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自縄自縛日記

酒井啓子『<中東>の考え方』

2010-06-09 00:12:30 | 中東・アフリカ

酒井啓子『<中東>の考え方』(講談社現代新書、2010年)を読む。

わかりにくい中東情勢をわかりやすく説いてくれる本である。もっとも、元来複雑な歴史があってわかりにくいのは当然であり、「わかりやすい」のも「わかったつもり」になるに過ぎない。ただ、本書でのいくつもの指摘は、少なくとも、偏った報道や紹介に毒されている私たちに刺激を与える。

○アラブ・イスラエルの対立の報道は、最初は「戦争」、次に「ゲリラ」、次に「テロ」と次第に矮小化した報道がなされてきた。それはなぜか。当事者の闘う武器が自分の身体くらいしかなくなってしまったからだ。
○日本での報道と異なり、イスラエルに抵抗し続けるハマスに、パレスチナ人たちはガッツを感じている。ヒズボラも然り。イスラエルや米国が力で潰すたびに勢力をのばすのは、そのイスラーム主義勢力である。
○ブッシュ政権の「テロとの闘い」は、かつて米国自身が生み出した鬼子(ビン・ラディンのような)を処分するプロセスであった。
○イラン革命前、イランほど米国の消費・贅沢・頽廃文化に漬かっていた国はなかった。これが反転した。
○イランのアフマディネジャド大統領は、ブッシュや小泉と同様、典型的なポピュリストである。そしてイラクのフセインやベネズエラのチャベスと同様、強烈な「反米」を掲げることが威信強化につながると信じている。

中東カフェ」で発信されているような、現在の中東の姿はとても興味深い。例えばそれは、ラップをプロテストの手段とし、インターネットでの相互のつながりをどんどん強め、自発的にイスラームのアイデンティティを求める姿である。

●参照 酒井啓子『イラクは食べる』


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