吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

住所誤入力、救急車遅れる…死亡男性の遺族提訴 その5

2018年05月31日 05時36分08秒 | 日記
 このような客観的情報が存在したとして、次に救命の可能性の問題である。まずこの遅れたという10分間に、論点である「処置をしたら助かったのか?」ということの証明が必要とされる。それは「9分目」なら救命できて「11分目」なら助からなかったという証明に等しい。
 でもこの境目の証明などできっこない。よく救命手当講習で引き合いに出されるのは、心停止して1分経過するごとに7%ずつ救命率が低下するので10分放置されたら救命不可能であると言われている。これはすべての心疾患の種類を含めたオーバーオールでの率である。
 細かくわけてそれぞれの病態でわけたら救命率はいいものもあるし、悪いものもあるのである。今回の傷病者がどのような病態であるかによっても救命率は異なるのである。
 どう考えたって医学的にこの10分間の遅れが原因で救命できなかったことを証明するというのは不可能と思うのである。