Sightsong

自縄自縛日記

『週刊金曜日』の高田渡特集

2008-09-11 22:33:33 | ポップス

上海に戻る便が意味不明な理由で欠航になり、ぼろホテルに夕方まで軟禁され、結局その日のうちに成田に着くはずが上海に泊まる破目になった。日本を発つ前に『週刊金曜日』の高田渡特集を買いそびれていたので、仕方なく、帰りに浜松町の本屋に寄って調達した。ああよかった。

高田渡が亡くなったときに羽田空港に迎えに行った井上陽水、面と向かって批判ばかりされていたという小室等、それから佐高信の対談がおもしろい。吉祥寺「いせや」での高田渡の飲み方は、コップの日本酒を3分の1ほど「キューッて飲み」、5、10分飲まずに喋り、また3分の1。こんな具合で30分くらいでグラスが空く。中国での延々ちびちび飲みを反省させられるような格だ(笑)。

三上寛と高田渡は喧嘩ばかりして、翌朝はけろりと2人でお茶を飲んでいるという。しかし井上陽水によると、フォークの世界では、それを見て驚くようでは負けで、「読み込みが足りない」となるそうだ。下らなくてやたらと可笑しい。

高田渡がまとめたアルバム『獏』(B/C Records、1998年)は、山之口獏の詩に曲を付けたものだが、その娘・山口泉さんのインタビューでは、「第一印象」という曲に出てくる「娘」が実は自身のことではなく、山之口獏が好きになっていた女性のことだとある。「娘」の女性らしくない点をあげつらっておいて、「構うもんか」と愛情でくるむ詩である。あまりにも奇妙なので忘れられない詩だが、「娘」でないとするとまた印象が異なり、想像がひろがっていく。

魚のような眼である
肩は少し張っている
言葉づかいは半分男に似ている
歩き方が男のようだと自分でも言い出した
ところが娘よ
男であろうが構うもんか

(以下、略)

『獏』は、高田渡のほかに、渋谷毅、関島岳郎、中尾勘ニ、佐渡山豊、大島保克、嘉手苅林次、ふちがみとふなと、大工哲弘、内田勘太郎などが参加している超豪華アルバムで、何度聴いても気持ちよくしみじみとする。関島岳郎のチューバが入るサウンドもおもしろくて、「アケタの店」での高田渡と渋谷毅のデュオ・ライヴのとき、高田渡が観客席に「関島くーん」と呼び、それに対して「高田さんの楽譜はいつも持っていますから」とすぐに参加したことがあったのを思い出すのだった。

『獏』には、「告別式」が高田渡・石垣勝治版と、嘉手苅林次版の2つおさめられている。どちらかというと嘉手苅林次のじじむさい唄い方が好みだ。ついでなので、ツマのCD棚から『武蔵野タンポポ団の伝説』(Bellwood、1972年)を取り出し、若い頃の高田渡の唄も聴いてみた。山本コータローが最初にMCを喋り、ギロ(洗濯板の代用)で参加している。こういったにぎにぎしい演奏も嬉しい。

●参考
高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』
「生活の柄」を国歌にしよう
山之口獏の石碑


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