ニコール・ミッチェル『Mandorla Awakening II: Emerging Worlds』(FPE Records、2015年)を聴く。
Nicole Mitchell’s Black Earth Ensemble:
avery r young (vo)
Kojiro Umezaki (shakuhachi)
Nicole Mitchell (fl, electronics)
Renée Baker (vln)
Tomeka Reid (cello, banjo)
Alex Wing (g, oud)
Tatsu Aoki (b, shamisen, taiko)
Jovia Armstrong (perc)
本盤はニコール・ミッチェル自身によるSFをもとにしたコンセプト・アルバムである。それによれば、舞台は2099年。崩壊している地球連合において、大西洋に浮かぶMandorlaという島が再生の象徴として空想されている。ディストピアでもユートピアでもない社会、自然と技術とが融和する社会、そのような第三の道を模索することがテーマとなっている。
このあたりの背景はミッチェルへのインタビューでも語られている。彼女はアフリカン・アメリカンの黒人として苦労を重ね、AACMとの出会いがあり、さらにSF作家オクテイヴィア・バトラーとの出会いがあった。そういった個人の歴史が本盤に直接的に反映されている。物語は詩人・歌手・パフォーマーのエイヴリー・R・ヤングによって語られており、演劇的でもある。
それを含め、ミッチェルのサウンドのアレンジには彩りがあって、またフルートの音もふくよかでとてもいい。ブラック・アース・アンサンブルは2018年で活動20年を迎えるという。遡って聴かなければならない。
ところで、上述のインタビュー記事を訳したあとで、ミッチェルから、いつか日本で演奏してみたい、坂田明さんをリスペクトしている、との言葉をいただいた。つまりライヴの機会に坂田さんに伝えればよいのだろうが、さて、坂田さんはミッチェルの音楽をご存知だろうか。
●参照
「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/5/1)
オクテイヴィア・バトラー『キンドレッド―きずなの招喚―』