Sightsong

自縄自縛日記

1977年の阿部薫

2015-06-27 23:37:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

ある方から、阿部薫が亡くなる前年の1977年に行ったサックス・ソロ演奏の記録をいただいた。(ありがとうございます。)

最初に告白しておくと、わたしは阿部薫が好きではない(正確に言うと、持っていた音源をすべて手放してもう何年も聴いていなかったから、「好きではなかった」)。あらためて何度も聴くと、なるほど、文字通り強烈なブローである。内省的でもあり、先の見えない闇のなかに突入し続けた人なのだろう。訓練もおそらくかなり行ったのだろうか、早いフレーズ、力尽きないで吹き切るパワーをもった体躯、喉を開いたようなダミ音から切り裂くような高音までの音色には圧倒される。

ではなぜ苦手「だった」のか。拠って自らを支えるものが、永遠に自らの周りにあるものだけなのではないかという印象を持ってしまうのだ。かっと見開いた目は宇宙を視ているようでいて、実はその辺の棚や壁のシミを視ている。情念とは、ど演歌とは、クリシェである。

この録音においては、やはり阿部薫の迫力と素晴らしさを聴くことができる。その一方で、抽象ではないともあらためて感じてしまう。「Lonely Woman」「Lover, Come Back to Me」、「We Shall Overcome」をネタとして使っているから抽象ではない、ということでもないのだが。つまり、阿部薫を視るわたしの目はまだ落ち着かない。よくわからない。


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