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基礎からのアメコミ映画講座:バットマン編#3

2012-07-24 | 映画
基礎からのアメコミ映画講座、現在は
いよいよ今週末公開の「ダークナイト・ライジング」に向けて、
アメコミヒーローの代表格・バットマンについて紹介しております。

第3回の今回は、ジョエル・シュマッカー監督時代・・・の前に
92年から放送されていたアニメ版の話を。

90年、前年の「バットマン」公開で起こったバットマンブームの中で
ブルース・ティムとエリック・ランダムスキーに打診されたのが
バットマンのTVアニメの制作でした。
ティムのスタイリッシュにディフォルメされたキャラクターと
ランダムスキーの黒を基調とした、シンプルでありながら立体的な背景に
たちまちワーナー首脳陣はアニメの制作にゴーサインを出し、
92年の「リターンズ」公開に合わせたアニメ放送開始が決定しました。

制作時に注意されたのは

・ロビン、バットガールが登場してもあくまで主役はバットマン
・悪党たちは真摯に犯罪を行う。そのための描写には妥協しない
・番組独自の世界観(パソコンがあってもTVは白黒、など・・・)を大切にする

といった「子供向けアニメ」としてはかなりハードルの高いものであり
それを貫くためにかなり上層部ともめたりもしたようですが
(特に厳しい規制の中での犯罪・暴力描写)
その甲斐もあってか、このアニメ版も大人気を博し、
通常土日の朝にのみ放送されるところを
大人も見る夜の時間にも再放送されることになったりもいたしました。

このアニメのスペシャルとして作られた「マスクの怪人」は
「バットマン:イヤーツー」をベースにした作品であり
ゴッサムに現れた謎の狩人・ファンタズムに
ジョーカーの過去が絡む、という作品だったわけですが
オリジナルビデオ作品として作られたこちらがワーナー首脳部の判断により
急遽の映画という形での上映が決定。
あまりに急遽の上映決定だったために宣伝戦略の不足が否めず
興行的には失敗した作品となりました。
しかし、ソフト化でその出来の良さが再評価された作品であり
ノーランバットマン以外のバットマン映画が見てみたい、という方へ
声を大にしておすすめしていきたい作品です。

アニメシリーズはその後も仕切り直しや世代交代などを経て
(老ブルースが若い新バットマンを鍛える「バットマン・ザ・フューチャー」。
これのスペシャルの「蘇ったジョーカー」もおすすめの1本です)
現在ではDCユニバース全体にアニメ化が進んでいるようで
(今年のコミコンで中国版バットマン的なアニメ映像が流れていたようですね)
アニメ版ももう少し日本でメジャーになってくれるといいのになぁ、と思っております。

閑話休題。

「リターンズ」が期待したほどのヒットとならなかったことで、
ティム・バートンが監督からプロデューサーになり、
家族連れやデートムービーとしても楽しめるような一般受けする作品を、ということで
新たに監督となったのは、ファッション業界から映画監督に転身し
若手スターを起用した青春映画でヒットを飛ばしていたジョエル・シュマッカーでした。
この路線変更を嫌ってマイケル・キートンは降板、
新たなブルース・ウェイン役は2枚目スターのヴァル・キルマーに、
今回ついに登場したバットマンの相棒・ロビンにクリス・オドネルが選ばれ
95年に「バットマン・フォーエヴァー」が公開されたのです。

バートン版のゴシックの街並みから蛍光色の色合いをまとったゴッサムシティ。
昔のTVドラマ版「バットマン」のキッチュな感覚を彷彿とさせる作品へと
変貌を遂げたこの「フォーエヴァー」。
ヴィランにはトミー・リー・ジョーンズのトゥーフェイスと
当時人気絶頂のジム・キャリーが演じるリドラーが登場いたします。

トゥーフェイスは正義の地方判事が顔の半分に酸を浴びせられたことをきっかけに
「2」に異常に固執し、すべてをコインの裏表で決定する犯罪者となった
(自分にとって不利益な結果でも、コインの結果であれば受け入れる)
というキャラであり、元となったハーベイ・デントは旧シリーズにも出演していましたが
こちらは黒人俳優が演じておりました。
(一説にはバートンは「半分黒人、半分白人のトゥーフェイス」を考えていて
そのためのキャスティングだった、とも言われています)
そして今作では極彩色のスーツ姿でトミー・リー・ジョーンズが演じているのですが・・・
自分の望んだ結果が出るまで何度でもコインを投げなおす、という
キャラ設定を無視した描写に悲しくなったものです。

リドラーは一時原作ではマイナーだったキャラであり、
犯行声明をなぞなぞという形で出すというキャラだったわけですが
今作ではコンピューター・ゲーム世代のキャラクターということで
テクノロジーを駆使した犯罪を行うキャラとなっており
ジム・キャリーの怪演もあって、この映画自体を引き締めてくれたキャラでした。

