦争』、『未決・沖縄戦』、『証言 集団自決』

2008-08-19 14:22:29 | 沖縄

最近の沖縄戦に関するドキュメンタリー3本をまとめて観た。NHK山形放送局が製作しNHK Hiで放送された『証言記録・兵士たちの戦争 沖縄 住民を巻き込んだ悲劇の戦場~山形県・歩兵第32連隊~』(2008年4月放送、何度か再放送)、じんぶん企画『未決・沖縄戦』(輿石正、DVD)、NNNドキュメント'08の枠でよみうりテレビが製作した『シリーズ・戦争の記憶(1) 証言 集団自決 語り継ぐ沖縄戦』(2008年8月17日)である。

『証言記録・兵士たちの戦争 沖縄 住民を巻き込んだ悲劇の戦場~山形県・歩兵第32連隊~』(>> リンク)では、主に山形県出身者で編成された「陸軍歩兵第32連隊」の生き残りの方々が証言する。この、山形県の霞城公園に本部跡の碑がある連隊は、満州事変でも活躍した精鋭部隊だったようだ。とはいえ、沖縄戦に投入されたときには戦局は危機的だった。早くも沖縄に赴く前、兵士たちは、「15文字以内で遺書を書いておけ」と命令されたり、みんな死ぬのだから遺体が識別される必要がないという意味で真鍮の「認識票」を取り上げられたり、という状況だったという。

証言からは、如何にこの戦争が無意味なものであったかがわかってくる。勝ち目がないから無意味というのではなく、軍のあり方を問う贖罪的なことばが発せられる。ある壕を任された元兵士は、残りの玄米が足りず、「任務を果たすには仕方ない」ため、住民を外に追い出したのだ、と告白する。ここには、自己目的化する軍という物の本質があるようだ。実際に、沖縄守備軍が各軍に配った『命令録』(1945年3月29日)には、「沖縄語ヲ以テ談話シアル者ハ間諜トミナシ処分ス」とあったことが示される。

そして、牛島中将が自決し、軍の規律が崩壊してなお、32連隊に最後の命令が下される。「最後ノ一兵ニ至ル迄敵ニ出血ヲ強要ス」というものだ。この頃、32連隊には、沖縄北部のやんばるに援軍が残っているという噂が流れた。そして「国頭突破」という作戦により、(敵の中、そんな遠くまで行けるわけがないのに)何十人もが出て行き、ことごとく戦死したということだ。

『未決・沖縄戦』(輿石正、じんぶん企画、2008)(>> リンク)は、そのやんばるでの戦争を、戦闘と同一視することでは見えにくいものだとし、「誰かによって隠されようとする、一見小さなもの」を探し出そうとしている。

陸軍第32軍のうち、国頭支隊(宇土部隊)は本部、名護、伊江島にわけて配置された。中心が本部から名護(多野岳)に撤退したため、飛行場死守という任務を負った伊江島は、米軍攻撃に晒されることになる。

兵士は3,500~4,000人を数えたが、その「戦争と戦闘を異ならしめるもの」として、住民、朝鮮人軍夫、朝鮮人慰安婦(「朝鮮ピー」)がいた。また、非戦闘員の国士隊、大政翼賛政治の中心たる在郷軍人、警察官、部落会・町内会を通じて設置された隣組といった存在により、戦時のネットワーク化が隅々まで張り巡らされたのだという。そのために、証言する住民の方々は、いまだ軍人勅諭や「宇土部隊の歌」が口から出てくる。

ここでも、軍隊の「見える骨」がいくつも示される。第32軍の『司令官訓示』(1944年8月31日)には、現地での自活のため、「一木一草と雖も之を戦力化すへし」「防諜に厳に注意すへし」とある。第32軍極秘文書の『報道防諜宣伝等に関する県民指導要綱』(1944年11月18日)には「軍官民共生共死」とある。『国土決戦教令』(1945年4月20日)には「己ガ生命ノ長キヲ希ハンヨリハ 皇国ノ戦勝ヲ祈念シアルヲ信ジ」とある。『具志川村警備団連絡書類』(1945年6月15日)には「之(ビラ)ヲ拾得私有シ居ル者ハ敵側「スパイ」ト見做シ銃殺ス」とある。

ドキュメント後半は「見えない骨」、多くの方々の生の声を集めていて迫真性がある。「集団自決」のこと(もっとも、石原昌家氏はここでも、「強制集団死」と矛盾するこのことばを使うべきでないと主張している)、朝鮮人従軍慰安婦のこと、「援護法」の適用の経緯などが次々と述べられていく。決して聴きやすくも理解しやすくもないが、それはきっと体験談としての前提なのであり、貴重な記録なのだろう。当然、これを見る私たちには、「一見小さなもの」を、「大きな動き」の文脈で読み取っていく努力が必要とされる。「大きな動き」は、ここでは、極めて正当に「捏造」と表現される。

『シリーズ・戦争の記憶(1) 証言 集団自決 語り継ぐ沖縄戦』(>> リンク)は、主に座間味島・渡嘉敷島の「集団自決」について、生き残った方々の声を集めている。体験者は、毎日現場の夢を見るのですよ、と語る。『兵士たちの戦争』において、元兵士たちが「言うと頭がおかしくなってしまう」と語るのと呼応する、想像力のキャパを超えてしまう世界という重さだ。

それにしても、日本テレビ深夜の『NNNドキュメント'08』のシリーズ(>> リンク)は良い作品がある。岩国基地周辺のことを描いた『基地の町に生きて 米軍再編とイワクニの選択』(2008年6月、山口放送製作)も、高江のヘリパッド問題を描いた『音の記憶Ⅱ ヤンバルの森と米軍基地』(2008年1月、日本テレビ製作)も印象に残っている。アーカイブ化してネット配信などしてもらえないだろうか。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (早野 未明)
2008-09-14 10:49:20
コメント失礼致します。
都内で教員をしている早野未明という者です。
『証言記録 兵士たちの戦争』を録画されたでしょうか?
7月末にNHK総合で放送された際、私も録画したのですか、どうもうまく録れていませんでした。
「沖縄戦 住民を巻き込んだ悲劇の戦場」だけでも構わないのですが、授業で生徒に見せたく、探している状況です。
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Unknown (Sightsong)
2008-09-14 16:28:03
早野さん
沖縄戦の回のみ、DVDに焼いて残してあります。そちらの環境で観ることができるかどうか不明ですが、お貸しできます。
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Unknown (早野 未明)
2008-09-17 18:08:24
ご返答ありがとうございました。
勤務校の再生機器を確認したところ、VHSしかなく、DVDでは使用できませんでした。
こちらから依頼しておきながら、勝手な都合で申し訳ありません。
わざわざ気にかけて頂き、感謝しております。
失礼致します。
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Unknown (Sightsong)
2008-09-17 21:29:47
早野さん
了解です。また何かありましたらご相談ください。
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