G.F.フィッツ-ジェラルドは初めて聴く英国サイケデリック・フォークのギタリストで、ロル・コクスヒルと共演している愉しそうな盤を見つけた。DVD1枚とCD2枚の3枚組である。
『The Poppy-Seed Affair』、すなわち『ケシの実事件』は、30分弱の映画である(1981年)。発見したVHSからの映像であり、当然汚い。しかしそんなことは気にならないほど、どうしようもなく下らない映画だ。相談を受けた探偵。パディントン駅で降りて、パンを埋めたり、銃で撃たれたり、追いかけたり、結婚した挙句にラリって殺し殺されたり。ロル・コクスヒルのサックスにロバート・ワイアットのドラムスという越境メンバーによるサントラだけが嬉しい。
音源の1枚は、コクスヒルとフィッツ-ジェラルドとのデュオ(1981年)である。それぞれソプラノサックスとギターとに専念していて、はっきり言ってどこを切っても同じ(笑)。コクスヒルは、相変わらず緊張感皆無のだらだらしたソロを取り続けている。口を緩めてベンドさせた音も、口癖のようにずっとやっていると、脱力しかできない。スティーヴ・レイシーの筋金が入ったソプラノとは雲泥の差である。
・・・しかし、コクスヒルを聴くたびに思うのだ。別にいいじゃないか、と。しゃべらせときゃいいじゃないか、それがその人なんだから、と。何だか勇気が出てくるコクスヒルの癒し効果か。
音源のもう1枚は、フィッツ-ジェラルドの60年代後半から70年代にかけてのソロ演奏集だ。アナログのサンプリングは頭を適度に揺さぶってくれるようで愉しい。コクスヒルとの共演もこの路線でやってほしかった。
こちらこそ近況ご連絡をいただいたまま失礼しています。坂田明さんとのデュオとアナログ盤、期待しています。バーの方にも機会を見つけて伺いたいと思っているのですが。
90何年かにコクスヒルのソロを歌舞伎町ナルシスで聴いたとき、エネルギッシュでもない、何だかよくわからないインプロヴァイザーだなという印象でした。彼の個性がじわじわと沁みてきたのはここ数年のことです。去年ロンドンで聴いたときも、紛れもない彼の音が集団のなかから聴こえてくる、これはやはり嬉しいことでした。来日時の「突然段ボール」との共演盤を探していますが(そんな理由で買っていなかった)、まだ果たせていません。