Sightsong

自縄自縛日記

盤洲干潟

2008-06-21 23:23:44 | 環境・自然


干潟と製鉄所

木更津市の盤洲干潟に行ってきた。「盤洲干潟をまもる会」の見学会である(2008/6/15)。

盤洲干潟は、木更津港に注ぐ小櫃川河口あたりを中心に分布している。近くには新日鉄君津工場があり、干潟からよく見える。その向こうには東電の富津火力があり、逆側には、川崎まで通じるアクアラインの入口が見える。また近くに陸上自衛隊や航空自衛隊の駐屯地があり、ヘリが訓練している。

東京湾全体で見ると、埋め立てを免れている干潟としては、三番瀬富津と並んで大きなものだ。ほかにも、ラムサール条約に登録されている谷津干潟などがある。


『干潟ウォッチングフィールドガイド』(市川市・東邦大学東京湾生態系研究センター、2007年)より作成

盤洲の目玉は、何といっても小櫃川河口に残された葦(ヨシ)。このために、陸域から海域まで連続した豊かな生態系が成り立っていて、何しろ三番瀬と違って自分の足でアクセスできる。とは言っても駅から遠く、内房線の木更津の手前、巌根駅から25分歩いて集合場所に着き、そこから車に乗せてもらって田んぼの畦道を進んだ。堤防から干潟に入り込めるのは小さなゲートだけ。自力では見つけるのが極めて難しいに違いない。

カメラはペンタックスLXに77mmF1.8Limited、それに偏光フィルタ(干潟では必須)を付けたものを持っていった。フィルムはベルビア100を2本。

ゲートから入ると、まず堤防の向こうに葦原がある。途中にはクリークなんかもあり、汽水域としてかなり理想的なエリアのようだった。いきなり、息子がシジミを発見した。外来種かもしれなかったが、たかがシジミではなく、東京湾では非常に少なくなっている。


葦原


ずんずん進む


タブノキに実がなっていた


葦原


クリークにあったアカテガニの抜け殻


東京湾のフナムシであるキタフナムシ

三番瀬よりも驚かされたのは、蟹の種類の多さである。

まず、クリークには小さいチゴガニがたくさんいて、白いハサミを両方上げ下ろしするダンスを踊っていた。近づくとすぐに逃げる。ハサミがひらひら動くさまは、沖縄のシオマネキを思い出させるものだった(こちらは片手だけで、動きが上下逆だが)。まわりには砂団子がたくさんあって、有機物を食べたときにチゴガニが作ったものだ。コメツキガニの作る団子よりは粗っぽい感じだった。


ダンス中のチゴガニ(小さいけど・・・)

ここで威張っている蟹は、葦原(ヨシハラ、アシハラ)の名前通り、アシハラガニだ。特にアシハラガニよりもちょっと色が濃いヒメアシハラガニは、東京湾ではこの小櫃川河口にしか居ないということだった。


アシハラガニの棲家


アシハラガニ


ヒメアシハラガニかな?

形が面白いのは、オサガニヤマトオサガニ。オサ(長)の名前の通り、甲羅が横に長細い(オサガニのほうがヤマトオサガニより長い)。潜望鏡にもなる長い目は、パタッと横に折りたたまれて収納される場所があるのがユニークだ。オサガニの目は白っぽい。


オサガニ(目が白い)


腹に卵を抱えているメスのヤマトオサガニ

前に進むことができるずんぐりむっくりのマメコブシガニは三番瀬にもたくさんいた。手が赤いのはアカテガニコメツキガニはすぐ逃げるので姿が見えないが、ただの砂だとおもっていたところが、じつはコメツキガニが作った砂団子がびっしりあるのだと気付き、歓声をあげた。


水の下のマメコブシガニ


アカテガニ


見事なコメツキガニの砂団子

貝はと言えば、シジミもアサリもハマグリも少なくなっている。特にハマグリはほとんど東京湾では絶滅しているようで、船橋あたりではホンビノスガイが「白ハマグリ」として売られている。アサリはどこもそうだが、中国や北朝鮮から稚貝を輸入してきて撒いているようだ。

ムラサキイガイ(ムール貝)、牡蠣、屍肉にむらがるアラムシロなんかが目立った。


牡蠣


粘着質のものを出して何かをくっつけているムラサキイガイ

稚魚を見ることができるのは、生命を実感できて嬉しい。浅瀬にじっと目を凝らしていると、マハゼボラがちろちろ動いている。ハゼの仲間であるビリンゴや、何と変なフグもいた。


マハゼの稚魚


何かのフグ

ほかには、ゴカイの棲家がある。スゴカイソメは、粘着液を出して、周りにゴミやら何やらくっつけていて、味噌汁のなかから志村けんがつまみ出す靴下のようだ。カンザシゴカイの巣は、細い石灰質の管が集合していて、割るとまだゴカイが居た。これをゴカイだということを忘れていて、息子に指摘されてしまった。子どもの記憶力は凄い。

フジツボはそんなに珍しくもないが、砂の中に住む小さいエビのスナモグリも、見ることができた。


フジツボ


スナモグリ(小さいけど・・・)


カンザシゴカイ

昼になって、海を見ながらおにぎりを食べて帰った。結構日焼けしていた。


風紋


アクアライン


潮風に抗するため葉っぱがぴかぴかしたテリハノイバラ


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6 コメント

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Unknown (kincyan)
2008-06-22 07:32:59
豊かな自然が残されていますね。
ここは羽田に降りるときに上空を通りますが、円形の浸透実験池がランドマークになっています。もうこれ以上の開発必要ないでしょうから、このあたりは残されるのでしょうね。
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Unknown (Sightsong)
2008-06-22 07:53:54
kincyanさん
目玉のような印ですね。飛行機から見たことはありませんでした。開発ばかりは必要性からではなくそれが目的だったりもしますので、油断できないのではないでしょうか。
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Unknown (tamara)
2008-06-23 00:25:42
貴重な干潟ですね。こういう干潟はいくらいても飽きない場所です。蟹やら何やら見つけると、ちょっと触らずにはいられませんね。

ところで斉藤さんのブログ更新のペースが速いので、読んで追っていくのがやっとです。(笑)
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Unknown (Sightsong)
2008-06-23 07:19:54
tamaraさん
あとは里山とか田畑とかいったものから、隔離された街の中では、やっぱりストレスがたまりますね。ペースについては許してください(笑)。頭の中にためておけないので・・・。
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Unknown (きえふにいさん)
2008-07-04 13:24:07
大変ご無沙汰しております。
何年か前にコダックフォトサロンで写真展があり、写真集にもなった平野耕作さんの「キサラヅ共生限界」に出てくる場所ですね、これ。行ってみたいなあとおもっている場所です。
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Unknown (Sightsong)
2008-07-04 23:01:32
きえふにいさん、さん
ああ、これは知りませんでした。シノゴで随分アンダーな写真、なのですね。観てみたいです。現地はひたすらわかりにくいので、場所と干潮時刻を調べて赴くことをおすすめします。
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