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自縄自縛日記

『けーし風』読者の集い(28) グローバル軍事化を拒否する草の根の動き

2015-11-01 10:05:48 | 沖縄

『けーし風』第88号(2015.10、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2015/10/31、神保町区民館)。参加者は9人。

主に以下のような話題。

○米軍基地の<県外移設論>に呼応して、大阪において、米軍基地を引き取ろうとする運動が出てきている。
日米安保体制の支持が、日本でも沖縄でも高くなっている(高橋哲哉『沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える』)。実態としてはそれほど高くないのではないか(たとえば、船橋洋一により「常時駐留なき安保」が唱えられたりもしたが)。むしろ、メディアにより世論が変質させられていることを見るべきではないか。
○確かに、戦後の日米安保反対運動は、足もとの生活水準に目を奪われてきた。しかし、沖縄では、米軍基地の存在に起因する問題や、不発弾の発見など沖縄戦の記憶を喚起する事件などが終わることがなく、この問題が風化していない。
○<県外移設論>は、日米安保が必要<ならば>、あるいは必要<であろうとなかろうと>、とにかく沖縄から基地を持っていってくれという主張でもある。これが新城郁夫氏による批判の理由でもある。また、憲法第九条を最大限に尊重しながらも、日米安保については一定程度は不問に付してきたという構造(ある範囲内だけを問題視する)とも似ているのではないか。なお、翁長知事は日米安保容認の立場である。
○戦後の左翼・リベラルの運動は、必要のない個別の論議にばかり労力を割いてきた。このことが、問題の広い共有を妨げてきた。戦後の反対運動の失敗が、たとえば、民主党が共産党と連携できないといった構造的な問題を生み出しているのではないか。
○1996年の日米SACO合意の原点は、普天間基地の「危険性除去」でも「兵力削減」でもなかった。そうではなく、軍事占領で奪った沖縄住民の土地の返還であった(伊波洋一氏)。ところが、いまでは「危険性除去」や「移設」という言葉が、辺野古新基地建設を正当化する言説としてうまく利用されている。
○対米従属という構造は誰の目にも明らかになってきた。その一方で、中国脅威論がこの構造を支えるために利用され、力を持つようになっている。しかし、中国に抗するという文脈で見るならば、沖縄に基地を置くことは逆に否定されてしまうことになる。
○米軍基地のグアム移転論、自衛隊が太平洋の南西地域を担うとする議論などがあった。一方では、アメリカのアジア重視(pivot to Asia)は、アメリカの中東における失敗の結果に過ぎないという見方もあるだろう。
○軍事戦略の必要性が軍事産業を興すのではなく、逆の側面が強い。アメリカが軍縮にいかに苦労したかについては、デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争』に詳しい。日本もそれをなぞろうとしている。
○新城郁夫氏によれば、必要なスタンスは<対抗>ではなく<抵抗>である。前者は、(日米安保や基地の必要性を前提として語る)相手と同じ土俵に立ってしまうことになる。
○呉世宗氏は、<県外移設論>の<二項対立>を批判した(これも上の<対抗>的)。高橋哲哉氏は、<県外移設論>の展開に際して、デリダによる二項対立の絶えざる<脱構築>(高橋哲哉『デリダ』)についても意識しているはずだが。
○知念ウシ氏は<日本人>という括りを用いる。
組織として一体となることの危うさ。阿部小涼氏は、リーダーシップによる動員力と引き換えに、個々の市民の考える力や自主性が奪われていると指摘する。権力への異議申し立ての場(デモなど)においても、旗や幟が象徴する敷居の高さがあり、個人として参加する者にとっては、孤独感や疎外感を覚えるものとなっている。しかし、本来はそうあるべきものだ。
○韓国済州島のカンジョンにおける基地建設問題によって、住民が分断された。いまではリゾート開発に伴い、同様の問題が起きている。

<情報>
●加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書)
●櫻澤誠『沖縄現代史』(中公新書)
高橋哲哉『沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える』(集英社新書)
ー『沖縄タイムス』2015/10/1-6において、知念ウシ、西脇尚人、呉世宗、玉城福子の4氏による連続書評。
上原善広『被差別のグルメ』(新潮新書)
新大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」(『けーし風』第87号「竹内渉「ハルコロとアイヌ料理と『ゴールデンカムイ』」において紹介)、粟国島のソテツ料理(那覇にも、粟国島出身者が経営するソテツ料理の店「ひさみ」があるとのこと)、久高島のイラブー料理。
●非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団『オスプレイに災害救援ができるのか?』
●土屋源太郎編『砂川裁判と安保法制』(世界書院)
●中沢啓司『オキナワ』(DINO BOX)
●NHK Eテレ『こころの時代』「そこなわれし人々のなかにー沖縄でコルヴィッツと出会う」
●「11・29 辺野古に基地は造らせない大集会」2015/11/29(日)13:30-、日比谷野外音楽堂

終わってから、神保町の北京亭。なんと丸木位里・俊の夫妻による色紙が飾られていた。

 

●参照
これまでの『けーし風』読者の集い


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