東西線木場駅の近くに「カマルプール」というインド料理店があって、ドラマ『孤独のグルメ』に取り上げられて以来、大人気である。わたしも夜中につい見入ってしまい、これはいつか行かねばと思っていた。近所に住む方によれば、その前から旨くて評判だっただけに、混んでいて入れないことは残念だとの言。そんなわけで、先日、電話をかけてあと30分したら行きますと予約を入れた。
看板メニュー(のひとつ)は「ラムミントカレー」というもので、文字通り、ソテーしたラム肉と、冗談のようにたくさんのミントが、カレーと混ざり合っている。ラムは新鮮で、ミントの効果もあってかまったく臭くない。しかも、ふつうはインドのカレーを食べたあとは口の中にスパイス世界ができるものだが、この場合は、妙にさっぱりして新鮮な体験だった。
他には「チーズクルチャ」や、チーズをゴルゴンゾーラにした「ゴルゴンゾーラクルチャ」なるものがある。チャパティやナンのような小麦粉の皮の中に、やはり冗談のように大量のチーズを封じ込めて窯で焼いたもので、これもチーズ好きにはたまらない。さらに旨そうな料理がたくさんあって、こんどまた行こうと心に誓っている。
日暮里は昔住んでいた近くの街で、千駄木との間にある谷中銀座はいつも賑わっている。その端っこに、「夕焼けだんだん」という階段があって(つまり、山の手の東端の細い山である)、それをのぼったところに「深圳」という小さい店がある。わたしが住んでいたころには多分なかった。
なお、階段の下には「シャルマン」というジャズ喫茶や(学生の頃には敷居が高くて入ったことがない)、「ザクロ」というペルシャ・トルコ料理の店や(ここがまた凄まじいところなのだが)、「蟻や」というとんかつ屋(篠山紀信が宮沢りえを撮った『Santa Fe』が当時置いてあって興奮しながら食べた)なんかがある。
その「深圳」が最近評判のようなので、わざわざ電車に乗って行ってきた。目玉は「ラム肉とパクチーの炒め飯」である。静岡の地ビール「パンダビール」を飲みながらしばらく待っていると、大迫力の皿が運ばれてきた。ご飯とラムの上に、野っ原のように大量のパクチーが載せてある。それが目当てだったのではあるが、実物を見ると驚く。キワモノではない。下のコッテリした肉飯とのバランスがとてもよくて、あっという間に夢中になって平らげてしまった。
それにしても、どちらもラム肉に対するカウンターとしての、生のスパイス。過剰なのに、旨さにしか貢献していない。
パクチーはシャンツァイでもあり、コリアンダーでもある。すなわちカレーに使われているわけであるから、カレーへのカウンターとしてパクチーを大量に入れてもまた旨いのではないか。あるいは大量のパセリであればどうなるだろう。