そして今回初登場したロビン。
オリジン・名前は初代ロビンであるディック・グレイソンのもの・・・
サーカス一家の綱渡り芸人の息子として生まれ、
殺された両親の仇討のためにバットマンの相棒となる、というものでしたが
「脅威の少年」だった原作とは違い、若者になっており
コスチュームも原作の鮮やかな配色を保ちつつも、筋肉や乳首まで浮いた造形の
フェティッシュな印象を与えるラバースーツとなっております。
性格面でも「よい子」だった原作ディックとは違い、
原作の2代目ロビンであるジェイソン・トッドのような悪ガキ的な性格となっています。

そして今作はU2などのナンバーを効果的に取り入れ、
サントラCDもヒットを記録する、という作品となったのもまた特徴といえ
「リターンズ」以上のヒットを記録し、ワーナー側の思惑は当たったものの
原作ファンとしては「なんか違う・・・」と思ってしまう作品となりました。

そして2年の歳月を挟み、シュマッカー監督による2作目にして
シリーズ4作目となった「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」が
97年に公開されることになりました。

バットマンはヴァル・キルマーから「ER」で人気のジョージ・クルーニーに変更。
ロビンのクリス・オドネルは続投、さらにバットガールとして
アリシア・シルバーストーンが加わることになります。

ヒーロー側が3人になったことで、敵側も3人体制になり
Mr.フリーズは州知事になる前のアーノルド・シュワルツェネッガー。
ポイズン・アイビーにユマ・サーマン。
そしてベインはジープ・スヴェンソン(・・・誰?)
(アイビーの教師のウッドルー博士も原作ではフロロニックマンという異次元人なのですが
この映画ではふつうの人間の悪人で、アイビーに殺されます)

半ば伝説と化している「ラバースーツの男の尻2連発」のオープニングシーンから
映画全編を貫くキッチュな「キャンプ」感覚は前作よりも色濃くなり、
全体的にドラマ性不足で進む作品となっており、
この映画の酷評の結果、バットマン映画は8年間作られないことになったわけです。
(7年後に「キャットウーマン」が公開されていますが・・・)

Mr.フリーズはアニメ版に登場するまで完全に忘れられていたヴィランであり、
難病に苦しむ妻の冷凍保存の維持のために戦う冷凍人間、という悲劇的な物語が
アニメ版で強い人気を得たことで今回の映画への登場となったわけですが
この映画の指向する明るいストーリーに陰鬱で悲劇的なキャラクターでは合わない、という判断からか
ジョークを口にするようなキャラとなり、演じているのもシュワルツェネッガーということで
根っからの悪人という感じにはならず、騙されて暴れ、真相が分かれば素直に収監されるという
どちらかといえば陽性なキャラとなっています。

ポイズン・アイビーはもともとは毒を操り他人を意のままに操る妖婦、というキャラだったのが
原作では植物を操る能力にまでパワーアップしたキャラとなっています。
今作では毒とフェロモンを操ってバットマンとロビンを争わせるほか
ベインをボディーガードに従え、フリーズを騙してバットマンへの憎しみを植え付けるなど
今作最大の悪役キャラの座に収まっています。
ユマ・サーマンの妖艶さがこの映画の数少ない救いです(笑)

「ライジング」ではメイン悪役の座についたベイン。
この映画ではただの「ドーピングの結果怪力になった筋肉馬鹿」以外の何物でもありません。
一方原作では、バットマンの正体を推理し、バットマンを疲弊させ、重傷を負わせることで
しばらくバットマンを引退に追い込んだ90年代バットマン最強の敵でもあります。
こういう「90年代に登場して人気のあるヴィランの無駄遣い」は
「スパイダーマン3」でも行われたわけで
その結果仕切り直しということになったのがどちらにも共通している、というのは
おもしろい結果といえるのかもしれません。

バットガールはこの映画では数合わせ程度というか引っ掻き回し担当というか
アリシア・シルバーストーンがぱっつんぱっつんだよなという程度のキャラです。
(ラジー賞受賞も果たしてますね)
この映画では「アルフレッドの姪」というキャラクターになっていますが
原作では「バーバラ・ゴードン」、ゴードン本部長の養女であり
(「ダークナイト」では実子として出てきてますね)
ディック(初代ロビン)の恋人でもあります。
(この映画でもディックに惚れられてますね)
ジョーカーによって半身不随にされ(「バットマン:キリング・ジョーク」)、
バットガールからは引退しますが
コンピューターを駆使してヒーローたちを助ける「オラクル」として活躍することになります。
(余談ですが、原作のディックの女関係はけっこう爛れていることで有名です)

この映画の不評の結果、準備されていた5作目の企画は宙に浮き、
(「&ロビン」のスタッフ続投、悪役がスケアクロウとハーレクインの予定でした)
その後も続編企画が立ち上がるものの実際に制作に入ることはなく、
8年間の休眠期間の後、リブートされるわけですが・・・そこは次回の講釈で。
(この続編企画の中に、「Batman vs. Superman」もあったとか・・・)

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