ウィーンのパン屋で、勉強や芸術の本質学ぶ

2024年02月26日 | 海外旅行

 「たくさん恥をかきましょう」
 
 
 というのは受験勉強の悩み相談などに、よく出てくる答えである。
 
 英単語がおぼえられない、フリードリヒヴィルヘルム2世とか世界史の人名が長い水兵リーベってなんやねん、線形代数なんてどこの国のからあげ弁当や!

 などなど嘆き節は止まらないが、こういうとき先生は、
 
 
 「間違ってもいいというか、むしろ間違った方がいい」
 
 「そうやって恥ずかしい思いをすると、そのインパクトが記憶に残って、もう忘れないものなんです。そうなれば、しめたもの」
 
 
 なんてアドバイスをくれたりする。
 
 こういうのは勉強だけでないようで、ミュージシャンで作家の大槻ケンヂさんもクリエイター志望の若者に、
 
 
 「いっぱい創って、いっぱい発表して、ウケなくてかいて。成長するには、それしかなんだよなー」
 
 
 やってみて、ミスって、恥かいてレベルアップは、どうやら万国共通の「試練」であるようだ。
 
 これに「わかるなー」と共感しながら、いつも脳裏に浮かんでくるのが、
 
 
 「以上でーす」
 
 
 というフレーズだ。
 
 といっても、なんのこっちゃかだから説明すると、若いころヨーロッパを旅行したことがあった。
 
 オーストリアウィーンに居たころ、夕方になって晩ごはん用のパンを買いに行ったのだ。
 
 なんてことないのパン屋だったが、そこは芸術ということか、かわいらしいパンやケーキがたくさん並んでいた。
 
 また、そこの店主が『アンパンマン』に出てきたジャムおじさんそっくりの愛嬌ある方で、その奥様もかわいらしく、ものすごく購買欲をそそられたのである。
 
 そこで、「これおいしいよ」「こっちもね」と言われるまま買いまくり、さてお勘定というところで、ハタとが止まった。
 
 おじさんはパンやケーキを紙袋に詰めながら、「他にも買うかい?」と訊いてくるのだが、それに対する
 
 「以上です
 
 このフレーズが出てこないのだ。
 
 私は学生時代ドイツ文学専攻で、わりとマジメにドイツ語を勉強していた(オーストリアの公用語はドイツ語)。
 
 そのときでも10年以上前だし、「文学」専攻だから会話は得意ではないけど、一応「中2英語」くらいの知識は残っていたし、「トイレどこ?」レベルのやりとりで困ることはなかったのだ。
 
 それが思わぬ伏兵に出会うこととなった。

 われわれが定食屋や、居酒屋などで日常的に使う
 
 
 「ご注文はトンカツ定食の大盛に納豆でよろしかったですか」
 
 「はい、以上でおねがいしまーす」
 
 
 というカンタンなやりとりが、スッポリ頭から抜け落ちてしまったのだ。
 
 あれ? 以上ですって、なんて言うんやったっけ?
 
 なんか、昔絶対に習ったはずで、喉まで出かかってるのに出てけえへんなあ。
 
 「以上」「終わり」「終了」。なんかこんなイメージの単語やねん。
 
 英語やとたぶん「That's all」やねんなあ。「これで全部」一丁上がりと。
 
 でもドイツ語やと、えーと、もうええわ。それっぽいこと言うたら通じるやろ。
 
 ということで、私がしぼり出したのが、
 
 
 「Das ende」
 
 
 「ende」とは英語の「end」で「das」は定冠詞で「the」だから、要するに
 
 
 「これでジ・エンドさ」
 
 
 と言ったわけだ。
 
 その瞬間、ジャムおじさんとおばさんが一瞬キョトンとなったあと、突然に腹をかかえて爆笑しはじめたのだ。
 
 それを受けて、他の客たちも大笑い。
 
 おお、なんかウケている。会場が爆笑の渦だ。
 
 まるでエノケンバスターキートンという現代の喜劇王NSCに願書でも出したろうかしらん
 
 ……てまあ、これはもういくら頭がスイカな私も「間違ったな」とわかるところで、頭をかきながら「なんでしたっけ?」と問うならばジャムおじさんは楽しそうに、
 
 
 「そういうときは、【alles】っていうんやで」


 あー、allesかあ。
 
 allesとは「全部」という意味で、英語で言う「all」のこと。
 
 てことは「That's all」で合ってたんや。「das ist alles」惜しい、あと一歩やった!
 
 「Das ende」は「The end」とか「fin」みたいな、映画のラストでもおなじみの単語。
 
 それをここで使うのは、「ご注文はこれだけですか?」に対して、
 
 
 「終劇!」
 
 
 とか返すようなもんで、ワシャ中2病男子か。
 
 おばさんが「これでひとつ、またかしこくなったねえ」とニコニコ

 ええパン屋さんやなあと、ほのぼのしたけど、きっと晩飯のときに「エンデ君」とかあだ名つけられるんやろうなあ。
 
 恥ずかしいやら笑えるやらで、もうこんなもん忘れようもないですわな。

 というわけで、なにかを学びたい人、自分の才能スキルを伸ばしたい人は、こういうシャワーでも浴びてるとき急に思い出されて「わああああー!」とかなるような体験をたくさんしておくと良いでしょう。

 かいた恥だけは咲く。

 語学は「間違ってもいいから話せ」はこういうことなんですね。

 そんときゃトホホでも、あとでこうしてネタにすればモトだって取れるしね。

 取れてんのかなあ? まあ、いいや。
  


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