吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

服役中の伝説的ミュージシャン死亡、妻が国賠提訴「死なずにすんだのに、許せない」 その3

2019年11月11日 05時36分05秒 | 日記
 いやはや、これはなかなか難しい問題である。収監中であるわけだから基本的な自身の能動的な行動は当然制限を受けるものである。これを一般市民とすべて同じ権利を受けられるのであればこの法治国家では収監する意味がなくなる。
 かといって収監に耐えうるだけの健康状態かどうかだけは最低限きちんと管理されるべきでもある。ここのところの狭間で服役者は揺れ動いているのである。かなり難しい問題である。
 その上での話であるが、異を唱えるものはすべて結果から遡って糾弾するわけである。確かに最初に腹痛を診察した町立病院の医師を結果だけからみれば「誤診」ではあるが、簡単に言うだけは容易い。
 しかしながら絞扼性イレウスの診断は難しい。特に緊急手術の適応かどうかの判断は困難を極める。しかも医療機器の整備もままならない病院や診療所では、本当にその医師の経験と判断に負うところが大きい。
 今まで自分は多くの絞扼性イレウスの診断・手術をしてきたが、開腹するまで「本当に腸閉塞だろうか?」と不安になったこともよくあった。開腹してみて手術中に腸閉塞だったとわかると、逆に「ああよかった」と不謹慎にも思ったくらいである。この安堵感は「自分の開腹適応判断が間違っていなかったこと」の安堵であり、けっして患者救命の目安がついたことに基づいたものではない。それだけこの疾患のdecision makingは難しいのである。